3ー転生
俺は死んだ。スケルトンとしてのその生を終えたのだ。いや、終えたはずだ。
だが未だに俺は意識がある。そして身体も動く。ここはどこなのだろう。あまりに眩しく、何も見えない。見渡してみるが見えるのはただただ眩しい光だけ。
「お目覚めになりましたか?」
頭の中に声が響く。外から聞こえているのかもしれない。不思議な感覚でよくわからない。もしかしたら何も聞こえていないのかもしれない。
「あなたは以前の世界で冒険者ホルの剣によって亡くなられました。覚えていますか?」
冒険者ホル...?以前の世界...?亡くなった...?聞き慣れない言葉が頭の中に入ってくる。冒険者とは一体なんなのだろう。亡くなったということは...俺はやっぱり死んだのか。やはりあの人間...ホルというのか。人間に殺されたのだな。短いスケルトン生だった。まだ何もしてない気がしてならない。残念だ。
「思い出したようですね。私はあなたの以前いた世界を統べる者です。そして、あなたを責任をもって次の世界へと送ります」
送りますって...。蘇るってことだろうか。正直なところ、生き返ることにあまり喜びを持てない。俺はただダンジョンを守るだけの骨だった。再び同じようなスケルトンとしてダンジョンに縛られるのは苦痛だと思えてきている。これも死んだ影響だろうか。守っていた頃はあれ程必死だった気持ちが全くない。どうして俺はダンジョンなんか守っていたのだろう。もっと多くのことが出来たんじゃないだろうか。不思議でならない。
「あなたの死によってあのダンジョンはバランスを崩し、あなたの死後、あの冒険者たちによって踏破されました。あなたは十分な程、あのダンジョンに貢献したのです。私はその行為を評価し、次の世界でのあなたを人間へと転生させたいと思います」
俺の死によってって...。そんなにご大層なことはしてないはずだ。ただただ毎日侵入してくる人間と戦っていただけ...。虚しい日々だ。いや、え、人間?人間に転生?転生ってなんだ?生まれ変わるってことか。人間に?スケルトンが?え、スケルトンが?人間になるの?ごめんなさい、ちょっとよくわからないんですが。もう一度説明の方を...。
「行きなさい、私はメルク。生を司る神メルクです。次の世界でのあなたの健全なる人生を祈ります」
「まっ、まて!まだ聞きたいことが!」
動こうとしても動けないことに気づいたその瞬間、俺の意識はもう途切れていた。