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思い出のオモチャ

「おまえ、ミドリちゃんに嫌われてね?」

 藤原と昼飯の弁当を食っていると、そんなことを言われた。

 ちなみにミドリは学食派で今は教室にいない。

「あ、それあたしも思ってた」

 俺の右に座っている女子まで話に混じってきた。

「あたし見たんだよね。この前の英語の時間あんた授業中にこけたじゃん。あれ、彼女のせいだよ。上坂の椅子後ろに引いてたの目撃したんだ」

「って! おまえ見てたなら注意しろよ」

「だって、黙ってたほうが面白いじゃん」

 椅子事件の犯人よりも、そっちのほうが衝撃的だよ。

 しかし、やっぱ最近のポルターガイストの犯人はミドリだったか。

「……まぁ、薄々は気づいてたさ。なんか知らないけど、俺あいつに嫌われてるっぽいし。でも、その理由がわからないんだよなぁ」

「街でしつこくナンパしたんじゃないのか?」

 俺は藤原のようなチャラ男じゃないぞ。

「でも、芳賀沼さんがそんなことするって珍しいよね」

「ん? 誰?」

「は・が・ぬ・ま。あんたの左に座ってる子だよ」

「芳賀沼。……なんか、どこかで聞いたような」

「この辺じゃ珍しくない? あたし最初読み方分からなかったし」

 昔、そんな名前の男友達がいた気がする。


 ――さて、ろくに話もしない間柄のくせに、その後もミドリからのちょっかいは止まらなかった。

 翌日登校してみれば、俺の下駄箱の中には淡いピンク色のファンシーな封筒が入っていて、まさかラブレター!? と期待して開けてみれば不幸の手紙だったり、「上坂、辞書貸して」と珍しく話しかけてきたから「ほらっ」と優しく貸してやれば、返ってきた辞書にはびっしりとパラパラ漫画が書かれてたりした。

 辞書への落書きに関しては明らかにミドリの仕業なので、さすがに文句を言ってやろうかとも思ったが、読んでみるとこれが意外と面白く、むしろストーリーの続きを書いてくれと一瞬迷った俺も俺でどうかしてる。


 そして、そんな小学生みたいな悪戯が一週間も続いた金曜日の放課後。


 掃除から帰ってきて、部活に行くために机にかけた鞄に手を伸ばすと、鞄のチャックが開いていた。俺の鞄から、何か、黒いプラスチックの棒のようなものが出ていた。

 引っ張り出してみると、なんと、手のひらサイズはあるでっかい蜘蛛が出てきた。

「うわぁ!」

 すぐ手を離して振り払う。

 ……でも、床に落ちたその蜘蛛をよく見てみると、単なるオモチャだった。

 ちょっと見ればすぐわかるような、安っぽいビニール樹脂でできた蜘蛛の模型。それを見て、心臓が激しく鳴り出した。

 性質の悪い悪戯にビビッたからじゃない。そのオモチャに見覚えがあったからだ。

 それは、俺が小さい頃ばあちゃん家の近くの商店で買ったもので、一人の友達と別れるとき、そいつにプレゼントしたものだった。


 ――そいつ。確か「芳賀沼」って名前だった。


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