第11話
なぜか衛士長がまたもや案内をしてくれて、暗くなる前に五人は冒険者ギルドにたどり着いた。
衛士長はギルドに入ると受付の女性に「ギルド長を頼む。」と声をかけると、カウンターの奥にある階段に五人を案内した。
二階にあがり、一番手前の部屋に全員が入ると椅子に座るようにうながす。どうやらこの部屋は来賓室のようで、派手さはないがしっかりとした家具が並んでいた。
しばらくすると扉を開けてギルド長と女性の職員らしき人が部屋に入ってきた。
「お待たせした。順調に依頼を達成したようですね。」
「はい、これがバジリスク討伐の証明です。」
ギルド長の問いかけにロイが答え、ウィルが布の上にバジリスクの眼球を並べた。
それをギルド長の後ろにいた女性が確認すると、「たしかにバジリスク10匹の討伐を確認しました。」と言った。
「他に素材などあれば今まとめて預かるがどうする?」
「あ、じゃあお願いします。」
それにもロイがそう答えると、眼球を確認した女性が布にバジリスクの眼球を包み一度部屋から出たかと思うと、すぐに木箱をのせた台車をおして戻ってきた。
ロイたちも慣れているのか、三人でわけて持っていた素材や討伐証明のモンスターの一部などを背嚢からどんどん取り出していく。
最終的に取り出した量をみて若干ギルド長が不審がるような目つきをしたが、これで全部か確認すると女性が台車を押して部屋から出て行く。たしかに背嚢の大きさから考えると少し多すぎる量だ。こんな目の前で取り出すことになると思ってなかったので失敗したかもしれない。
ちなみに隠れ兎の毛皮を見た女性が「珍しいですね。」と声をあげていた。
「帰る前には査定して代金をお支払いできると思います。」と言い残して女性が出て行った後、ギルド長が口を開いた。
「ずいぶん多くのモンスターを狩ってきたようですね。さて、バジリスクの牙など通さなさそうな装備をされていたので心配はしていませんでしたが、これで冒険者ギルドとして晴れてCランク冒険者としてお二人を登録することができます。」
ギルド長がそういうと、先ほどとは違う女性が部屋に入ってきた。
「こちらがルシフさんとガレアスさんの冒険者証になります。カード自体にCランク冒険者として名前を登録してありますので、どこの冒険者ギルドに行ってもそのカードを提示していただければCランク冒険者だと証明できます。」
その女性が渡してくる名前と名前の横に大きくCと書かれた金属製のカードを指してギルド長が説明してくれる。
続けて説明してくれる話をまとめると、冒険者ギルドとはどこの国や都市に属さない組織であり、この冒険者カードは全世界共通で身分証明書として使うことができるようだ。
特にAランクやSランクの冒険者となると、信頼度も跳ね上がりたいていの国では優遇措置がとられているらしい。
また冒険者ギルドではランクに応じてモンスターなどの情報の開示を行っているそうだ。
冒険者のランクを上げるためには、一定数の指定のランクの依頼を達成するか、災害時などに十分な働きがあった際に冒険者ギルドから打診があるそうだ。
「だいたいわかった。それで、ここまでしてくれたからには何か見返りを払ったほうがいいのか?」
今のところCランク冒険者に登録してもらったというだけだが、国全体がざわついている中で衛士長と冒険者ギルド長というそれなりの重役である二人が時間を使ってくれたのだ。何が目的なのだとルシフは聞いた。
「いやいや、特になにもありませんよ。強いて言えば、この街にいる間にドラゴンが来た場合、一緒に戦ってほしいというくらいですね。」
何もないという衛士長だが、普通はドラゴンと戦ってほしいというのは死んでくれというのと同義だ。ある意味これほど高くつく見返りはないだろうと思いもするが。
「いいだろう。この街にいる間ということであれば、もしドラゴンが来た場合俺たちが対処しよう。」
あまりにも軽く返事をするルシフをギルド長と衛士長は少し驚いたように見た後、「よろしくお願いします。」と礼を言った。
「最後に、これがバジリスク討伐の報酬金です。素材の代金は一階の受付で受け取ってください。それでは私はこれで失礼します。」
そう言って金貨三枚をルシフに渡すとギルド長は部屋から出て行った。
「私も失礼します。何かあればまたいつでも声をかけてくださいね。」
衛士長もそう言って続いて部屋を出ていく。
「とりあえず素材の代金とやらも受け取って、どこか落ち着いた場所で話すとしよう。」
ルシフはそうみんなに声をかけぞろぞろと部屋をでる。一階に降りるとロイが素早く受付で素材の代金を受け取ってきた。大銀貨8枚だったようだ。
そのあと冒険者ギルドを出ると、ロイたちのお気に入りの店があると言うのでそこで晩御飯を食べながら話すことになった。
三人に案内されたのは大通りから一本裏に入ったところにあった“しろぶた亭”という酒場だった。テーブルとテーブルの間に簡単な仕切りがあり、個室ほどではないが冒険者のパーティーでの会話にはちょうどいいらしい。
店に入るとロイ達よりも少し年上くらいの女性に案内され、空いていた一番奥のテーブルに連れていかれる。
「なにか食べますか?」
「いや…まかせる。」
ロイに聞かれて一瞬断りかけたが、つい好奇心に負け何か頼んでくれと答える。
三人はメニューを把握しているのか、案内してくれた女性を呼び飲み物と食べ物をいくつか注文した。
女性は注文を受けるとすぐに奥に消えたかと思うとすぐに木のコップに入ったビールを五つもってきた。
「それじゃあ、ルシフさんとガレアスさんのCランク登録を祝して」「「「かんぱーい!」」」
と声を合わせる三人。ルシフとガレアスも三人とコップを合わせる。
初めて飲むビールは、口の中で弾けるような感じがして、これはちょっと苦手かもしれないとルシフは思う。
「まずは報酬の分配ですね。討伐報酬が金貨3枚、その他で大銀貨8枚でした。本来なら等分するところなのですが、今回僕らはほとんど何もしていないので、討伐報酬は全部ルシフさんたちにもらってほしいと思ってます。」
正直金貨3枚にどのくらいの価値があるのかいまいちわからないルシフだが、どちらにしても総取りするつもりはなかった。
「それはダメだ。俺たちは俺たちでメリットはあった。報酬は全て等分で頼む。」
「…わかりました。それじゃあお二人が金貨1枚と大銀貨7枚。僕らが残りの金貨2枚と銀貨1枚でどうでしょう。」
「俺たちが少し多いようだが?」
「それなんですが、ここの支払いをお願いできますか?」
「そういうことならそれで構わない。」
「じゃぁこれで決まりですね!」
そう言ってロイが金貨1枚と大銀貨7枚を渡してきた。
ルシフがアイテムボックスにそれをしまっていると、さきほどの女性が料理を運んできた。
「ここの料理は安いのにおいしいんです!食べてみてください!」
そう言いながらニーナがルシフとガレアスの前に白い粒がたくさん入ったお椀を置いた。
「その白ご飯と、この店特性のタレで味付けしてほどよく焼き上げたここら辺でしかとれない森茶猪の肉をいっしょに食べると最高なんです!」
ウィルがそういうと、お椀の白い粒の上に肉を一切れのせ、それから肉で白い粒を少しくるむとそのまま口に放り込んだ。
ルシフも真似して食べてみると、白い粒のほどよい甘さと肉の塩辛さが絶妙で、組み合わせも大事なんだなとぼんやり考える。
「お二人はこれからどうするんですか?」
料理をつまみながらウィルが聞いてきた。
「状況によるが、今のところしばらくはこの街を拠点に周辺の情報を集めたいと思っている。」
「そうですか、ギルドの依頼はもう受けられないんですか?」
「いや、所持金も少ない。できればランクもあげたいし、暇をみて受けるつもりだ。」
「あ、あのっ!あたし、また一緒にパーティーを組みたいです!」
顔を赤くしながらいうニーナに、「迷惑じゃなかったらぜひお願いします。」とロイも追従してくる。
「まだわからないことも多い。依頼を受ける時はまた頼むとしよう。」
「あ、ありがとうございます!」
みんな嬉しそうだ。
「ああ、そういえばちょっとした提案があるのだが。」
「提案ですか?なんでしょう?」
「三人とも、レベルを上げる気はないか?」




