ケンジャとイサゴ2
起(イサゴ視点
ここからわたし達にとっての全てが始まったのだぁ。
わたし達は教会に住むことになったのだぁ。
そこでわたし達はクレートから色々と教えられる~。
その教会はエルフを頂点として運営されていること。
正式名称をルールー教教会ということ。
自分はその教会の司祭であることなど~。
エルフ中心のはずの教会なのにぃ、
何故か他のエルフを見ることができなかった~。
けれども教会を訪れる信者は数多くぅ、資金も潤沢みたい~。
わたし達はまずエルフの巫女の侍女になるためにぃ、
一年ほど修行期間がかかるだろうと告げられたのだった~。
少し前から教会にいる人間のヘイディを含めて三人で修行生活が始まったのだ~。
教会は大きな礼拝堂以外にも大きな寄宿舎もあるのにぃ、
住み込んでいるのは八人だけでぇ、平日はとても閑散としていた~。
ここが賑わうのはぁ十日に一回の礼拝の日の集会に信者が集うときだけ。
ラッヘル・プフィッツナーという侍女長が修行の相手をしてくれたけどぉ、
これは酷く辛いものだった~。
すべき事自体はちょっと忙しい程度っていう感じだったけれど~、
プフィッツナーさんが怖かったのだ~。
ミスをするとすぐに木のムチが飛んできたのだぁ。
侍女長という立場なのにいつ巫女様にお使えしているんだろうかと思った~。
そもそも巫女様というのはどこにいるのだろぅ。
また、ここに来てすぐにケンジャが姿を消すことが頻繁になった~。
そんな時わたしはプフィッツナーにみつかったらと思いドキドキしていたのだ~。
プフィッツナーは目ざとくケンジャを見つけペシペシと叩いた。
彼女がどこに行っていたのかは後々に分かることになった~。
つい先日、教会の監視が誰もいないのでぇ、つい掃除をサボった。
夕方にプフィッツナーさんが木のムチを持って来てぇ、わたしを叩きにきた。
どうしてバレたんだろう。
ヘイディという娘は一つ年上だそうだがぁ、凄い内気で~、
会話のキャッチボールでパスが返ってこなくてよく会話につまづいた~。
頑張って聞いてみると、ヘイディも孤児でぇ教会に救ってもらったそうだ~。
この教会はエルフだけじゃなくてぇ、人間も救済しているみたいなのでぇ、
戦争で大変な時なのに凄いなぁと思った~。
厳しいことにはそれなりの意味があるんだろうと割り切ることにしたのだぁ。
起(ケンジャ視点
教会につれてこられてすぐに、
お掃除や買い物などの仕事をさせられるようになった。
動いてるのならまだ我慢できるんだけれど、お祈りの時間はちょっとキツイ。
ふと、教会周りの地図を見る機会があった。
なんとなんと! ルミナスの白金竜様のお屋敷の目の前だったのだ。
ルミナスの白金竜様!
創世二年には発見され、それから四百年以上ルミナスを守護する竜様!
クムベクパパから寝物語でいつも聞かされてかっこ良く思ってたの。
ある日、午前中に隙があって今から出ても夕方までバレない時があった。
そう思ったらイサゴにも言わずに飛び出して行ってしまった。
外に出たら白金竜様の居場所はすぐに分かってしまった。
とてつもなく高い建物が建っていたのだよ。
買い物コースとは反対方向だったのでこんな大きな建物にも気が付かなかった。
すぐに建物に向かっていったら、建物の前に門衛さんがいた。
会えないのかと半分残念に思いながら門衛さんに尋ねてみた。
「誰でもいつでも会えるよ」と言ってくれた。
だからあたしは躊躇なく中へ入っていったよ。
そうしたらね建物の一番奥に、
想像もできなかったくらい大きな真っ白な竜様がいたの。
床に手を付き座った姿は三十メートルくらいの高さがあったんじゃないかな。
思っていたドラゴンとは違くて、鱗がなくて全身が光る白い毛で覆われてた。
白い毛が魔道具の投光器の光に反射してキラキラと輝いて見えた。
竜様が言った「おや、随分小さなお客様だね。珍しい、エルフなのかい?」って。
想像と違くて少年のような高い声だったの。
あたしは自己紹介したの、自分の人生全部を語って。
それは二時間にも及ぶ自己紹介だったけれど、
白金竜様は嬉しそうに頷いて聞いてくれた。
今度は白金竜様が長い人生をわかりやすく語ってくれた。
その間、誰も他の人は来なかった。
一般では白金竜様はロアキンに味方してると思われて嫌われてるんだって。
魔王ロアキンがルミナスに来た時に白金竜様が戦わなかったのは知ってる。
それでみんなには白金竜はロアキンに屈したって言われてることも知ってる。
でも、あたしは二人が戦ったら町が壊れるから戦わない方法を選んだと思ってる。
本当のこと知りたいけれど初めて会った人が聞いてはいけない気もした。
最後にあたしはこう言ったの。
「今いるばしょにいると、あたしがあたしじゃなくなっちゃいそう」
そうしたら白金竜様が言ったの。
「じゃぁ次に君とあった時、本当の君かどうか合言葉を決めておこう。
『イチゴショートの後は』『アップルティー』」って。
後で考えたら子供だましの会話だったんだけれど、
子供のあたしには大切な秘密の合言葉に思えたの。
夕方帰ったらプフィッツナーさんに木のムチで叩かれた。
なんでバレたんだろう。
それはともかく、隙があったら白金竜様のところへ出かけようと思った。
それからは何度も抜け出して白金竜様に会いに行った。
やっぱりいつも白金竜様に面会する人はいなくて、
「友達ができて嬉しいよ」って言ってくれた。
とりとめのない話をする事もあったけれど、
白金竜様はあたしに色々と魔法も教えてくれた。
パパが使えなかった高速詠唱とかも教えてくれた。
そして教会に来て半年した頃、ある日突然に司教様に突然呼び出された。
承(ケンジャ視点
司教様に呼び出されて小部屋に入ると突然次のように言い渡された。
「ケンジャ、いやケンジャ様、あなた様が次の巫女になることに決まりました」
意味がわからなかった。
八歳になったばかりの元浮浪児のあたしが様づけで呼ばれた。
「どう言ういみ?」
あたしがそう言うとクレート司祭様が言いました。
「現巫女様の御寿命が尽きようとしています。
わかりやすく言うと今の巫女様がまもなく死んでしまいます。
急いで新しい巫女様をお迎えしなければいけません、それがあなたです」
「で、でもあたしはまだ侍女見習いで…」
そう焦って言うケンジャにクレートが言う。
「身分は関係ありません、巫女様は現教会のエルフから選ばれるのです」
そういわれるともっとしどろもどろになってあたしが返す。
「じゃぁイサゴはどうなの? あたしはオテンバだし、
おちついたイサゴのが巫女さまとよばれるべきじゃ?」
それに対してクレートが答える。
「大切なのは元気なことなのです、他は関係ありません、貴方が選ばれたのです」
変わらず意味が分かんなかったけど話を進めてみようと思った。
「何をすればいいの?」
それに対してクレートは、
「今すぐ地下へ…、急いで儀式が必要なのです」と。
あたしは少しの思案の後、うなずいた。
そしてあたしとクレートは地下への階段へと降りていった。
承(イサゴ視点
ケンジャが司祭に呼び出されて数日、戻ってくる気配がないの~。
聞こうにもその日から司祭もプフィッツナーもいない~。
残っているのは教会の下働きの人達ばかりぃ。
面倒くさい場所に連れて行かれてるのかな~。
帰ってくるまで待とうと思ってから時がたってついに半年。
教会にいる人達にぃ、何回もケンジャ達のことを聞いたけれど~、
やっぱり知らないって答えが返ってくるだけだった~。
集会の日も毎回別の教会から司祭さんが来ていて~、
ケンジャ、クレート、プフィッツナーの三人は行方知らずのまま。
どうしようかとオロオロしている間に修行の段取りが終わって~、
正式な侍女になる事が事務長さんに言われて決まったのだぁ。
決まった次の日から配置転換になった、なんと地下室が次の職場だそう~。
教会に地下があるなんて全然知らなかったぁ。
そしていよいよ地下への入場の時なのだぁ。
(巫女様は地下にいるのかぁ)
など思い地下へ進んでいくと別の道と合流し~、さらに下ると石の門があった~。
案内役の中侍女が石の門を開けるとそこにはかなり高く広い部屋がある~。
部屋は明かりに満ちていてぇ、見渡すと奥と右にも扉がついている~。
壁や柱はかなり細かい彫刻が施され天井からはぁ絹と思われる布も垂れ下がって、
豪華な作りであるのは孤児で目に疎いわたしが見てもわるぅ。
そして部屋の中央には大きな台座に柔らかそうなクッション~。
そしてそのクッションに座っていたのはなんとケンジャだったのだぁ。
「ケンジャ~!」とイサゴは叫ぶがそれに対して、
「呼び捨てにするのではありません、巫女様とお呼びなさい」
クッションの横に立っていたプフィッツナーに叱咤された。
わたしの頭の回転は早いと思う、何がおきたのかわたしはすぐに分かった~。
半年前にケンジャが呼び出されたのはぁ、巫女にされるためだったのだ~。
(でも巫女って何だろ~、なんで地下にいるんだろ~)
そう考えたのは一瞬で、巫女が辛い生活をしていることがひと目でわかったのだ。
ケンジャの虚ろな表情がわたしにそう語りかけていた~。
わたしが辛いと思って頑張ってきた半年はケンジャの足元にも及ばなかったぁ。
そう思ったらできることは侍女の仕事しかないぃ。少しでもケンジャのために。
次の週には正式に侍女を任された~。
週に半分ほど役は巡ってくるから、
それらをケンジャに全て費やそうと思った~。
侍女になってすぐケンジャに言われたのがぁ、
「ないしょで外出する時間がほしい」だった。
見回り役は自分だけなので何かがなければ五時間以上出かけることができる~。
みつかっても木のムチだけだろうと思い、許すのがわたしの習慣になったのだぁ。
転(ケンジャ視点
あたしが巫女になって五年が経ちイサゴとあたしは十三歳になった。
今でもイサゴの持ち時間を利用して外出をしている、もちろん白金竜様の所へ。
白金竜様とはこれまで以上に身近な話題しかしなくなっていた。
でも、あたしはもう巫女の立場に耐えられきれなくなってきていた。
巫女がする仕事はたった一つだけ。
定期的にクレートが地下室へ連れてくる信者に祝福を授けること。
ただの儀式じゃない、巫女は本当に祝福を与えることができるの。
祝福を受けた相手は生涯運気が上がり幸運に恵まれる。
ただし、巫女はその幸運に対する代償として生涯体に痛みを刻まれる。
祝福を与えるほど痛みは加算されていくの。
今はまだ頑張れる、頑張れることはわかってる。
でも、その先に何が待ってるかも知ってしまっている。
春うららかな今日の日、あたしは白金竜様に言ってしまおうか悩んでる。
言ったからとして結果が変わるものではない。
だからと言って気持ちとしてはもう限界に近いのだ。
その日は教会と白金竜の館の間で足が止まり考えに考えていた。
そして打ち明けることに決めた。
白金竜はいつもの通り「ショートケーキの後は」と言う。
あたしはしばらく黙ってから静かに「アップルティー」と言う。
そしてゆっくりと白金竜のいる部屋へと入っていった。
「何があったんだい?」と開口一番に白金竜が言った。
白金竜はうつむくあたしの姿に異様さを覚えたのだろう。
あたしは膝を落とし床に落ち「もう耐えられないの」と言った。
白金竜は長い首を落とし、地面につけて彼女の次の言葉を待った。
あたしはしばらくそのままの格好でいたが、
覚悟を感じる動きで首を上向けると白金竜に語りだした。
すべてを聞くと白金竜も少し首を傾け考えている。
だがすぐに結論が出たようであたしに語ってくれた。
「君にはイサゴという親友がいるんだろう?
解決してくれるとしたらその子しかいないよ、その子に全てを言ってご覧。
その子に大変な重荷を追わせてしまう事になるが解決方法は多分それしかない」
白金竜はそう言うと寂しそうな顔をしたようだった。
転(イサゴ視点
はっきりぃ、何もすることがないのだぁ。
私の番が来るとすぐにイサゴはどこかへ行ってしまう~。
どこへ行くかも言ってくれない~。
もう五年にもなって身近なのに疎遠になってしまった気がするぅ。
暇なのでこの広間で魔法の練習ばかりしてるのだ~。
自分の足に向けて風閉鎖をひたすら唱えていた。
最近魔力の量に自信がついてきた気がするぅ、ってそんな場合じゃないのね~。
あの子ほんと何してるんだろぅ。
とか思っていたらぁ、今日は二時間もしないで帰ってきたのだ。
そして私に向かってモジモジしてる。
何をしているのだぁと思っていたらケンジャが話しかけてきた~。
「イサゴ、大切な話があるんだよ」
そう言ったと思ったら、外出していた時のことを全部話してくれたのだ。
ルミナスの白金竜に会ったこと、過去の全てを話したこと、
白金竜の過去の話を聞いたこと、魔王ロアキンの正体。えっ?
「魔王ロアキンの正体~?」と聞き返してしまったのだぁ。
「うん、実はロアキンは魔王でもなんでもないただの魔族なんだって。
魔界からこの世界に来た魔族は負け組みばかりなんだって。
魔界だとこの世界に住む魔族は恥ずかしい存在だから、
わざわざ魔界からこの世界を攻めに来る者なんかする人はいないんだって。
ロアキンも魔界では派閥闘争で負けて逃げてきたそうよ。
そしてロアキンはこの世界に来て、
放浪中のアガタ王国第一王女アルマに出会ったの。
二人は恋をして結婚を誓いこのアガタ王国の首都ルミナスに来た。
もちろん、魔族の男を連れてきた王女に王様は怒ったわ。
でも、ロアキンが大魔法を使える魔道士と知って王様の気が変わったの。
同じレベル六の魔法を使えるルミナスの白金竜とロアキンを使いこなせば、
世界を制覇できるんじゃないかって思ったの。
それで王様は王女と結婚したいなら世界を征服してみろって。
それでロアキンがこの国を攻める姿勢を見せた時に、
白金竜様は対決しなかったのよ、出来レースだったから。
だから今の暗黒時代の本当の黒幕はこの国の国王クレーメンスなの」
それはそれでとんでもない話だったのだぁ。
今までの世界大戦の黒幕がここの王様だったなんて。
って~、流されちゃだめえぇ。
「それはすごい話なのだが~、大切な話ってなんなのだ~?」
イサゴがそう言うとケンジャは上を向いてハッと強く息を吐いた。
それから目を泳がせて大きな決断を決めかねている装いをした。
しばらく沈黙が続いたがケンジャが決心をして語った。
「巫女の話なの」
ケンジャはそう言ってから歩いて広間中央のクッションに座わり話し続けた~。
「巫女になるということはハイエルフになることなの」
ハイエルフというのはエルフの上位種で寿命に束縛されなくなった種で、
この世界広しといえども数人しかいないと言われているぅ。
ケンジャは続けて話しはじめたのだ~。
「けれども、ここルールー教で巫女になるハイエルフは普通ではないの。
はるか昔に精霊神ルールーと契約した呪いが受け継がれたものなの。
その契約内容はと言うと、当時不治の病の恋人を持ったエルフが作ったもの。
ハイエルフとなる契約の時に、
自分が思う人に幸福を与える代わりに、
自分はそれ相当の肉体の痛みを受けると契約に織り込んだの。
もちろんそのエルフの恋人は病が治ったわ、彼女の全身の痛みと引き換えに」
そこまで話すとケンジャは大きく息を吐いたぁ、辛そうな感じが見て取れる~。
「本当ならこの話はそこで終わるはずだったのだけれど、
恋人が契約内容を他人に喋ってしまったのよ。
その話を聞いたのがカルーゾー一族の者。
クレート司祭もフルネームはクレート・カルーゾーよ。
とにかくそのカルーゾー一族はその契約が金になると判断したの。
それでそのハイエルフを捕まえて拷問したの。
連れてきた奴に祝福を与えないとまた拷問するぞって脅して。
それで大金で祝福の権利を得た。
ハイエルフは理不尽な程数え切れない人数を祝福することになって、
体の痛みが限界を超えてしまって、そのハイエルフは心が壊れてしまったのよ」
そしてケンジャはもう一度ため息をつく。
壮絶な話にあっけにとられていたわたしだったがぁ
気を取り戻して質問したのだ~。
「心が壊れたら祝福もできないよね~?
あとぉ、なんで今ケンジャが巫女なの~?」
と、普通なら当然と思う質問をするのだがその答えがわたしの心を病んだのだぁ。
「恋人にバラされた契約内容はもう一つあったのよ。
ルールーが呪ったハイエルフが他のエルフに殺された場合、
その呪いは受け継がれるの。
つまり心の壊れたハイエルフは、
ルールー教に用意された他のエルフに殺されたのよ。
そうして新しい巫女の心が壊れるたびに別なエルフが代役を継いだの」
「でも、なんでエルフはハイエルフを殺すのだ~?
殺す理由がないぞ~?」
「なにも殺したいわけじゃないわ、
ナイフを手に縛り付けられて数人で体を抑えられて無理やり刺し殺すのよ」
それを聞いてケンジャも同じことをされたのだと瞬間的に気づいて、
ケンジャの心を抉る様なことを聞いてしまったと思ったのだ~。
その時のことを想像したらぁ、わたしは大きな身震いをしてしまった~。
「ケンジャもぉ、それをやらされたんだね?」
「ええ、男たちに腕を掴まれて」
「じゃぁ、この五年間ずっと祝福し続けたのかぁ?」
「やってるわ…」
そう言うと二人に長い沈黙ができた。
口を開いたのはわたしの方だった~。
「一緒に今すぐに逃げるのだ、わたしが見張りなのだから苦もないのだ~」
「継承の儀式の時に、街から出ると追跡効果が発動する魔法と、
自殺できないようにする精神魔法をかけられてるのよ、逃げるのは無理」
な、なんと用意周到な相手なのだぁ。
続けてケンジャが話した。
「ねぇ、イサゴ…」
イサゴはしばらく返事をためらうが少しだけ口を開く。
「なんだぁ?」
今まで泳いでいた二人の目が合った。
そしてまた長い沈黙がやってくるがケンジャが言う。
「彼奴等のいない時に私を殺して。そしてあなたは逃げて」
「ケンジャを殺せるのならこの話を聞いた時にもうやってるのだぁ、
そんなことできないよ~、決断できるわけないよぉ…」
「じゃ、いつか決心がついたら私を殺して。あたしはできるかぎり待ってるよ」
ケンジャはうつ向きながら続けて話したぁ。
「分かるの、今のペースで祝福していたらあたしはもうすぐ痛みで壊れる、
その祝福の痛みをもう味わいたくないの、今でも物凄く痛いんだよ…。
今はもう寝る前に精神魔法を自分にかけないと眠れないくらい痛いの…。
イサゴ、どうかお願い…」
そう言うとケンジャは力尽きクッションに横たわってしまった。
命がけの決断をした疲れなのだろ~。
わたしは毛布をかぶせケンジャを一瞥する。
ちょっと頭の中まで硬くなってきた。
そんな大きな決断できるわけないよぉ。
第一に一緒に逃げ出す作戦を考えよう、後で。今は無理だぁ。
転(ケンジャ視線2
思いを全部イサゴに話した。
これが白金竜様が示した道だったのだろう。
本音では白金竜様が直接教会を壊してくれるかと思っていた。
町を守る白金竜様が町で暴れるなんてできないんだろな…。
白金竜様は創世二年から四百年間もこの町だけを守ってきたんだもんね。
今でも大衆から恨みを買っているのに、
ここで教会を壊したら何も知らない大衆はさらに白金竜を恨むだろう。
イサゴに話せと言われた時に、自分は助からないんだと悟った。
白金竜様に一縷の望みをかけたけれど、
都合の良い答えなんてなかったんだ。
白金竜様はあたしが生き残る道は無いことを教えてくれたんだ。
うん、でもイサゴが生き残るのならそれでいい。
ちょっと怖いけれど眠るだけだよ、毎日やってるじゃん。
というか、もう眠るの辛いほどに体が痛くなってきたよ。
たとえ今すぐに開放されたとしても、もう生きていくの辛いよ。
だめだ、嫌な方に考えが行っちゃう、もう寝よう。
「……Lv2ソムナム」




