表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

東雲曙⑤

テスト期間が終わらない。


ヤバいしにそう。

《side:東雲曙》




《……む、何でしょう。主へ不埒な視線を送る者の気配がします》


「戦闘中になにを言っているんだお前は。ほら、集中しろ」


《申し訳ございません》



 いきなり変なことを言い始めた相棒に注意をしつつ、視線は未だもうもうと蔓延している埃の向こうから外さない。結構な数の[ライトバレット]を打ち込んだはずだが……やったか?


 と、内心で盛大にフラグを立てて見れば、案の定だった。



「グガァアアアアアアアアアアッ!! ユルサナィイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!」



 わぁ、すっごいお怒りだぁ。


 怒り心頭! ということが分かりやすすぎるくらい怒った様子のグズールが、阿保みたいな音量で叫びながら戻って来た。思わず顔をしかめてしまうほどにデカい声で、立ち込めていた埃も吹き飛ばされる。


 そして、グズールの姿が完全に見えるようになったのだが……なんつーか、ボロボロだな。あちこちから血がにじみ出てるし、打撲痕がいたるところに。モーニングスターを握っていない方の腕はあらぬ方向に曲がっていた。


 ま、あれだけしこたま打ち込んでやればそうなるよなー。


 

「ゴロズゥウウウウウウウウウウウウウウウッ!! ゴロジデヤルゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!」



 物騒なことを言いながらモーニングスターをぶんぶん振り回すグズール。だが、脚がおぼつかないのか、こちらに近づいてくる速度は亀のように遅い。


 スキルでグズールのステータスを除いてみれば、『状態:満身創痍、HP200/3000』となっていた。残りHPは十分の一以下。ポケ〇ンだったら「ぴこん、ぴこん」と音が鳴っているはずだ。


 ……これ以上苦しめるのも可哀想だな。ここは、一思いにやってしまおう。


 怒りで周りが見えてないグズールへと、ヴァイスシュテルンの杖先を向ける。



「[バインドロック]」


《座標確定。[バインドロック]、発動》


「グガァ!? ナ、ナンダコレ!? ト、トレナイ!!?」



 俺の言葉と共に、魔法が発動。暴れていたグズールの両腕と両足を、光るリングのようなモノが捕らえる。突然現れ、己の動きを妨害するそれに、グズールは大層驚いていた。


 そして、それを外そうとするが……そう簡単に外れるほど軟に出来てないんだ、それ。


 俺の使用した魔法、[バインドロック]は、任意の座標に魔力の拘束具を作り出す。


 座標の細かな指定はヴァイスシュテルンがやってくれるので、何にもないところを拘束……なんて、間抜けな結果になることもない。


 俺は、拘束を解こうともがくグズールを見据えながら、ヴァイスシュテルンに思念で指示を送る。



「さて、グズール……お前は、ここまでだ」


形態変化(モードチェンジ)砲撃型(タイプ:カノン)



 その宣言と共に、ヴァイスシュテルンの杖先にはめ込まれた宝玉が輝きを放ち、その光が杖全体を覆い隠した。


 光そのものが杖の形をとっているかのようなその輝きは、変化する。魔法の杖から、敵を撃ち砕く砲へと。


 光は俺の腕にまとわりついていく。左腕の前腕部を包み込み、前方に延長した。


 そして光が晴れると……白銀と黒に輝く砲身が表れた。


 一見すると、ひし形の片方を伸ばしたような形をした盾のようにも見える。だが、鋭く尖った先端には発射口と思われるモノが確認できた。十字架の意匠と、その中央部の蒼き宝玉は、中心あたりに埋め込まれていた。


 左手の指先には、引き金。これを引けば、即座にこの砲は己の役目を全うするだろう。


 杖形態よりも機械感が増したヴァイスシュテルン・タイプ:カノン。魔法による砲撃に特化したこの形態で放つ攻撃は、先ほどまでとは次元の違う威力を持つ。……という設定だ。


 実際のところは分からない。使うのはこれが初めてなのだから当たり前だ。とりあえず、これが俺の考えている通りの性能を持っていることは『把握』してあるが……不安はぬぐえない。


 なんせ、俺の相棒たるヴァイスシュテルンは、俺の妄想が具現化した武器だからな!


 『神ガチャ』で手に入れたアイテム……『キャラメイクセット・神級』によって、俺の初期ステータス、初期職業、初期スキル、初期武器はすべてが俺が思い描いていた妄想をそのまま反映したモノになっている。


 ヴァイスシュテルンに加え、この黒い戦装束も俺の放つ魔法も。全て俺の妄想である。妄想ですら現実にしてしまうとは……やはり神とは恐ろしい。


 日々積み重ねていた黒歴史(ブラックヒストリー)。それがこんな形で役に立つとは夢にも思っていなかった。


 そして、その妄想の産物が……これだ。




============================


【名前】:東雲曙 

【性別】:男

【年齢】:16

【状態】:正常

【Lv】1

【JOB】:『魔導戦技師』

【HP】250/250

【MP】3100/3100

【筋力】25

【耐久】25

【敏捷】30

【知力】310

【精神】310 

【器用】100

【スキル】:《魔導戦技Lv3》《魔導砲Lv1》《超人体質(カリスマ)》《万象把握》《魔法強化Lv1》《魔力消費軽減Lv1》

【称号】:《始まりのプレイヤー》

【装備】:魔導杖『純白の光星(ヴァイスシュテルン)』、戦闘衣『夜闇を纏うもの(ナハトリステム)

【ポイント】:100

【ポイント利用】

【特殊】:


============================




 流石、神ガチャといったところか。見事なチートキャラが出来上がってしまった。


 俺が『キャラメイクセット・神級』によって作り上げたのは、魔法戦闘型の『魔導戦技師』。


 近接戦闘の能力はほとんどないが、射撃や砲撃……特に、砲撃に高い適正を持つキャラになっている。射撃や拘束で敵の動きを制限し、《魔導砲》の高火力の一撃で勝負を決める……そんな感じの戦い方をする予定だ。用はロマン砲だな。


 やっぱり、男なら波〇砲やかめ〇め波に一度は憧れるもんだ。極太のビームとか存在そのものがロマンの塊だし。異論は認めん。



「撃つぞ、ヴァイスシュテルン」


《了解しました、我が主》



 変形したヴァイスシュテルンを、拘束され動けなくなっているグズールへ向ける。今から放つのは、俺の使える最強(現時点で)の魔法。

 

 俺の合図で、ヴァイスシュテルンの砲門に魔力が集まる。純白の光がヴァイスシュテルンへ吸い込まれるように集束。集められ圧縮された魔力の圧が高まっていく。


 グズールも異変に気付いたのか、さっきよりも必死な顔で拘束を解こうと我武者羅に暴れ出した。ん? なんかオーラみたいなもんを纏い始めたな。あれは……スキル《暴走》か。理性と引き換えにステータスを上昇させるという、いかにもヤバ気な効果を持つスキルだ。


 オーラを纏ったグズールは、先程までとは比べ物にならないような力で、[バインドロック]を解こうとする。理性に引き換えに手に入れた力は想像以上に強く、グズールの手足を縛る光の輪にピシリ……! と罅が入った。



「グゥゥ……! グガァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」



 グズールが、叫ぶ。それは、必死で懸命で……生へしがみつこうとするものの、命の咆哮だった。


 ……まったく、ゲームのモンスターとは思えないリアルさだ。思わず殺すのをためらってしまいそうなくらい、な。


 だからこそ、俺はここでためらってはならないのだ。これは戦いであり、戦いとは『命のやり取り』に他ならないのだから。



「……死にたくないか、グズール」


「ガァアアアアアアアアッ!! アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


「ははっ、そうだろうな。……けど、俺も死にたくないんだ。だから……」


「グアァアアアアアアアアアッ!! ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」




「お前を、殺す」


《[ホワイトストライク]、発射(ファイア)



 せめて、苦しまずに逝け。


 そう願いながら、俺は引き金を引いた。そして――――




 ズガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!




 響く、轟音。音の爆撃とでも称したくなるほどの大音響は、大気を全て吹き飛ばすほどの衝撃をあたりにまき散らす。


 ヴァイスシュテルンの砲門より放たれたのは、白き極光。


 グズールの巨体をやすやすと飲み込んだ魔力の奔流は、そこで止まることなく、まっすぐ突き進んでいく。


 そして、ズガァンッ!! と何かが崩れ去る音がして、砲撃は止んだ。



 

 ―――――――レベルが上がりました。

 ―――――――レベルが上がりました。

 ―――――――レベルが上がりました。

 ―――――――レベルが上がりました。

 ―――――――レベルが上がりました。

 ―――――――レベルが上がりました。

 ―――――――条件の達成を確認。称号《一方的な戦い(ワンサイドゲーム)》を入手しました。

 ―――――――条件の達成を確認。称号《巨敵殺し(ジャイアントキリング)》を入手しました。

 ―――――――ネームドモンスター:グズールの討伐を確認。報酬が送られます。

 ―――――――条件の達成を確認。称号《要人(メインキャスト)》を入手しました。




 頭の中でなり続ける無機質な声が、俺に戦闘の終わりを教えてくれた。こういうところはゲームなんだなーとか思いながら、タイプ:カノン状態のヴァイスシュテルンを杖に戻す。



「……終わったか」


《ええ、我が主。完全勝利です》



 どこか弾んだ声で言うヴァイスシュテルンに苦笑し、俺は視線を砲撃魔法[ホワイトストライク]が撃ち抜いた地点に向ける。


 そこには、何も無かった。グズールも、わずかに残っていた教室の壁も。その向こうの、校舎の外壁も。


 大穴が空き、そこから外の景色が一望できた。自分で使っておいてなんだが、おっそろしい威力だ。


 大穴の淵まで移動し、そこから外を眺めてみる。窓から見える校舎の中にも、魔物の姿は確認できるし、外にはそれ以上の数が闊歩している。ところどころに見える赤いモノや、壊れてしまったモノなどは、一旦見ないフリだ。


 とても、『変わった世界』がよく分かる光景だった。この世界の残酷さが、ありありと見て取れる。


 その光景に僅かな高揚を覚える心を「自重しろ」と叱りつけ、俺はゆっくりと背後を振り返った。


 半分くらい滅茶苦茶になった教室で、身を寄せ合うクラスメイト共の姿が、視界に映る。



 さて……こいつら、どうしたもんかね?

なんとか十話くらいまでは毎日更新したいなー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ