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離縁まであと12日 御義父様とお義母様の訪問2

この声・・・。

「・・・!!・・・サジ・・・タリー様!!いつから・・・何故ここに・・・!!」

御義父様が先程の真っ赤な顔から一変、青くなり震え出した。

御義母様は、同じように青い顔になりその場に座り込んだ。

「サーシャ、レンの頬を冷やしてやれ」

「・・・・ふえっ・・・ふえっ・・・はい・・・」

もう、また泣いてる。私が泣きずらいじゃない。

ヒリヒリと痛む頬をさすりながら、サジタリーとサーシャがいると、心が暖かくなる。

「こ、これ・・・を・・・」

ぐちゃぐちゃの顔で濡れたタオルを私の頬にあててきた。

「ありがとうサーシャ」

幾つもの涙を流しながらも、本当に私の事を心配してくれてるのだとわかり、頬の痛みが消えていくような気がした。

「さて、質問に答えようか。いつから話を聞いていたのか、だったな。カテリナに別邸を与えよう、と言う所かな」

蔑む笑いをしながら、私の横に座った。

それ、始めの方からだよね?つまり、全部見ていたということか。

「お2人とも、お座り下さい」

聞いた事のない嫌味な言い方だ。

とても、怒っている。

2人がすぐさま、前に座った。

「暴力はいけませんね」

「ま、待ってください!今初めての事です。余りに物分りがないので、躾の一貫でしたもので、これまで手を挙げた事はあません。レンは侯爵家の妻でありながら、役目を果たしておりません。ですので」

「ほう」

御義母様の言葉を鋭く遮る。

「今初めて、とはよく聞く逃げ台詞だな。先程2度目のために手を振り上げていたな」

足を組み、笑いながらいう言葉が冷たかった。

「・・・いえ・・・それは・・・余りにも我儘を言うものですから・・・」

しどろもどろと御義母様は下を向き、助ける求めるように御義父様を見た。

「では、いつも気に入らなければ手を挙げていたという事か」

「ち、違います!!妻は」

「口を慎め!」

うっ、と御義父様が息を飲んだ。

「お前に聞いていない。夫人に聞いているのだ。それとも何か?私に意見する気か?」

「い、いえ・・・」

ますます顔色が悪くなる。

「1度手を挙げるということは、それは何度も挙げているという事だ。これが初めて?そんな馬鹿げた話を誰が信じる。本当に手を挙げない者は1度も挙げない。つまり、お前達はレンにいつも手を挙げ従わせていたのだ。これは、宰相に報告をしておく」

「お、お待ち下さい!!サジタリー様は騙されているのです!!」

「騙されている?この私が?」

ああ・・・この言い方、かなり怒っている。

少し目を釣りあげ、声も小さめでありながら、その奥底に燃え上がる怒気に気づく人は少ない。

「そうです。その娘が自分が愚かなのを棚に置き、周りから蔑ろにされていると妄想をおこしているのです。実際我々は、特にホーンはどれだけ気を使っているか気がしれません。今回の婚儀も我々はシュルク家からかなりの援助を受け、反論する立場にないのです」

必死に訴える御義父様に、サジタリーは可笑しく笑った。

「私の知っているレンはそんな事をしない。この1年でそこまで変わるような事をお前達がした、という事か」

「あ、あの、この・・・いえ、レンをご存知なのですか?」

知らないのね、私とサジタリーが同じ学園て通った事を。

その程度なのね、と思う自分に疲れた。この人達にとって私は成り上がりの伯爵家の娘でしかないのだ。

「お前達より長く知っている、大切な友人だ。だからこそ、友人であるレンが嫁ぎ先で蔑ろにされていると知り、私が、離縁を薦めたのだ」

息を飲むのが聞こえた。

「先程、王族の血を引くと由緒正しきザカリ家、と言っていたな」

何て冷徹な声と威圧的な声。

「お待ち下さい!それは言葉のあやでございます!!」

「それで許されると思うか?ザカリ家など、王族の血を、と言うに乏しい程度ではなかったか?何十年もの前の第3王子の愛人の子程がそう言うか。それこそ王族の血を侮辱するに値する!正当なる血筋を持つものこそ、王族の血と呼べるものをお前達は軽々しく使っているとはどう言う事だ!」

王族の血は確かにその程度だが、ザカリ家は昔はそれなりの功績を残している。だから侯爵までのし上がったのだけれども、言った内容が、それも聞こえた相手が悪かったな。

「も、申し訳・・・ありません・・・」

震えながらも答える御義父様は、それでも私を睨む事は忘れていなかった。

お前のせいだ!と言わんばかりの目で、見る。

「ザカリ家の王家に対する愚弄は父上に報告しておく」

「お、お待ち下さい!!それは、全てそこの娘が引き起こしたこと!!」

私を指さし、私のせいだと言う。

「どうも、話が通じないようだな。先程私は言ったな。レンが蔑ろにされているから私が離縁を勧めたのだ、と。今のお前たちの姿が発端なのを理解していない。それも、手を挙げる暴力行為もある。ああ、これは、法務局にも伝えておく。ザカリ家では、躾のために、人を殴る事を常としていると」

「お、お待ち下さい!!」

「黙れ!」

御義母様が真っ青な顔で、打ちひしがれるように項垂れた。

「全てレンのせいだと言うなら、そのレンの為に離縁を進めている私のせいでもある、とお前達は遠回しに言っているということか」

「いや・・・!そんな、そんな事は!!」

「では、何だ。言ってみろ。先程から、私がレンに騙されている、全てレンが悪い、レンが我儘だったという。つまり、私の目が節穴で愚かだと、だからお前達が改心させてやろう、と言う思いなのだろう?」

高圧的に笑いながら言うサジタリーに、御義父様はぶるぶる震え、もう声が出せなかった。

御義母様は必死に下を向いていた。

「答えがないようなので、ザカリ家ご当主に聞くとしようか」

「え!?」

「何故!?」

2人が悲鳴に近い声を上げた。

いい所を突くわね、サジタリー。

「何故?それこそ何故そう聞く。お前達はザカリ家の者だ。全て当主の意思に従い行動しているだろう?王家を愚弄し、躾と称し暴力を振るう。それともこれは当主の意思を無視し動いているのか?」

「そ、それは・・・」

返答に困るだろう。

恐らくおふたりは、ホーン様に会うために屋敷に行ったのだろうが留守だったのだ。本来なら当主の指示なく勝手に行動すべきでは無いが、ある意味、親子なのだから離縁の撤回と言う同じ意思を持つなら、別段承諾も指示も仰がなくてもいいだろう。話をまとめ連れて帰れば、終わりだ。

容易に伺える行動だ。

私しか居ないと言う時間を狙って来訪したのだろうが、思いがけない訪問者に、ケンカを売ってしまった。

ホーン様に頼まれた、と言えば嘘になる。だが、勝手に来た、と正直に言えば当主の威信に関わる。それだけ脆弱で脆いとなれば、当主の資質が問われる。

「答えたくないのであればそれでいい。どうする、レン」

「お帰り下さい。お2人は謝罪に来たと仰ったが、謝罪の言葉はありませんでしたよね?つまり、お2人は離縁に反対されないと言うことですね」

「ま、待ちなさい!謝る」

「結構です!!」

始めて、人の言葉を遮った。

「催促された謝罪など、なんの意味がありますか?もう一度言います。私は離縁の気持ちは変わりません。お帰り下さい、もうお話は終わりです」

ここはサーシャが感心するほど、素早く扉を開けた。

「それと、このまま隠居されている屋敷にお帰り下さい。ホーン様に会い、今の事をお伝えしましたら、きっとサジタリー様と話が合わなくなりますよね?」

人は自分を悪く言いたくない。都合よく説明した内容と、サジタリーか王宮に帰り説明した内容とは、食い違うだろう。

「只でさえ、当主であるホーン様の許可なく動かれたのですから、サジタリー様との話が噛み合わないとなれば、よりホーン様の立場を危うくしますよ」

「・・・わかった・・・」

生気なくぐったり頷き、立ち上がった。

「お言葉もいりません。振り返らずお帰り下さい。ごきげんよう」

2人はよろよろと出ていった。

「よく考えてくれたな、レン。あのふたりをあのままザカリ侯爵家へ帰さないようにどうするか考えていたのに、上手く言いくるめてくれたな」

感嘆のため息をつきながら素直に褒めてくれるから、私もほっとした。

「だってお2人の話から、やはりホーン様は開封していないと確信したわ」

「確かにな。白い結婚での離縁、と理解していれば必ずホーン殿と一緒に来ただろうし、もっと大騒ぎしていた筈だ」

「ええ。でも、あのままザカリ家へ向かわせてしまえば、ホーン様に絶対に開封させる」

「お嬢様が辻褄が会わなくなると、あえて釘を指したから良かったですね。その言葉がなければ、あの方々は直ぐにザカリ侯爵家へ向かっていましたね」

サーシャがゆっくりとした手つきで私の頬にあるタオルを新しく変えてくれた。

そのとおりだ。

少しでも時間を稼ぎたい。

「赤くなってるな。大丈夫か?こんな事日常茶飯事だったのか?」

「お嬢様、どうなのですか?」

ふたりの不安な眼差しと、奥に潜む怒りに首を振った。

「本当に初めて叩かれたわ。それだけ余裕がなかったのよ。逆に良かったわ。今馬車の中で、サジタリーの前で暴力見せ、暴言を吐いたことを心底後悔し、不安がっているわ。もう後には引けない。私、絶対に離縁して見せるわ」

「勿論だ」

「頑張りましょう」

その後もう少し頬を冷やし、薬を塗ってもらった。





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