離縁まであと12日 御義父様とお義母様の訪問1
「御義父様と御義母様が?」
「はい。門番が馬車の中を確認し、お2人だけだ言うことですが、どうされますか?」
今度は御義父様と御義母様か。何かホーン様と話し合ってこられたのだろうか?
いや。
一昨日カテリナが、ホーン様はウォン様の夜会に招待され出かけた、と言っていた。ウォン様の夜会の時は必ず週末にあり、2日は泊まられるから、お会いしてはいない。
きっと噂好きな方々に色々吹き込まれて、不安になってきたのだろう。それとも、あのパーティーの時御義父様も御義母様も居合わせたのだから、何か言われるのは、侯爵家としての品位堕ちると言う世間体もあるだろう。
会いたくないが、はっきりと離縁します、と伝えたい。
「会うわ。サーシャあなたもいなさい」
「かしこまりました」
カテリナの時と同じように、先に応接間で待っていると、入ってきた。
「レン、良かったわ会ってくれて」
怒鳴られるかと思っていたら2人とも、和やかな空気で入ってきた。
「お久しぶりですです、御義父様、御義母様。こちらへどうぞ」
促すと2人とも私の前に座った。
「サイモンに聞いたわよ、離縁の申請をしているのですって?」
やはりホーン様は帰っていないのか。
「お前の気持ちはわかる。カテリナの事だろう?前前から別邸で、と思っていたのが遅くなってしまったな。すぐにでもカテリナには別邸に住んでもらい、ホーンと2人で住めば問題ないだろう」
え?
「元々愛人が一緒に住むのはおかしいものね」
今更?という言葉をとりあえず飲み込んだ。
「カテリナも妊婦だから、ゆっくりとした方がいいもの。申し訳ないわね。あの子達は昔から仲が良かったから、私達もつい考えなしだったわ」
そこが問題でない。
「そうだ。我々も気を遣うべきだった」
いいえ、結婚して次の日連れてくること自体おかしいのに気づかないの?
「ね、もういいでしょう?これで問題解決だわ。あなたも、寂しかったのでしょうから」
寂しい?そんな気持ちとうにない。いえ、始めからあったのだろうか?
辛いと言う気持ちを認めたくなくて、寂しい、と思っていたのかもしれない。
「タイミング悪く、カテリナが先に身篭ったが、ふたりで住み出したらお前もすぐ子が出来るだろう」
何なの?
「そうね。カテリナが先に身篭ったせいで、あなたも嫌な気分よね。跡取りを産むのが当然なのに、その役目を果たせてないなんて妻の意味が無いものね」
何なの?
「子が出来たらカテリナに聞けばいい。あの子は優しいから、色々教えてくれる。ホーンとの子供なのだから可愛い子が産まれるから、お前も可愛がってやればいい」
「その通りだわ。きっとあの子は男の子を産んでくれるから、あなたは跡取りを気にせず女の子を産めばいいよの。ほら、なんの心配もないわ」
至極当然とばかりの内容にと、カテリナの無邪気さとは違う、嫌悪感を感じる笑いに息が詰まりそうになる。
この人達にとって、やはりホーン様とカテリナあっての全てなのだ。
私を蔑ろにして申し訳ない、と言っているつもりなのだろうが、全く、微塵も、そんな感情が見えない。
この方々も、ただ、シュルク家のお金が欲しいだけで、私という人間は必要ないのだ。
政略結婚に期待してた訳では無い。
ただ・・・1度でも私をホーン様が求めてくれていたなら、きっと頑張れたと思う。
たとえ愛がなくとも、それでも、その1度があれば、正妻としての役割が果たせている、と思えた。
「さあ、帰りましょうよ」
何故にこやかに、問題解決とするのだろう。
「ホーンが待ってるぞ」
いいえ、あの人は待っていない。
「どうしたの?」
2人が立ち上がるのに、私が座ったままなのを不思議そうに聞いてきた。
「私は帰りません。離縁の気持ちは変わりません」
そう、何も変わらないわ。
「何を言っているんだ?もう、悩みはないだろう?」
「そうよ。あなたはホーンの妻のなのだから」
「離縁の気持ちは変わりません」
はっきりと、2人を見上げ言った。
「貴様、何様だ!!我々がこうやって謝罪に来たものを無下にすると失礼だろうが!!」
失礼?
どこが?
ひとつとして謝罪はなかった。
「甘えるのもいい加減しなさい!!」
甘え?そうかもね。ホーン様が甘えているのだわ。
「離縁の気持ちは変わりません」
バシッ!!
御義母様が動いたと思ったら、頬に鋭い痛みが走った。
「どこまで迷惑かけるの!!あなたがホーンの誕生日に、それもサジタリー様が連れ去ったことは笑い草になっているのよ!!どんな躾をしていたんだ、と!!」
「たかが成り上がりの伯爵家程度のくせに!!我が家は王族の血筋を引く由緒正しきザカリ家だ!!その名をを汚すとは身のほど知らずが!!それもサジタリー様まで拐かすとは、王家を侮辱し、軽視するとは愚か者め!!」
笑いが出そうだった。
私は王家を侮辱した事も、軽視した事もない。
ましてや、サジタリーを拐かしたつもりも毛頭ない。
「あなたには躾が必要だわ!!」
もう一度御義母様が手を挙げた。
「そこまでだ。成程、暴力もあったとは、これは離縁されても仕方ないな」
扉が開く音と、怒りを含む声が一緒に部屋に響いた。




