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エルディー組ダメ出しされる

 食べた食べた。

ゆじゅちゃんの熱が下がったお祝いに今夜はご馳走だったぴょん。

チマちゃんの監督の下、

ホウサちゃん、パトリさんとミルカさんの四人で作ってくれたそうで、

エルディー国の王宮料理のアレンジだってチマちゃんが自慢げに言ってた。

参考にした料理は薄味だから手直ししたそうだけど、

貴族さんなのにあんなに料理が上手なんて凄いな~って小並感。

食事中は旅の出来事をチャオロさんが聞きたがってて、

ゆじゅちゃんが出立してからの話を沢山話してくれた。

チマちゃんとフレヤさんも横からそうだったそうじゃないって、

凄く賑やかな食事だったの。

深紅さんは終始楽しそうに、

チャオロさんは聞いてる最中なんかずっと悶えてた。

この人静かにしていれば凄く格好良いと思うんだけど、

動き方や喋り方や性格が一々残念。…顔以外全部か!

それはそうと、ゆじゅちゃん達は大変な冒険してきたんだね~。

一つ間違いがあったら出会うことがなかったのか~。

う~ん、一期一会。

なんて考えながらユルシュル茶って甘いお茶を飲んでたら、

ゆじゅちゃんがみんなを見渡してから喋り始めた。

 「さて、妾の失態の続報なのじゃが、

マイロとウエイを見つけたとアーダさんから連絡が…」

「無事なのかっ!?」

エブロきゅんが大きな声で話を遮って立ち上がった。

まぁ、気になるよね。

マイロきゅんの事はファイーナ様の神託があるから大丈夫…、

とはいかないよね~。

エルフ全体のために切り捨てられるかもってのは、

マルゴーサおじさんがその身で示したからね。

「うむ~、今のところ大丈夫じゃ。

二人は今トロワイヤ王国という国の片田舎におると報告を受けておる」

「どこそれ?」チマちゃんが首を傾げてる。

「待てれ待てれ、話の腰を折るでないぞ…。

トロワイヤは神樹の森を北に行った場所じゃ。

ここからは千キロ以上離れておるので合流するのは無理じゃ。

話は戻って一昨日の朝にエルフを含めた数人が、

件のフェネオンの町から東へ向かっていると通商ギルドへ通報があったのじゃ。

それを聞いたアーダさんが町の外を探して、

多数の飛竜を擁するキャラバンの中に二人を見つけたそうじゃ。

しかしのぉ、対精霊結界の様なモノに阻まれて近づけぬので、

遠くから様子を(うかご)うたんじゃと。

んで、二人は飛竜に乗ってトロワイヤ王国の村まで行ったのを見届けたが、

そこでアーダさんが魔力妨害の罠を踏んで召喚解除されてしもうたそうじゃ。

相手が何者かは分からんが、

ウエイ殿は武器を没収されずに携帯したまま、

二人は自発的に粗奴らに同行しておったようなので、

まずは安全、じゃと良いな~…」

ゆじゅちゃん、そう言って目をそらしたよ。

「ま、そんだけ分かってればいいや。

敵がいる中、はぐれたマイロが悪いんだしさ。

神様の言うとおり好きにさせとこうぜ。

一緒にいた奴らってどうせ敵だろうけど、

情報を売るなりなんなりで何とかなるだろ」

エブロきゅんはそう言ったら少し落ち着いた様子。

「ファイーナ様のお告げ云々は半分ヤケクソで言ったのじゃが…」

「女の子がクソなんて下品な言葉使うんじゃありません!

焼けお通じと言いなさい!」

「それを言うなら自暴自棄と言い直せじゃろ…」

ゆじゅちゃんの具合が良くなって、

チマちゃんも冗談を言えるくらい余裕ができたみたい。

……冗談だよね…?

 ミルカさんとサンサさんが食後の後片付けをしてくれたよ。

手伝おうかと思ったんだけどサンサさんは座っとけって。

弓組の六人は食後の鍛錬って言って外に出て行っちゃった。

追手が来たら危ないんじゃないかなって思ったんだけど、

「先日の街中とは違って人気のないこの場所なら、

弓の射程の外から気配に気づけるから来ても的だね」だって。

 エメリヤンさんはマイ道具を持ち出して手持ちの刃物を研いでる。

なんか、「フェネオンでゲット! マイ砥石二千番!」とか謎ハイテンション。

 意外なのはフレヤちゃん。

『暑くてだるい~』って言って、

話に参加しないで客間の方の廊下で寝っ転がってる。

あっちはカーペット無くて石畳みだからヒンヤリするんだとか。

氷系の魔法使いは暑いのに弱いんだって。

でも顔だけはこっち向いて話は聞いてるみたい。

旅でかなり北上してきたから、もう大陸北部に足を踏み込んでるんだって。

ここからは「南部育ちの人には地獄の灼熱地帯だお!」

とかチャオロさんが軽口を言ってたけど、ホントなんだろな~…。

残りの人はこの居間で追加のお茶菓子堪能中。

 「ゆじゅっ子とケンジャちゃん、ここに正座しなされ」

チャオロさんが小さな釣り竿(?)でカーペットの床をペシペシって叩いた。

一瞬で二人の表情が曇った!

揃って同じ顔して息が合ってるな~。

素直に二人が正座をするとチャオロさんは竿をゆじゅちゃんにビシッと向けた。

「ま~ずは~、ゆじゅっ子さん。

お馬さんで一晩に百キロの逃避行お疲れ様でつ」

「それは…、ケトシが適時回復と体力上昇魔法を使ってくれたので何とか…」

お説教かと思った所に労いの言葉でゆじゅちゃん困惑気味。

「それが駄目なんでつよっ!」

いきなり顔が般若に豹変してゆじゅちゃんの頭を竿でペシペシ。

ぶっ飛びな顔芸あるねチャオロさん。

「回復魔法も体力上昇魔法も疲労は治してくれないんでつよ!

お馬さんは運良く死ななかったけど心臓バクバクだったのでつ!

ゆじゅっ子で例えるとケトシの回復を受けながらなら、

違和感を感じずに一キロメートルでも全力疾走できるでしょうけれど、

心臓は酷使され続けている状態なので、

『あれ? 気づいたら妾死んでおらぬか?』って結果が待ってまつ!

以後回復魔法に対する考えを改めるように!

どんな状況でも適切な休憩は必要なのでつ、はいここテストに出ますよ。

暗闇の中追われる恐怖感で急いで離れたい心境は分かりまつが、

あくまでも冷静にペース配分を考えるんだぬ」

チャオロさんはそう言ってもっかいゆじゅちゃんの頭をペシペシ。

今のゆじゅちゃんの物真似巧かったな…。

そしてペシペシペシペシ…。

あれ、チャオロさんの目が据わってる。

「お馬さんの心臓はさて置いて。

アガタ国の姫様の部屋で一緒に寝たのは何か悪い予感がしたからでそ?

なして人に相談しなかったのかね? ん? おいらに教えてみそ?」

あ、これ本気で怒ってるぴょん…。

「そ、そりは…、予感がしただけで何の確証もなかったからでのぉ…」

「万が一の時は自分が守ってあげようと思ったんでそ。

自分も守られる側だってのが頭からすっぽ抜けてそう思ったんでそ?

王女なんだから自分が中心で周りを動かす事を心がけないとね。

これからの旅中でも勇み足をしでかしますよ?

(さら)われた時、ケンジャちゃんの保険がなかったら死んでましたよ?

自分自身が死ぬならバカ姫の末路で終わるけど、

それに引っ掻き回される護衛の末路も考えましょうね?

ゆじゅっ子を守れなかったらズキとチマ婆さんは打首でつよ?」

その言葉にチマちゃんが『婆さん』を意識的に(と思う)無視して首を傾げた。

「ケンジャ様の保険って何?

そういえばゆじゅが助け出された時、

紙一重で助かったのは私のお陰だ感謝しろ~ってケンジャ様言ってたわよね?

ケンジャ様はクー・シーのシュノークを召喚してゆじゅを追いかけたけれど、

ズキが先行して救出したから助かったんでしょうにって理不尽に思ったのよ」

チマちゃんのセリフにケンジャ様がドヤ顔をしてるぴょん。正座をしながら…。

「初対面の時に気づいたんだけれど、

ゆじゅっ子は精霊神ルールーの祝福を受けているんだぬ。

同じだけケンジャちゃんが呪いを受けているのが見えるから、

ケンジャちゃんが我が身と引き換えにゆじゅっ子の運気を上げたんだと思うけど、

そこの所どうなんだぬ?」

チャオロさんがケンジャ様に会話を振った。

「その通りだぁ、事前に神託が下る等難儀な旅になりそうだったのでぇ、

旅に出る前に姫に祝福を授けたのだ~。

祝福を受けるとぉ、危機の際にルールーが介入してくれるのだぞ~」

「なにそれずっる~い! あたしにも頂戴!」

「嫌…、姫一人祝福しただけで呪いの痛みがキツイのだぁ。

死ぬまで消えない痛みなんだぞ~」

「ケンジャ様もう死んだじゃん!」とチマちゃんのツッコミ。

「…死んでも消えない…」ってケンジャ様が言い直した。負けず嫌いだ。

「祝福とか呪いとかさ、見えるの? あたしにはさっぱりなんだけど」

「おいらもルールーの加護があるからの。

ルールーの眷属はファイーナの眷属と違って、互いになんとなく分かるんよ。

話は戻って今後ゆじゅっ子は自分で動く前に周りの人を動かしなされ。

そうじゃないと護衛が振り回されることになるのでつ。

続いてケンジャちゃん。

えーと、数千人の命と引換えに取引をして、

その結果、目の前で津波が起きて、

心に傷を負って他の人格に体の主導権を奪われたって?」

そう箇条書きで整理されると物凄く怖い話だね…。

あの大災害がケンジャ様のせいだったなんて…。

「耐えられると思ったのだぁ…」ってケンジャ様が意気消沈。

「…あのぉ。精霊神はそんな大災害引き起こす力なんてないぽよ…。

精霊神がそんなにすんごいのなら、

エルディー国の守護神ファイーナはこの先に起こる戦争の神託なんぞしないで、

自分でチョチョイのチョイって解決させちゃうって風に思わない?」

違ってた…。

ゆじゅちゃんとチマちゃんが胸にストンと落ちたような表情で驚いてる。

「言われてみればその通りじゃが、実際に津波は起きたぞよ?」

「先読みの力で得た予見を使って感情を揺さぶったんだと思うよ。

その精霊神は人気のない場所に居座っていたから、

人から忘れられかけていて焦っていたのかも。

精霊は人の心の中に住まうんだぬ。

誰からも忘れ去られてしまった時、精霊は力を失い死んでしまうんだぽ。

だから珍客のケンジャちゃんを前に、

大言壮語を吐いて存在を心に刻みつけたんじゃないかと思うんだぬ」

「ほえぇ~」って感心した声を上げたのはエブロきゅん。

ほっぺにおやつの樹蜜が鼻水の跡みたいについてて、見てるだけで共感羞恥心。

見た目は青っ鼻のガキ大将…。

「さて続いてまたケンジャちゃん!」

チャオロさんがそう言って竿で頭を強めにペシペシ。

「銀食器で毒物の判断なんかやっていたら死にまつよ?」

そう言ってまた頭をペシペシ。

「「「えっ!?」」」と一同。ぼっきゅんもつい声をだしちゃった。

「銀の色が変わる毒なんて一握りぽよ?

ましてや毒の強さなんて分かりませんよ?

ヒ素ひとつ取ってもヒ素化合物の一部は反応するけど、

あらビックリ、純粋なヒ素だと銀の色は変わらないのでつよ?

毒以外でも銀は黒くなるしの。

ってか風魔法レベル三の毒検知魔法ポイズンスニッフ、

ケンジャちゃんに教えなかったっけ? 教えましたよね?」

「あうぅぅ…」

えええ!?

そんな便利魔法あったの?

ってかケンジャ様知ってたけど忘れてた?

「言われてみてケンジャ様の記憶にその魔法あった事認識できたぞい。

ケンジャ様が失念していたようで妾でも記憶にアクセスできなんだ…」

「あうぅぅ…」

ゆじゅちゃんにダメ押しされた~…。

夕方に爆豪塵バカって言われたの冗談じゃなかったのか…。

「まあでも毒接種後の対応は多分合格点だの。

鉱毒と判別できたならキレート剤を試してみるしか手段はないよね。

で、それは判別したよね?」

えっ?

…スプーンの色が変わって速攻「これはヒ素毒だ~」って言ったような…。

「冗談でつ。銀の色が変わったら硫化物が入っていた事は確定なので、

鉱毒であってまつ。 複合毒だった可能性は否めませんけ・ど・ね!」

そう言って頭をペシペシペシペシした後に大きくため息をついた。

諦観の念?

「そしてチマ婆さんや」

とチャオロさんがチマちゃんに視線を変えたよ。

「バ…、ツッコんだら負けよね…。で、何かしら?」

「召喚契約の魔法陣使ったら二体現れたって?」

「ええ、あたしに縁のあったシルフの後、

そこのチャイチャイさんに似たような姿のおっとりした子が来て契約したわ」

「……ケンジャちゃん、そこに正座…」

「さっきから座ったまま…、(いた)っあだっ!」

ベシベシベシベシッ! 響く音が違う…。

ケンジャ様が遠慮なく叩かれまくり。

宮廷魔道士の権威の欠片も感じさせない姿だね~。

「使ったスクロールはその場で消滅しちゃったんだけど、

ケンジャ様が何かやらかしたって分かるものなの?」

「何が呼び出されたのかは分からんけど、

何をやらかしたのかは手に取るように分かるんだぬ。

その召喚契約は描かれた魔法陣じゃなくて紙自体が肝なんでつよ。

手間暇をかけて作られた魔法用紙だからえげつないくらい高価なの。

ケンジャちゃんはドケチだから消費期限が切れて劣化した紙を使ったんでそ?

召喚されたシルフの方は想定通り好相性ぽいから良いけど、

もう一体は得体が知れないから喚ばない事を強くお勧めするんだぬ」

リズム良くケンジャ様の頭をペシペシ続けながらチャオロさんが答えた。

「素直そうな子だったんだけどな~…」

「チマちゃんは未練丸出しじゃのお。

敵味方区別なく常時魅了発動とかヤバヤバじゃぞい?」

「魅了常時垂れ流しってマジ!?」

びっくらこいたチャオロさんがケンジャ様を叩く手が止まった。

ってか今までずっと叩きっぱなしだったんだ…。

「あの精霊が出た瞬間にケトシが精神防御魔法使ったけど、

それでも気持ちの弛緩を実感できたから常時発動は本当なんだろうなと思う」

とは、今まで静かにしてたズキきゅん。

「例え素直でもケトシとセットでしか使えない上、

油断したら主従関係逆転するかもとか中々凄い存在だぬ。

魔法が未熟なチマ婆さんはいよいよ呼ぶべきではないぽよ」

チャオロさんはそう言ってまたケンジャ様の頭をペシペシ始めた。

「なるほど…、ってか良くそこまで分かるわね…」

チマちゃんがちょっと尊敬したような目でチャオロさんを見た。

うん、才能は凄いのよね。

「分かりまつよ、おいらもそれでチャイチャイが出てきちゃったんだもん」

「「「お前もかぁ!」」」

ゆじゅちゃんとチマさんとチャイチャイさんがそう叫んで、

チャオロさんを蹴っ飛ばした。

食後のとりとめのない会話。

だけど綿密に準備されてた戦術が進行中だったって後で知らされた…。

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