第12話
「レベル…?ですか?」
困惑する三人にルシフが説明する。
「ああ、この世界の生き物の強さは“レベル”という数字でおおよそ判断することができる。その数をあげることで、基本的な能力が上昇するからだ。おそらく生まれた時が1レベルで、今の三人はたぶん10レベルとかそのあたりだろう。ここまではいいか?」
「えっと、はい。なんとなくですが…。強さを数値化する、という概念ですね。」
「そうだ。もっとも実践での強さとは、レベルだけでは測れないがな。職業や装備、魔法やスキル、特性、武器と防具、相手との相性。これら全てを考慮しなければ誰が強いかなど判断できない。だがその下地としてレベルをあげることは最重要だ。」
「つまり、僕らが強くなるために一番大事なのが“レベル”をあげるということなんですね?」
「そういうことだ。そしてレベルをあげるために最も効率のいい方法が、モンスターを倒すことだ。」
三人が「え!?」と声をあげる。
「でも、それって死ぬ可能性もあるってことですよね…?」
ロイが不安そうに聞いてくる。
ルシフが黙ってみていると意外にもおとなしいニーナが声をあげた。
「あ、あたしやりますっ!これまでだって危ない目には何度もあってきたし、今強くならなかったらきっとこれからも危険な目にあうと思う。それに、ルシフさんが言うなら、必要なことなんだと思うの。」
それを聞いたロイとウィルも、「そうだな、やってやるか。」と答える。
「まぁそう心配するな。考えならある。」
ルシフはニヤリと笑いながらそう告げた。
その日はもう遅いということで明日の朝、また大門に集合だと伝える。
三人はそのまま宿に帰って行った。ちなみに飲み食いの代金は大銀貨2枚でおつりがきた。
ルシフとガレアスは路地裏に行き玉座の間に転移する。
「おかえりなさいませ。魔王様。」
「あぁ、遅くなった。」
「先ほどカルディナが戻ったので、今夜にでも連絡に行こうかと思っておりました。」
ラミリリスが待っていてくれた。そういえばラミリリスはアウグスト王国に行ったことはないはずだが、どうやって連絡をくれるつもりだったのだろうか?一度一緒に街に転移したほうがいいかもしれない。
「そうか。ではカルディナと他の竜王も呼んでくれ。情報を整理する。」
すぐにラミリリスが全員を連れてきた。
「帰りが遅くなり申し訳ありません。魔王様。」
カルディナが謝ってくるが、確かにカルディナにしては時間がかかっていた気がする。
「よい。東に陸はあったか?」
「はい。東にも大陸がございました。もしかしたら西の大陸よりも大きいかもしれません。おそらくこの島の真北から南東にかけて広がっているようでした。岸から見た範囲では、大きな街や港、小さな村まで人の生存圏を確認いたしました。ただし、そこで暮らしていたのは獣人やエルフ、魚人など様々な亜人種の者が多いように思われました。」
「なに、亜人だと?西の大陸でも獣人やドワーフなどは時折見かけたが…もしかすると東の大陸から海を渡りやってきていたのかもしれないな。」
「それと、南の海に大陸と言っていいほどの大きな島がございました。こちらでは人族の存在は確認できませんでしたが、モンスターが数多く存在しておりました。」
「ほう。今度はモンスターの生存圏だと?本当に新たな魔王が生まれている可能性すらあるか。」
「まだ世界の全ての海を調べられたわけではないのですが、これ以上となると長期的な探索を検討せざるを得ないと判断し、いったん帰還いたしました。」
「世界はそれほどまでに広がっているのか…。状況次第では長期的な探索部隊の編成も考える必要がありそうだな。よい判断だったカルディナ。」
「ありがとうございます。」
「こちらでも多少わかったことがある。これまでのいきさつを含めて説明しよう。」
その後カルディナがいなかった前回の情報も含めて全員で話し合い、話し合いが落ち着くとルシフがまとめた。
「今のところ一番気になるのはアウグスト王国の北で名乗りをあげたという魔王だ。クロードはなにも言ってなかったから魔王という認識ではないのかもしれないが。ひとまずは北の地の魔王、その次にアウグスト王国の西にある帝国について調べようと思う。ある程度調べてみて問題なさそうであれば、新たに配下を召喚して情報収集専門の集団を組織してもいいだろう。」
「ところで魔王様。冒険者の三人に提案されたというレベルアップの件ですが、どうされるおつもりなのですか?」
話が終わったところでラミリリスがきいてきた。
「それなのだがな。我が闇の島に招待する。三人にはいろいろと実験に付き合ってもらうとしよう。」
ルシフはニヤリと笑って、準備があるからと一人転移した。移動した先は以前闇小鬼3000を召喚した荒れた平野である。
おもむろに手を前にかざして【軍勢召喚】を発動する。今回召喚するのはレベルにして30程度に調節したスケルトンの兵士たちだ。
目の前に並ぶスケルトンの数は1万。このスケルトンたちを倒させてロイたちのレベルアップを図る計画だ。
アンデットであるスケルトンならば、怪我をさせないように倒されろと命ずれば安全にレベルアップさせることができるだろう。
別にアンデットでなくとも召喚したモンスターであれば命令は聞くだろうが、痛みや感情はあるはずだ。その点アンデットならば痛覚や感情などなく、死ねと命じるルシフにとって気がらくな相手だと言える。
まぁ、強さとは数字だけの話ではない。戦闘経験を積ませるために無抵抗で倒されろと命じるつもりはルシフにはなかった。
スケルトンたちにこの場で待機を命じ、今度は玉座の間の奥にある宝物庫に転移する。
ロイたちのレベルではたとえ無抵抗であっても30レベルのモンスターを倒すことは厳しいだろう。できたとしても時間がかかりすぎる。
そこで一時的ではあるが、ある程度の武器を貸し出すことにした。
宝物庫にはルシフが倒された際に討伐者に贈られる伝説級を通り越した神話級とでも言える武具と、討伐しに来て敗れた冒険者たちの装備などが置いてあった。
ルシフの記憶ではプレイヤーが死んでも装備を落としたところなど見たことはなかったが、この宝物庫はそうあるべしと創られたのだろう。
だいたいプレイヤーであったなら40レベル程度で入手できるだろう程度の武具を三人分選ぶ。
待ち合わせの時間が近づくと、ルシフはガレアスとラミリリスを連れてアウグスト王国に転移した。ラミリリスにアウグスト王国への転移を覚えさせるためだ。ラミリリスはすぐに玉座の間に戻っていった。
あたりがやっと明るくなってきたころ、ロイたち三人がしっかり装備を整えやってきた。




