4 シーマインタートル
マウス皇国が滅亡した。
この情報はハイエナ王国の偵察兵によって世界中に広められ、勇者が大陸中のモンスターを全滅させた後に自害した悲しき物語も広められた。
これに喜んだのは誰でもない国王であった。
これでまた再び他国を侵略できる。
いや、念願の大陸統一だって夢ではない。
国王の予想は的中した。
ハイエナ王国は一年という短い期間で大陸を統一した。
国王は大陸統一を果たした歴史上最初の人物として後世に名を残すことになる。
が、大陸統一から半年も経たないうちに大陸各地で内乱が勃発。
独立を宣言する地域が次々と現れ、王国軍と各独立軍の間で戦闘が始まった。
そして、各独立軍が結託して王国軍を撃破。
国王は大陸統一から一年もせずに処刑された。
こうして、世界に平和が訪れ……。
……る訳がなかった。
今度は独立した各国が民族や宗教を理由に戦争を始めた。
やがて大陸内で勢力が二極化し、両陣営で多くの戦死者を出した結果、戦争が終結し、片方の陣営が大陸を掌握した。
と思ったらその陣営の中でまた戦争が始まり、国土が大きくなりすぎた国の中でまた独立する地域が生まれ、新たな内紛が起こった。
戦争がここまで連鎖して引き起こされる理由をとある国の武器商人はこう語る。
「旧ハイエナ王国の兵器にマインタートルってのがあったろ。マインタートル自体はモンスターに踏まれすぎて絶滅したんだが、絶滅する前にウミガメと交尾しちまってな。シーマインタートルが生まれちまったんだ。要は生きる機雷、いや、魚雷って言ってもいいかもな」
武器商人は続けてこう語った。
「そのシーマインタートルは群れの一匹が獲物に突撃して自爆することでクジラやサメを仕留めるんだ。そんで、そのシーマインタートルがクジラと間違って船に突撃しちまう事例が多発してな。当然、突撃された船は例外なく全て沈没した」
「漁業は疎か海運業全般が衰退し、全く機能しなくなった。人類は大量輸送の術を失った訳だ」
「そして、戦争がここまで絶えないということは、制海権を握り海路を確保するということが覇権国家で居続けることの条件だったんだろう」
「つまり、これから生まれる国も含めてすべての国は戦争に勝つための、そして勝者で居続けるための決定打を失ったんだ」
そう言うと武器商人はカウボーイの服装に着替え、サングラスを胸ポケットから取り出した。
「まあ、前々から戦争で大金稼ぎたいと思っていた俺からすると願ったり叶ったりの状況だけどな」
武器商人はサングラスをかけ、内ポケットから指揮棒のような魔法の杖を取り出す。
「さて、俺は新兵器の商談があるからここで失礼するよ」
そう言って武器商人は使役魔法で馬を呼び出し、自分の豪邸兼研究所を後にしたのだった。