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第2話



「儂はこの世界が創られたとき、【大賢者】として人々を導くように神々から役割を与えられ、多くのプレイヤーに知恵を授け、人の世を見守って参りました。それは2000年前プレイヤーが姿を消し、神々から与えられた役割から解放されてからも変わりませんでした。儂は人が好きなのです。…だから、儂は魔王になったのです。」


「ほう?俺には矛盾しているように思えるが?」


「2000年前、大魔王様が世界に悪名を轟かせておられたころは、ある意味で人の世界は平和だったのです。人々は協力し助け合い、一致団結して大魔王様を倒そうとしていました。ところが、2000年前神々がこの世界への干渉をやめてから大魔王様は闇の島からでてくることはなく、次第に人々は大魔王様の存在自体を忘れてしまったのです。」


「…大賢者ケルヴィンよ、おまえはこの世界の仕組みやプレイヤーが来なくなった理由を知っているのか?」


「いいえ…。かつては神々との繋がりを感じることも多く、また大賢者の固有スキル【世界の記憶(アカシックレコード)】で過去の出来事を全て視ることができるため、世界の成り立ちや仕組みについてはある程度理解していますが、神々がこの世界に干渉しなくなった理由についてはわかりません。」


「その【世界の記憶】を使って俺が来ることも視た(・・)というのか?」


「いえいえ、【世界の記憶】は過去しか視ることはできません。特に最近では世界が広がりすぎたためか、あまりに情報が多く、儂の頭ではすでにすべてを把握することはできません。しかし先日、【勇者】が世界に生まれたことはわかりました。勇者とは魔王と対になる職業。ついに大魔王様が動かれたと気づいただけでございます。」


「そうであったか。それで、なぜ魔王を名乗っていたのだ?」


「はい…。大魔王の存在を忘れた人々は、次第に人同士で争うようになったのです。民を束ね、守るべき立場であるはずの王や貴族は己の欲にはしり、力ある者が弱き者を虐げるようになりました。それは世界が広がるとさらにひどくなり、国と国との争いは絶えず、新しい国が生まれては滅んでを繰り返しています。この地にもかつては小さな国がありました。しかし隣国への侵略のための力を欲した人々は火山に住む竜たちを従えようとし、逆鱗にふれて滅びたのです。人々には人族全ての敵、魔王が必要なのです。」


「ふむ、話はわかったが、結局おまえが魔王を名乗ったところで何か変わったのか?」


「それは…儂には知識はありますが力はありませんでした。低位のモンスターならともかく、人々に危機感を与えるようなモンスターを従えることなどできなかったのです。そこで大魔王様にお願いがございます。」


「言ってみるがいい。」


「再び魔王として世界に君臨していただきたいのです。そうすれば…人々は恐怖に打ち砕かれ、手を取り合うことの大切さを思い出すことでしょう。」


「断る。今の俺に世界を滅ぼすつもりなどないが、正直人族がどうなろうが興味などない。強いて言うならば、強者が挑戦しに来るというのは多少面白そうだが。そもそも魔王の出現だけでそううまくいくとは思えん。話はそれだけか?」


「そうですか…。人は弱く愚かですが、本来はそうではないのです。光さえあれば、人の生き方は美しいものだと儂は思っています。いえ…魔王様に言うことではありませんでした。なにかあれば、またいらしてください。」


「…ああ、用があればまた来る。」


 そう言ってルシフとアルジアは部屋をでて城からでた。

 

 正直予想とはだいぶ違う相手であった。

 役割から解放されてなおも変わらずに人々を導き続ける選択をしたケルヴィン。

 ルシフは自分がこれからどうするのかを考える。


(俺のやりたいこととはなんだ?配下たちと自由に気ままに暮らすことか?それも悪くはない。だがそれだけで満足できるのか?いや、これは俺だけの話ではないのだ。)


 ルシフにとってラミリリスや竜王たちは信頼できる仲間であり、自分が守るべき者たちだ。

 神々に創られてからこれまで変わらずに付き従い、ルシフに全てを捧げてくれている。


(俺が神々から解放されたように、みなも俺から解放してやるべきなのかもしれん。)


 ルシフはそう思い、アルジアに「アルジア、もしなにかやりたいことがあったら島を出てもいいんだぞ?」と言ってみた。


「私のやりたいことは、魔王様と一緒にいることです!」


 とアルジアが即答する。


「あ!でも、たまにはおもいっきり暴れたいです!…魔王様は、もう魔王には戻らないんですか?」


 慌てて願望をつけたし、ルシフの目を見ながら尋ねてくる。


「魔王として君臨することが嫌なわけではないが、世界を滅ぼすことに興味のなくなった今となっては、今魔王として名乗りをあげて挑戦者を待つだけの生き方は、プレイヤーがいないこの世界では退屈だろう。この世界の人族はどうも弱すぎるようだ。」


「なら、鍛えたらいいんじゃないですか?」


(鍛える?俺が人族を?たしかにロイたちの成長をみるのは面白かったし、もしニーナが勇者としてレベルをあげて戦うことがあれば、楽しいだろうと思う。)


「それもいいかもしれないな。帰ったらみんなの考えも聞いてみよう。」


 そう言って帰りは転移を使い帰還したのだった。





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