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異世界転生したくない!  作者: 紫 和春


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第8話 試作

 腹をくくったのはいいが、まだ問題はいくつか残っている。

「実際に石鹸を作ってみないと、問題点が洗い出せないんですよね」

「そこは実際に作ってる工房とかにお邪魔させてもらうのがいいんじゃないの?」

「それもいいですが、職人気質の人たちの可能性も否定できません。そうなると、工房に入ることすら出来ないかもしれませんね……」

 志木はそんなことを述べる。

(だけど、これはあくまで自分の推測。場合によっては、その場で抹殺される可能性もありうる……!)

 志木はこの世界のことを何だと思っているのだろうか。

「まぁとにかく、今は石鹸がちゃんと作れるかどうかを検証する必要がありますね」

「それには、どういうのが必要なの?」

「えぇと、石鹸を作るのに必要なものは……」

 そういって志木は、紙に思い出せるだけの知識を出す。

「最低限必要なのは、油と苛性ソーダですね」

「かせいそーだ?」

「まぁ、アルカリ性の物質……、って言っても分からないか。身近な例だと、水に灰を溶かして濾した物になります」

「灰から作るの?」

「そうです。これと油を混ぜることで、ドロッとした液体になります。この状態で型に流し込んで冷却すれば、石鹸の元が完成します。物によっては、ここから熟成させることになります」

「なんだか大変なのね」

「まぁ、家庭で作る分には量とか気にしないので、簡単な方法になりがちですけど」

 そういって鉛筆を置く。

「とにかく、まずは作ってみる必要がありますね」

「となると、桶が必要になるわね」

 そういってルーナが席を立つ。

「今から買いに行きましょ」

「今から? ルーナさん疲れてるのでは……?」

「別にこのくらいなら平気よ。今はカイトのやりたいことを優先したいから」

「そー……ですか」

 ちょっと言葉に含みがあるような気もしたが、志木は何も聞かなかったことにした。

 そのまま夕暮れの市場に行く。雑貨を取り扱っている店に出向き、桶とビーカーのようなコップを買う。

「後はどこかで灰と油を貰う必要がありますね……」

「それなら宿の主人に聞くのがいいんじゃない?」

「そんな気前よくくれるものですかね……」

 そんなことを心配していた志木だが……。

「油と灰? あるよ」

「あるんだ……」

「廃油なら今日の料理で出た分が少しある。灰はいくらでも出るから、持って行っていいぞ」

「ありがとうございます」

 そういって油と灰も手に入れることが出来た。

 こうして材料は揃った。

「あとは水か……」

「水なら魔法で出せるわね」

「じゃあ、それを使いますか」

 そういって実験が始まった。

「まずは、灰を入れたビーカーに水を入れて……」

 すると、当然だが濁った水が出来上がる。

「次にこれを布で濾しとって……」

 余っていた布を使って、灰と水を分ける。

「これでアルカリ性のが出来ました」

「これだけでいいの?」

「えぇ。それに、この水だけでもある程度の洗浄能力があるんです」

「へぇ……」

「ただし、強アルカリ性なので、間違った使い方をすると命の危険があります」

「どうしてそんな危険な物を作ったの?」

「本当は細かい説明があるんでしょうけど、よく覚えてないのでスルーします」

 そういって志木は、廃油の入った瓶を手に取る。

「出来た強アルカリ水溶液に、油を入れてよく混ぜます。すると、中で化学反応が起きてドロドロになっていきます。この時、発熱するので注意が必要です」

 志木は木のスプーンで溶液を混ぜ合わせる。

 約10分後。溶液が乳白色になってくる。

「このくらいになれば、型に流し込んで……」

 木枠に溶液を流し込む。

「これを冷暗所で一日ほど放置します。今回はベッドの下あたりにでも置いておきましょう」

「明日になれば完成なのね?」

「いえ、型から出したら、さらに数週間ほど置いておく必要があります」

「それも必要な工程?」

「どうなんでしょう……? 必要だから工程に含まれているんじゃないですかね……」

 そういって志木はベッドの下に型を置く。

「さて、時間がありますので、今日使った道具を洗いますか」

 その時、志木が固まった。

「……どうしたの?」

「……これらを洗うのに、酢が必要なのを忘れてました」

「酢って、料理に使う酢?」

「そうです。今回使った材料はアルカリ性。これを中和するためには酸性の酢が必要なんです」

「うーん、よく分からないけど、酢が必要なのね?」

 ルーナは少し考えると、何か思いついたようだ。

「ちょっと待ってて」

 部屋を出て数分後。何かを手にして戻ってきた。

「主人に頼んで、酢を貰ってきたわ。これで何とかなるかしら?」

「はい。ありがとうございます」

 その酢を、今回使った容器に振りかける。これで中和できただろう。

「さて、後はほぼ放置するだけなんですが、出来上がる前に一つだけ用意しておきたいものがあります」

「用意しておきたいもの?」

「はい。それはリトマス試験紙です」

「りとま……?」

「酸性がアルカリ性かを確かめる紙のことです」

「それがどうして必要なのかしら?」

「今回は目分量で作っていましたが、もしこの手作り石鹸が強アルカリ性だった場合、皮膚を溶かす可能性があるんです」

「そんなに危ない物を作ってたの?」

「とにかく、今は石鹸が出来るか確かめたかったもので……」

「まぁ、いいわ。ブルーベリーなら手に入りそうだし、明日にでも買いに行きましょ」

 こうしてこの日は終わった。

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