表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

ポルターガイスト

 それからだ。俺の周辺で奇妙なことが起こり始めた。

 最初の事件は、次の英語の授業中に起きた。

「それじゃ、ここの英文を……上坂、読んで訳してみろ」

「はい。Prime minister of ……」

「よし。じゃあ次を――」

 予習のヤマが当たった。この教師は、全員にまんべんなく当てるタイプなので、今日はもう当てられることはないだろう。

 残りの時間は明日の範囲でも予習してるか。

 と、そんなことを考えながら着席しようとした瞬間だ。本来あるべき所に、俺の椅子が無かった。

 ケツが特大の警報を脳に向けてかき鳴らし、すぐさま俺の体中に非常事態宣言が行き渡る。やばい、踏み止まれ!

 足を瞬時に引いて、体の落下を食い止める。咄嗟の判断にも、俺の体は機敏な反応を見せ、間一髪で尻餅を回避した。幼稚園に入る前から、親父に空手を習っていてマジでよかった。

「なにやってんだ? 上坂」

 教師が不思議そうな顔でこっちを見る。

「あ、なんでもありません」

 危なかった。こんなことで恥をかくのは御免だ。右に座っている女子が笑いを堪えてるあたり、手遅れな気がしないでもないが。

 ……でも、なんで椅子下がってたんだ?


 授業が終わるや否や「何一人ではしゃいでんの?」と、さっきのことを藤原のやつに突っ込まれた。居心地の悪かった俺は、「なんでもねーよ」と言い残して教室を後にした。

 特に用事があったわけでもないので、自販機で適当に選んだコーヒーを飲みながら、ほとぼりが冷めるまで時間をつぶし、ギリギリで教室へと戻った。

 後ろのドアから教室に入って、席へ向かう。――そして、自分の椅子の前で立ち止まった。

 目を疑ったね。

 ぽつん、と。それは、まるで迷子の小人のように。

 金色の画びょうが落ちていた。

 新品で、キラキラと輝くその画びょうは、針を上にして、ただそこにあった。

 主人の帰りを待つ、子犬のように。


 そんな光景に、俺の涙腺が少しだけゆるんだ。

 ふと左を見ると、壁の張り紙の一つが不自然に風でなびいている。

 そりゃ、片方の画びょうがなければ、そうなるわ。

 俺は、今にも剥がれそうなその張り紙を見ながら思った。


 いじめ、絶対ダメ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ