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努力します

「落ち着いたか?」

泣き止むまでずっと抱きしめてくれ、泣き止んでも、私の手を握り側にいてくれた。

「・・・ありがとう。もう、大丈夫よ。ごめんなさいね・・・凄く嬉しくて・・・」

泣いて化粧も落ちてぐちゃぐちゃの顔になっているとわかっていたが、それでもサジタリーを見て言いたかった。

「そう言われると、頑張った甲斐があった。レンを諦めなくて良かった」

目を細め愛おしそうに、もう片方の手で私の頬を触った。

私を迎えに来た時は気づかなかったが、学生の頃と比べるとサジタリーはとても大人になった。

頬を触る手も大きくなったような気がする。

私を見つめる瞳も昔とは違う気がする。

それは私の気持ちも違う気がする。

あの頃に比べて、ずっとずっとサジタリーが好きになっている。

もっと側にいたい、

もっと触れて欲しい、

もっと一緒にいたい。

「・・・私は、諦めていた。でも・・・サジタリーが諦めないでくれたから、私は、今、あなたの前にいる事が出来た。全部、あなたのおかげたわ。・・・愛してるサジタリー」

溢れる想いが自然に口に出た。

え・・・?

言った直後に、ソファに押し倒された。

熱い眼差しのサジタリーの顔がとても近くにあった。

「・・・あ、あの・・・」

え!?

何が起こっているのか、理解出来ない。

「俺も、愛している」

熱っぽい声で、返してくれるサジタリーのその言葉は嬉しいけど、この胸のドキドキはその言葉にじゃなくて、この、この距離。

どんどん顔が近くなり、これは、つまり、と考えている間に手が動いてしまった。

「・・・どういうつもりだ」

サジタリーの口を私が手で覆ってしまったから、とても不機嫌そうに声を出した。

「え、えと、まだ、早いよね。私達、婚約した訳じゃないし、私もまだ、離縁したばかりだしこういう事は、もう少し先の方がいいと思うの」

確かに今のこの甘い大人の雰囲気だと、口付けは普通なのかもしれないけど、私にはまだハードルが高い。

口付けは初めて。

サジタリーにとっては、そうではなくて、経験豊富で大した事がなくて、普通の流れなのかもしれないけど、私にとったら大事なこと。

いや、初めてが、サジタリーなのは凄く嬉しいし、問題ないといえば問題ないのかもしれないけれど、でも、早いと思うの!

「そんなに不貞腐れた顔されて、寂しそうにされたら何だか私が悪いことしている気分になるでしょ!そりゃあサジタリーにとったら口付けなんて対して事じゃないのかもしれないけと、私は初めてだから大切なの。サジタリーを好きなのには変わりないけど・・・もう少し・・・もう少し・・・その・・・わたしのペースに合わせて欲しいというか・・・」

「俺を何だと思ってるんだ。まるで他の女を相手したような言い方だな」

愛おしそうに目を細め、自分の口を塞いでいた手を掴み、私を起き上がらせた。

掴んだ私の腕を自分に引き寄せ、手の甲に口付けをし、獲物を狙うような鋭い目で私を見た。

ゾワゾワと変な感覚が体中を支配する。

「俺はいつだってレンしか考えていない。出会った女性は立場的に多くいたし、妻にどうだと勧められた事もあった。だが気持ちはいつもレンに向いていた。それが、もう人の妻なのだから、と理解していたがそれでも忘れられなかった。まあ、信じてもらうしかないだろうが、俺はずっとレンしかいない」

「・・・そ、そんな事言われても・・・、私も同じ気持ちだけど、まだ、早いの!!」

サジタリー甘い声と瞳にクラクラしながらも、そこは譲れなかった。

「・・・相も変わらず真面目だな。まあそれがレンらしいがな。それに王宮でこれから毎日会うから急がなくてもいいか」

諦めたようにため息をつき、私の腰に手を回した。

「王宮?」

「ああ。父上や母上や兄上も問題なく了承は得ている。レンの家族にはまだだが、早めの方がレンが楽だろう?」

「えーと?何が?」

真面目な顔と言い方に少し不安になった。

「わかってると思うが、俺は王子だ。妻になると言うことは王族の一員となる。それ相応の王家のしきたりや礼儀作法を学ぶ事になる」

そうだった。忘れていた訳では無いが、まさか自分がサジタリーの妻になるなんて恐れ多い、と思っていたから現実的に考えた事がなかった。

「どの道直ぐに婚約はできないだろうな。離縁は女性にとって風当たりが強い。たとえ白き結婚の離縁だとしても、よく思わない奴らは多い」

「そうね。仕方の無い事だけれどその通りだわ」

「落ち着くまで、とうよりは、正直な所レンをが王家の一員として振る舞える様になった時に婚約となると思う」

「ふふっ。つまり、私が頑張ればいいのね」

「簡単では無いぞ」

「そうね。でもサジタリーが私の為に動いてくれた方がもっと大変だったと思うの」

王族の一員になるための勉強は私が頑張ればいい。

でも、白き結婚の離縁は1人ではできないことだ。それをサジタリーは私の為に、そう、自分のことではないのに動いてくれていた。

「頑張るわ。あなたと私の為だもの。私はあなたの側にずっといたい。もう離れなくない」

私の淀みのない言葉にサジタリーは少し驚いたがすぐに微笑んだ。

この気持ちはもう隠す必要も、遠慮する必要も無い。

目と目が合いとても幸せな気持ちになった。

「俺が我慢してるのに、そんなこと言われたら・・・」

サジタリーが小さく囁き、ぐいと引き寄せ、強く、優しく抱きしめられた。

「これくらいは、いいだろ」

胸の中で、私は小さく頷いた。

それから10日後、私は王宮に入った。周囲には、離縁の気持ちが落ち着くまで静養を兼ねて避暑地に行っている、という事にした。勿論、いつかは私が王宮にいる、と噂が広まりいつまでも隠せる事ではないが、それでもいくらかの時間稼ぎは出来る。

あとは私が努力すればいい事だ。

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