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第9話



 なんとなく星を眺めていたらいつの間にか辺りが明るくなり星が見えなくなってきた。と言っても感覚強化で視力も強化されているルシフには十分はっきり見えるのだが。


「おはようございます。ルシフさん。ガレアスさん。」


 そう言って起きてきた三人の髪は若干寝ぐせがついている。


「あぁ、よく眠れたか?」


「はい、野宿でこんなにぐっすり寝たのは初めてかもしれません。」


そう言って笑う三人は畳んだ毛布をしまおうと一瞬背嚢を探すように視線を彷徨わせたが、すぐにアイテムボックスのことを思い出したのか、ちょっと得意げな顔をしながら毛布を手で持って消していた。


「準備ができたようならさっそく出発しようか。」


「はい、わかりました!」


 昨日でだいたい五人での行動にも慣れてきて、昼前には目的地の近辺まで来られたらしい。


「このあたりだと思うんですけど…。」


そういうロイの言葉に、警戒しながら歩を進める。

 確かに少し前から獣ではなく蛇型のモンスターが姿を見せるようになった。もういつバジリスクが出てもおかしくないという。

 バジリスクと言えどここに出るのは下位のモンスターのため、見られただけで石化したりするようなことはないらしい。ただし噛まれるとそこから石化が始まり、最終的には体全体まで広がって死に至るようだ。


 先ほどから襲ってくるのは全長1~2メートルほどの噛みつきにマヒの効果をもつ黄色い痺れ蛇や、毒を持っている紫色の毒蛇だ。どちらも状態異常無効の特性を持つルシフにはただの蛇でしかなく、全て一刀両断していた。


 もう少し進むと、4~5メートルほどの岩色をした蛇が現れた。


「あ!あれがバジリスクです!」


 やっと本命が出てきたようだ。

 先ほどの蛇たちより少し大きいだけで、ルシフのやることは変わらない。ルシフがあまりにも簡単に倒してしまうのでロイたち三人はあまり緊張していないが、なるほど三人だけならたしかに厳しかっただろう。

 ニーナの回復魔法では弱い麻痺や毒は治せても石化は治せない。


 それからは遭遇頻度もあがり、まだ日の高いうちに依頼分の10匹を討伐し終わった。

この蛇は倒すとしばらくすると石化してしまうようで、討伐証明のために完全に石化する前に両目を回収していた。


「なんかあっと言う間でしたね。僕たちはなにもしてないのに、いいんでしょうか。」


「あぁ、俺たち二人だったら討伐証明の仕方すらわからなかったのだ、こっちはこっちで助かっている。気にするな。」


「そうですか…。帰ったら報酬はきっちり分けましょう。」


 ロイと話しながら街に帰るために来た道を戻り始めると、変わった気配の者が近づいてきていた。


「帰るのはまだ早そうだ。ガレアス。」


 そういうと「はっ!」と言いながらルシフの少し前に出る。


「お前たちは俺の後ろにいろ。」


 先ほどまでとは少し気をはった雰囲気に、ロイたち三人は黙ってルシフのそばに移動する。

 すると、ルシフの視線の先から一人の男が現れた。


「嫌な気配がすると思って出向いてみれば、この地へ何しに来た?」


 黒いぴっちりとしたシャツの上から茶色いマントをかぶり、腰には袴のようなものを履いた細身で長身の男はルシフたちにそう問いかけてきた。


「なに、増えた蛇を少し間引いていただけだ。すぐに帰るさ。」


 男はそう答えたルシフをじろりと見ると、ガレアスに視線を移しすこし沈黙してから再び口を開いた。


「先日トカゲが空を飛んでいたようだが、お前のことか?」


 アルジアのことを言われたのだろうが、ガレアスは表情を変えずに答える。


「いえ、それは私のことではありません。それで、あなたはどちら様なのでしょうか?」


「…我は森の奥にあるダンジョン、ナローピットの主クロードである。とても無関係とは思えぬぞ。」


 まさかとは思ったがこんなところでダンジョンボスに会えるとは!これはまたとないチャンスだと思いルシフは口を開く。


「無関係とは言わぬが、今のところ特に何かをするつもりはない。それよりクロードよ、同じボスとしていくつか聞きたいことがある。」


「同じボス、だと?」


 クロードも気になったのか、ボスという言葉に反応した。


「あぁ、一つは2000前に何があったか知っていれば教えてほしい。」


「…なるほど。嘘は言っていないようだが、それについては我もわからん。気づいた時にはダンジョンから出られるようになっていて自由を得られたということくらいだ。」


「そうか。では、魔王について何かしっているか?」


「それは闇の島の魔王のことか?この2000年話を聞いたことがない。我としては2000年前魔王が倒されたことで世界が変わったのかと考えている。」


「ククッ、それはおもしろいな!それとあと一つ、ダンジョンのボスは消滅しても再びこの世界に復活するのかわかるか?」


 そう言った瞬間にクロードから殺気がもれた。


「それは死んでみればわかるのではないか?」


 クロードの足が伸びたように動いたかと思うとそこから伸びていたのは蛇の体であった。顔は口が裂けるように伸び、そこにいたのは蛇の王、キングバジリスクだ。全長は30メートルほどあるだろうか、首のあたりは刺々しい鱗に覆われており口からは収まりきらない二本の牙がのぞいている。

視線を向けられる瞬間にルシフはマントの影にロイ達三人を隠した。

その瞬間バジリスクの尾がルシフめがけて動いたが、ガレアスが間に入り大盾でその一撃を受けた。


 強烈な一撃だったにも関わらずガレアスの足は地面に少しめり込んでいるが、一歩も動いていなかった。ルシフの周りの地面や木はいつの間にか石化しており、マントの影にいなければロイ達も今頃石像になっていただろう。


「…石化も効かず、その防御力。白銀の鱗…まさか…」


「お前が死んでみればいいのではないか?」


 驚いたようなクロードに、ガレアスが冷たく言い放つ。


「…ボスは倒されても時間が経つとダンジョンの魔力によって復活する。我らが戦っても無意味であろう。ここから立ち去るならば我も引こう。」


「別に俺は戦っても構わないが…まぁ今日の目的はそうではない。また会う日を楽しみにしているぞ。」


 ルシフがニヤリと笑ってそういうと、クロードはじろりと睨み、来た森の中に石の道を残しながら消えていった。




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