表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

四 御糞体内転身


 葬儀も終了し、父は御糞体を庭に建て、私の骨壷は四十九日まで家に

置く事になった。


仏間の天井に佇んで、これからどうなるかと考えていたら、

ぽっと小さい爺さんが現れた。


七センチ位で白い袴を履き、白い上依を着ていた。

頭髪は白く顎髭を生やしていた。


「誰ですか? 神様ですか?」


「いいえ、わしは案内人だ」


「案内人とは?」


「これから貴方のような魂の行き場所を案内する」


「魂の行き場所?」


「まあ、あの世に行くのが普通だが、最近は色々選べるのじゃ」


「あの世とはどんな処ですか?」


「あの世には二つ世界があり、人間が呼んでいる言葉で天国と地獄じゃ、天国は

全ての欲望を捨て慎ましく生きる事でそれを破ると地獄に落ちるとされている」


「あの世へは行かなくてもいいのですか?」


「最近規則が変わり死んだ歳が四十歳までは行かなくても良くなった」


「じゃ、何処に行くのですか?」


「それを案内するのがわしだ」


「じゃー お願いします」


「その前に希望はあるのか?」


「あります。生きている時はデブで馬鹿にされ、転生して戻って来て見返して

遣りたいです」


「その項目もあるが最後になる。お前は死ぬ時に御糞体を出しているので最初

はそれから始めるが良いか? もしあの世に行きたいなら優先的にいける

がどうだ?」


「迷っています。最近の人の傾向は如何ですか?」


「ぎりぎりまで行きたがらないね、特に殺されたり、自殺したりは特例で

居たい時まで居て良いらしいから」


「分りました。私も色々経験して駄目ならあの世に行きます」


「御糞体内転身と言って御糞体の中に昆虫の卵がありそれに乗り移る。

卵から幼虫、そして成虫になる。では始めるぞ、えいー」


気合いと共に私の魂は暗闇に落ちた。


白いうねうねとした幼虫になった。


そして、御糞体の中で糞を食べ始めた。


穴を掘るように食べ進めると、外に出たのか光りが入ってきた。


恐る恐る覗くと、蠅叩きを持った巨大なデブが此方と見ていた。


思わず首を竦めた。


父親だ! 御糞体に蠅が集るのを警戒しているようだ。


私は後ろに下がり他を彫り進めた。


彼方此方縦横無尽に彫っている内に眠くなり寝てしまった。


私は蛹になり御糞体から外に放出された。


茶色に輝く堅い殻に入れられて地面に落ちた。


その衝撃で蓋が開き私は転がり出た。


胸からお腹にかけて紺色のメタリックの鎧を着ている。羽根は透明で虹色

に光っている。


大きな二つの複眼でほぼ三百六十度見える。


黒い毛の生えた手足は頑丈そうだ。


「転身が出来たようだな」と案内人の爺さんが現れた。


「此処での使命だが、御糞体の上にカマキリがいる、そのカマキリの廻りを

十回廻りカマキリの鎌を避けられたら合格だ」


「でも、父親が見張っているようですが?」


「大丈夫、今は昼飯を食べている」


私は羽根を高速で動かした。


(凄い、前後左右に自由に飛べる)


私は御糞体の後を垂直に上昇した。


御糞体の頭頂部にカマキリはいた。


近づくと「金蠅が何の様だ! 食べちまうぞ!」と脅して来た。


もっと近づくとブーンと鎌が飛んできた。


早くないぞ! 十分避けられる。


私は難なくカマキリも廻りを九周した時、「アビー」と言葉を発してカマキリの

体の下で潰れてしまった。


最後の力を振り絞って上を見ると巨大なデブが此方と見ていた。


そしでカマキリの上に巨大な蠅叩きが乗っていた。


「この虫どもが御糞体の上に乗りやがって!」

恐ろしい顔で蠅叩きを外した。


その時金蠅の体から私の魂が抜けた。


案内人の爺さんが現れ魂を掴んだ。


「失敗だったな。まさか父親がこんなに早くもどってくるとは、さあ行こうか」

と私を掴み違う世界に移った。

読んで頂き有難うございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ