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席替え直後のひととき

 席替えの後の、休み時間。さっそく藤原のやつは、地の利を生かしてミドリにアプローチをかけていた。

 俺は、辞書片手に次の授業の予習をしながら、二人の会話をぼんやりと聞いていた。

「……熊ヶ根って、けっこう田舎じゃなかったっけ?」

「そうなの。ここからだと、車で40分はかかるかな。でもね。町の真ん中にきれいな川が流れてて、夏になると蛍がいたりするの」

 ミドリは、俺以外には相変わらず愛想が良かった。

 しかし、こいつ熊ヶ根の出身か。俺も昔、熊ヶ根のばあちゃんのところに遊びに行ったっけ。

「あれ? 上坂の出身もそこじゃなかったか?」

 突然、藤原に会話を振られた。

「あ、いや、俺は出身なんじゃない。ただ、ばあちゃんの家がそこにあって、何度か遊びに行ったことがあるだけだ」

「蛍はいたか?」

「いや、見てないな。それに遊びに行ったっつっても小一の頃だしな。ほとんど覚えてねーよ」

「うわっ、ひでーな。――ミドリちゃんも気をつけなよ。こいつってば、進級の危うい友人にノートを貸し渋るような冷酷なやつだから」

 藤原は、ネタとして言ったんだろう。でも、 

「ホント、上坂は薄情だね」

 色のないミドリの声が通った。

 教室の中で、俺たちの時間だけが止まった。

 俺はある程度予測していたので、だんまりを決め込み、ミドリのやつは視線を俺にぶつけ続けていた。一人藤原だけが、事態についていけず、笑顔のまま固まっていた。

 チャイムが俺たちの時間を壊すまで、ヘンテコなトライアングルが続いた。


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