コント「ボタンのせい」
高橋:よし、今日も一日頑張るぞーっ。
屈伸でもして体を柔らかく柔らかく……(パツン)……! またズボンのボタンが取れちゃった!
えぇー、もうこれから頑張ろうと思っていたのに……今日は仮病だ、会社休もう。
(ぼわぼわぼわ~ん)
妖精:やぁ。
高橋:ボタンの小さな穴から何か出てきた!
妖精:オイラはボタンの妖精だよ。
高橋:そ、そんな! ランプの精的に!
でも僕はボタンをこすってはいない!
妖精:ううん、オイラはボタンを一万回弾き飛ばすと出てくるんだよ。
高橋:僕ってそんなにボタン取れていたんだ!
妖精:君の統計折れ線グラフを見てみると、こんな感じ。
高橋:あぁっ! 二歳頃にすげぇ取れている!
妖精:だからほぼ両親のミスさ。
高橋:いやでも一人暮らし始めてから百回は優に飛ばしているし……。
妖精:まあそんなことは置いといて。
(ぐしゃぐしゃぐしゃ)
高橋:あぁっ! ぐしゃぐしゃにしないで!
ボタンのグラフとはいえ、自分のグラフをぐしゃられると何か嫌だ!
妖精:じゃあ買い取り。
高橋:いや、もうぐしゃられたから今さら買わないよ……。
妖精:十円でいいから!
高橋:急におっきな声出した!
妖精:十円でもいいから欲しい!
高橋:妖精が人間界の通貨でいいのかい?
妖精:人間界の通貨コレクターに売ると、えげつないことになるよ。
高橋:そんな言い回しを使っちゃうほど稼げるのか!
妖精:地球で言うとこの、小国の経済を破綻出来る。
高橋:地球でそんな言い回しなかなかしないが、それはすごい!
じゃあ十円あげるよ。
妖精:わーい!
高橋:……ところで何しに来たんだい。
妖精:それじゃそろそろおいとまさせて頂きます。
高橋:古風か。
いや何かランプの精的に願いを叶えてくれるんじゃないの?
妖精:そうそう。
高橋:忘れていたのか。
妖精:絶対取れないボタンを付けてあげるよ。
高橋:……それだけ?
妖精:いや! 十分だと思うよオイラは!
高橋:いや僕さ、ボタンが取れた時の音、結構好きなんだよね。
妖精:そ、そんな好みが存在していたなんて……。
高橋:後、こじつけってわけじゃないけど、
ボタン取れたらやる気失せるから会社休める的な気持ちでいるし。
妖精:こじつけだよ! そんなことで会社休んだらダメだよ!
高橋:いやちゃんと会社には「風邪です」って報告するよ。
妖精:そういうことを言っているんじゃないよ!
ボタン取れたら休むやる気がガンガン沸いているじゃん!
高橋:まあとにかく。
妖精:……。
高橋:却下で。
妖精:却下って言われた! 何で上から目線なんだ!
高橋:他に取れやすいボタンとか、いろいろあるんじゃないか。
妖精:何なんだコイツ……。
高橋:あっ、十円返して。
妖精:あぁっ!
高橋:ほら、何か、会社に嫌がらせして一時休業させることが出来るアイテムとか。
妖精:そんなアイテムないし、君の勤めている会社が潰れちゃうでしょ!
高橋:何かないの?
妖精:……あのね、取れないボタンは一つのズボンにしか付けないんだ。
だからいつもは他のズボンを履いているといいじゃないか。
どうしてもボタンが取れて欲しくない時とかあるじゃない。
高橋:いやない!
妖精:いやあるでしょ! 他の会社に営業行くときとか!
高橋:いやむしろわざとボタンを飛ばして、雰囲気を和やかにするよ。
妖精:何そのボタン飛ばし処世術! じゃあもういいよ!
高橋:いや、やっぱり、十円あげるから付けて欲しいな。
妖精:急にどうしたんだい?
高橋:お得意様にボタンがよく取れて困っている人がいるから、その人にプレゼントする。
妖精:何だか君がリストラされない理由を垣間見たよ!