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11.僕、億万長者になる



 ーーーアランデール皇帝国、ギルドマスターの部屋


「私、忙しいんだけど。知ってるわよね?」


 今日はギルドにお客が来ている。先程から、俺に苛立ちを隠さない彼女が、客だ。


 彼女の名はアイシャ・ドーラム。この国を拠点とするS級魔法使いだ。弱冠十五歳で世界一の魔法大学を卒業した天才。そんな地位も名誉もある彼女が何故冒険者をしているのか?理由は単純で、俺に負けたから。


 昔彼女は若気の至りで俺に勝負を挑んできた。俺は負けたんだから冒険者ギルドに登録しろ、と言ったわけだ。


「知ってるっつの。用事がなきゃ呼び出さねえよ」

「じゃあ早く用件を言ったら?もう三十分も待たされてるんだけど!早くしてちょうだい!」

「待て待て!今ちょっと立て込んでてな…」


 用事があって彼女を呼び出したのだが、彼女にはそれとは別の用事を依頼することになるかもしれない。


 昨日このギルド本部に届いた緊急連絡は、「ロトラの街にワイバーンが襲撃した」というものであった。ワイバーンの気性は荒い。既に街は半壊状態なのだという。


 ワイバーンは街を破壊してから、『デリシャスアイランド』があるデリシャ方面へ飛んだという。恐らく、魔力の多い方に向かっているのだろう、デリシャは大きくはないが冒険者が至る所にいる。当然、魔法使いがたくさんいるから、魔力も多い。


 急がないとデリシャとダンジョンが危ない。


「実は、ワイバーンが出てな。既にロトラが破壊されてデリシャがやばそうなんだ。それの対応に追われててよぉ〜どうしたらいいもんか」

「ワイバーン?…フン、その程度で私を呼んだわけ?」

「別件で呼んだんだが…行ってもらうしかねえかもな」


 デリシャからの連絡はまだないが、時間の問題だろう。あそこにいる冒険者が全員で挑めば何とかなるかもしれないが。それには死者が出る可能性が高い。


 彼女はツンとしているが、ワイバーンに興味があるはずだから、きっと行ってくれるだろう。


「まぁ行ってもいいわよ?ちょっとは骨が有りそうだしね」

「そうか!行ってくれるか!じゃあ早速…」


 そうと決まれば早速手配して、デリシャに向かって貰おう。そう思って立ち上がった時だった。


 ダンダンダン、とノックの音がする。予想が的中したか!


「失礼します!先程デリシャから緊急連絡が入りました!」

「チッ、思ったより早かったな。それで、何だって?」


 ミレイナが慌てたように入ってきた。多分、俺の予想が的中したのだろう。


 彼女ことアイシャも気にしていない風だが、耳をそばだてている。


「デリシャにS級相当のワイバーンが出現。デリシャ到着前に、B級冒険者によって駆逐された…とのことです」

「何?!B級冒険者が倒しただと?誰だその冒険者は」


 B級冒険者がワイバーンを倒しただと?一体誰だ?


「ギルマス、そんなの決まってますよ。リアムさんです!」

「ああ〜アイツ、ダンジョンに行くって言ってたな。なんだ、心配して損した」


 ああ、そういえばリアムの奴がデリシャスアイランドに行くって言っていたな。まあアイツなら余裕でワイバーンくらい倒せるだろう。


 俺とミレイナは二人してうんうんと頷いて、納得したのだが。


「ま、待ちなさい!!一体全体どういうことなのか説明してよ!」

「ん?お前さん知らないか?俺に勝った新人冒険者だよ。アイツは今すぐにでもSに上がれるのに…無理矢理ランクアップさせらんねぇしよ」

「な、な、な、な!何ですって!?ギルマスに勝った?!常勝無敗のアッシュに?!」


 アイシャは驚きのあまり紅茶が溢れるのも構わずに、ダンッと目の前の机を叩いた。アイシャの鬼気迫る表情に、俺とミレイナはたじろいだ。


 ま、まずい。アイシャの戦意に火をつけたかもしれん!


「ま、まぁ俺が手加減したし…」

「あんた私の時も手加減してたじゃない!!」

「リアムさんは凄いですよ!剣だけでも強いのに、魔法も使えるしテイマーの才能もあるんだそうです!期待の新人ですよ〜」

「あっおいミレイナ…」


 ミレイナがリアムを褒めたから、アイシャがさらに過熱!これはもう手に負えないかもしれん!!


「魔法に剣にテイマーですって?…フン、生意気な新人には先輩から教育してあげなきゃね」


 アイシャはニタァと獲物を見つけた猫の様に笑い、敵意をメラメラと燃やした。それに気がつかないミレイナは、更にリアムのことを教えてしまい。


 俺は目頭を押さえて、ポツリと呟く。


「こりゃあしばらく荒れそうだ…」











 僕はデリシャのダンジョンからレイを走らせること数時間、無事に首都アランデールに到着していた。


 ただ、問題が一つ。


「ダメダメ!今日は部屋が一杯だよ!」

「うちは使い魔お断りだよ!」

「部屋は空いてるけどねぇ、猫が苦手なお客さんもいるから…」


 宿がないのだ。どうやら近々この街で祭りがある様で、観光客がたくさん訪れているらしい。そのために宿はいっぱいだし、おまけにレイがいるとなると余計に厳しいのだ。


 もうあちこちの宿に断られた。このままだと宿がないまましばらく過ごさなくてはならないかもしれない。


 はぁ、とため息をついて、僕は仕方なくゼニナール商店に向かうことにした。ロイドさんに虹色サーモンのお土産を渡すためだ。


「すみません、ロイドさんに会えますか?」

「…これはリアム様。少々お待ちください。ああ君、この方をあちらからご案内して」


 店の前にいる知らない店員に声をかけてみたが、なんと僕の名前を知っている様だった。そうしたら、あれよあれよとなんだか違う入り口に連れて行かれ、中に入れてくれた。


 中は煌びやかで、シンとしていた。居るのは数名の執事のような人達だけ。


「あ、あの…?」

「ウィリアム様、今主人が参りますので少々お待ちくださいませ」

「ええっ、あ、はい…?」


 僕はそこにあるソファーに座らされ、紅茶を飲んで待っているように指示された。レイが目敏くお茶菓子を食べ始めたが、テーブルに猫がいても執事さん達は怒ることもなく微笑むだけ。ちょっと怖い。


 一体ここはどこなのだろう?とは思ったが聞けなかった。


 しばらく待つと、ロイドさんといつもの執事さんが現れた。


「お待たせ致しました。ウィリアム様」

「ロイドさん。デリシャスアイランドに行って虹色サーモンを獲ってきました!」

「おや。これは嬉しいですね。ここで話すのもなんですから、応接室にどうぞ」


 ロイドさんは僕が虹色サーモンを持ってきたことを言うと、いつものようににっこりと微笑んだ。


 この前の応接室に通された僕は、ようやくなんとなくホッとした。先程の部屋が豪華すぎたからかもしれない。


「そうそう、リアム様が教えてくださった例の件で大きな利益が出ておりまして。まだもう少し額は増えそうですが、暫定的な金額だけお渡しします」

「ありがとうござ…えっ?えええっ??!」


 そういえば、僕はロイドさんに鉱石達を買取に出していたんだった。先に場所の情報だけ渡した分でお金をもらい、あとは利益次第だったんだよね。


 思い返す間もなく、執事さんが次々に大量のアラン札を詰めた箱を、ドンドンドン!と三箱も置いたではないか。


「リアム様のおかげでゼニナール商会に宝石専門部門ができました。改めて、お礼申し上げます」

「ひぇええ!?こ、こんなに?!」

「ええ。リアム様からいただいた分の利益の半分です。私どもは、残り半分と回収した利益で十分元がとれますので、遠慮なくどうぞ」


 アラン札は、この国の紙幣だ。銅貨、銀貨、金貨とあり、金貨十枚で1アラン札になるわけだ。恐る恐る総額を聞いたら、さらっと三億アランだと言われた。ちなみに、この国の平均的な所得は銀貨5枚から金貨1枚程度だと聞いた。


 つまり、僕は前に貰った以上に億万長者になってしまった訳である!こんなにあっても使い切れないよ!!


「あ、あの…こんなにあっても僕使い切れないですし…」

「ふふふ。あなたは本当に欲がない方だ。普通ならもっとよろこんで、今頃豪邸でも建てているでしょう」

「豪邸かぁ」


 とても嬉しい。冒険者になったとき、一度は夢を見るくらいには憧れだった億万長者になったのに。驚きはあっても、どうこうする気にもならなかった。


 それに、豪邸を建てても僕はいつかはムジナになるわけだから余計に不要だ。その日を凌げる部屋があればいい。


 ーーーあっ!そうだ!


「ロイドさん、実は僕、宿が見つからないんです。レイもいるし断られちゃって…どこか紹介していただけませんか?」

「ああ、そろそろ神誕祭ですからね。ふむ、宿を探すより家を借りた方が良いかもしれませんね。…ちょうどよかった。紹介したい物件が一つあります。そこに住んだらいかがでしょう?」

「あっそれいいですね!宿を探す手間が省けますし、レイも自由に出来ますから」

「これからその物件に行く用があります。一緒に行きましょう」


 「神誕祭」は、神がこの世界を創ったとされる日だ。この国は冒険者文化があるからか、神官を重用してきたらしい。それ故に、神官の総本山であるアランデール教会がある。そこで行われるお祭りなのだ。


 宿がないことを伝えると、ロイドさんはすぐさま僕に宿ではなく家を借りたほうがいいと言った。


 僕はなぜ宿に泊まることばかり考えていたのだろう。そうだよ、家を借りればいいんじゃないか。レイがいても問題ないし、僕も気を遣わなくて済む。この国を離れる時はかえせばいいんだもの。


 喜んで僕は、はい!と答え、異空間にお金をしまった。


 ーーー物件が普通じゃないことを、この時はまだ知るはずもなかったのである。










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