第5話
ルシフはハルディスの冒険者ギルドに行ってみた。
結局依頼もロイたちと共に受けて以来一度も受けていないので、ここには久々にきたことになる。
前回来たときは鎧が目立つガレアスと一緒だったからだったのか、ルシフ一人できた今回はそこまで注目されずにすんだ。
とりあえず入り口近くで話している冒険者の集団に聞いてみる。
「悪いが、ロイとウィルとニーナの三人を知らないか?」
まさか話しかけられると思っていなかったのかその冒険者たちは少し驚いたあと、丁寧に答えてくれた。
「…あんたがルシフか?いや別に詮索するつもりはないんだが、よく噂になってたもんでな。」
「噂だと?」
「そうだ、ロイたちとも無関係ってわけじゃねぇ。まぁ簡単にいうと、あんたと一緒に討伐依頼を受けてから、あの三人が急に強くなったって話なんだが。」
「ああ、そのことか。なに、ただ少し戦闘の手ほどきをしてやっただけだ。」
「個人的にはその内容に興味があるんだが…まぁいい。その手ほどきとやらで強くなった三人は最近じゃけっこう有名になってたんだ。今一番勢いのある冒険者だってな。」
「それで?」
「例のドラゴン騒ぎで不安の残っている街人たちは喜べるが、俺たちみたいにちょっと前まで薬草採集や小鬼退治をしていたあいつらを知ってる者のなかには、どうやって急に強くなったのか知りたがるやつも多かったからな。一時期は三人も頻繁に話を聞かれたりけっこう大変だったらしい。ま、それでもわかったのはモンスターをたくさん倒しただけだってことだったが。」
冒険者はそう言ってチラリと横目で見る。
「それでも強いやつが生まれるってのはやっぱり興奮するもんだ。一応みんなそこんとこは喜んでたんだが、そんな時にあんたの知り合いだってやつが三人に会いに来たんだ。俺からしたらなんとなく怪しいやつだったんだが、三人はそいつについてどっか行っちまった。何日も前からこの街じゃ姿を見てねえが、噂じゃあんたに呼ばれて会いに行ったって話だった。」
「なるほど。どこに行ったかわかるか?」
「すまんがそこまでは知らねえ。その様子じゃやっぱり知り合いじゃなかったか。」
「心当たりはないな。情報感謝する。」
そういってルシフは金貨を1枚手渡した。
念のために同じようにもう一組冒険者からも話を聞いたがほとんど同じ内容で、受付にも確認してみると現在依頼は受けていないということだった。
(これは、そういうことか…。)
ギルドから出ていくルシフからは怒気が漂っており、声をかけられるものは誰もいなかった。
ドアを開けたと思った時にはルシフの姿はもうどこにもなかった。
そのままケルヴィンの元に転移したルシフは、前回きたときとは違い椅子に座っていたケルヴィンに聞いた。
「今勇者がどこにいるか知りたい。【世界の記憶】とやらは全ての過去を視ることができるのだろう?」
「これは魔王様。よくぞお越しくださいました。さて…勇者ですが、昨日、この世界から消滅したようでございます。」
「…やはり、そうであったか。原因はわかるか?」
「以前にも説明したとおり、すでに詳細なできごとを把握することは私には不可能です。しかし、それほど時間が経っているわけではないので少しならなにかわかるかもしれません。少々お待ちください。」
そう言ってケルヴィンは目を閉じてしばらく黙り込むと、「愚かな…。」と呟いた。
「どうやら勇者は帝国の者に殺されたようです。場所は帝都の城の地下。成り行きはわかりませんが、おそらく勇者の力か、あるいは力の秘密を欲した者による所業でありましょう。勇者を殺してしまうなど、なんということを…。」
「ケルヴィンよ、人は愚かだと、自分で言っていたではないか。」
「はい…。この2000年、人はこんなことを繰り返し続けてきました。魔王様、改めてお願いいたします。もう一度、魔王としてこの世界に君臨してはいただけませんか?」
ルシフはその声に答えることなく、その場から転移した。




