プロローグ
ストレス発散のために書いた作品です。後先とかなんにも考えてないです。キャラも数人しか考えていないです。ただ主人公の設定だけは頭の中で固まっています。
……どうしよう。
《side:???》
それは、あまりにも唐突に訪れた。
『ハロー日本人! ご機嫌いかがかな!!』
地球という星の、極東の島国。日本の上空に、そんな声が響き渡ったのは、ある日の正午だった。
学校で授業を受けていた学生が、外回りに出ていた営業マンが、家で家事をしていた主婦が。
日本にいた全ての人に、その声は強制的に届けられた。
『あっはっはッ! 驚いた? ねぇ、驚いたぁ!? いきなりごめんねッ!』
耳に侵入し、脳味噌に届くその声は、少年のようにも少女のようにも聞こえる。酷く幼いようにも聞こえるし、今にも死にそうなほどに老いた声にも聞こえる。
とらえどころのないその声がハイテンションでまくしたてる。酷く不愉快で気持ちが悪い。声を聞いた者は皆そろってそう顔をしかめた。
『まぁ、前置きはこのくらいにして、本題に入りたいと思いますッ! ――――――――ファンタジーにようこそ! クソジャップ共ッ!! 君たちは、この僕主催のゲームに、プレイヤーとして参加してもらいま~~~すっ!! 嬉しい? 嬉しくて嬉しくて泣いちゃいそうカナァ??』
声の主は、聞き手の反応など知らないとばかりに、不愉快な声で意味不明なことをまくしたてる。
『ではさっそくぅ! 君たちが参加するゲーム……「終わりなき終焉」について説明させてもらうぜ! ゲームのジャンルはリアルロールプレイングサバイバルゲームッ! 舞台はこの日本ッ! 神の悪戯によって魔物が闊歩することになった世界で、人々どうしていくのかッ! 魔物を倒してレベルアップ! 魔物を倒した時にゲットできるポイントでアイテムを手に入れろ! この残酷の世界を生き残るために強くなれッ!! 目指すは夢の「レベル99」ッ!!!』
声の主の言っていることを、人々は理解できていなかった。空からいきなり声が聞こえてくるという現実離れした現象に対する混乱が、いまだに治っていないのと、声の主の発言が突拍子が無さすぎるものだったからだ。
大半の人物は、『このたちの悪い悪戯は何なのだ』と現実逃避気味に考えていると、声の主はさらに続ける。
『あれあれ~? なーんか君たち、僕が嘘言ってるって思ってない? 思ってるよね? も~! 失礼しちゃうなァ!! ……まっ、ゲームが始まったらそんなことも言ってられなくなるんだろうケド。せいぜい今のうちにたぁっぷり油断して、ゲームが始まったら面白おかしく無様な姿を僕に見せてよ!! あははッ!』
ケラケラと笑う声の主。
現実逃避気味に、『この空耳が早く終わってくれないか』と思っている者たちは、もう声の主の話を聞こうとはしていなかった。ただ、耳をふさいでも聞こえてくる声にイライラするばかり。
そんな彼らの態度などまるで気にせずに、声の主は実に楽しそうに告げる。
『さぁ! 説明はこれで終わりだよ! 哀れにも僕たちの楽しみに巻き込まれてしまった日本人の皆さんッ! ざまあみろッ!! これから始まる無慈悲で理不尽な現実を、せいぜい謳歌してくれよなっ!! 楽しみに待ってるからっ!! 一応、ゲームのクリア目標である「レベル99」を達成した人には、「何でも好きな願いを一つ叶える」っていうご褒美があるから、頑張ってねーー! …………あっ、ゲームが始まったら、「ステータスオープン」って叫ぶんだよ? 分かった? よぉし! 今度こそじゃあね!!』
それが、声の主の最後の言葉。
そして、この声を聞いていた者たちの日常が終了した合図だった。
――――――――『終わりなき終焉』、起動します。
声の主が話し終わってから、約十秒後。
機械チックな音声にて、ゲームの開始が告げられた。
それと同時に、日本中にファンタジー小説やゲームに出てくるような怪物――――――魔物が現れ、人々に襲い掛かった。
ゴブリン、オーク、オーガ、ガーゴイル、リザードマン、ヘルハウンド、ミノタウロス、ドラゴン。
そんな、幻想の中にしか存在しないはずの怪物たちが、実体を伴って出現し、破壊と死をまき散らし始める。
暴れる魔物によって、阿鼻叫喚の地獄が生み出される。人々は殺されて壊されて犯されて侵されて冒されて、抵抗もできずに地獄を彩る赤いデコレーションと化した。
警察? 自衛隊? 残念ながら、彼らには期待することが出来ない。なぜなら、彼らもまた、魔物によって殺される側でしかないのだから。国民を守るのが彼らの仕事ではあるが、それはあくまでも人間相手の話。幻想の怪物のお相手は、業務外である。怪物に立ち向かえる自衛隊は、どこぞの怪獣映画の中にしか存在しないのだ。
さらには、平凡な街並みの中にあからさまにサイズのおかしい木が生えたり、どこに続いているのか分からない深淵が生まれたりしだす。本格的に、世界が変革されて行っているのだ。
ゲームが始まって一日で、一万人以上が死んだ。
三日目には、死者は十万人に登った。
一週間後には、一千万人を超えたと思われる。
その時になってようやく日本人―――プレイヤーは気が付くのだ。
あの声が言っていたことに、一切の嘘も誇張も含まれていなかった、と。
これまで悠々と暮らしてきた世界は消え失せ、地獄のような世界が始まってしまった、と。
そして――――――――この地獄をどうにかするには、戦うしか道はない、と。
…………とまぁ、それは大半のプレイヤーの話である。
実は、極々少数であるが、声の主の話を聞いた時点で、それを真実だとはっきり認識し、いち早くこのゲームの攻略を開始した者がいたのだ。
『終わりなき終焉』のパイオニアともいえる彼らは、すぐにこのゲームがどういうモノなのかを理解し、さっさと自分が生きるために行動し始めていた。
では、何故。日本中が混乱に陥っているなか、彼らはこの異常に対応することが出来たのだろうか?
ふと、そんな質問を先駆者の一人に聞いた者がいた。
先駆者たる一人は、その問い掛けに、あっさりとこう答えたらしい。
――――――だって、知ってたし。
知っていた、とはどういうことなのか。
別に、その先駆者さんが未来予知の超能力を持っていたとかそう言うわけではない。
ただ、彼らはこんな感じの――――『突然現実とゲームの世界がごっちゃになる』みたいなシチュエーションを知っていたのだ。
先駆者として速攻でゲーム攻略に乗り出した彼ら。そんな彼らは、性別も年齢もバラバラだが、ある一つの共通点を持っていた。
彼らは皆、そろいもそろって全員が……………
…………『オタク』だったのだ。
「ラノベってあれでしょー? キモオタの妄想でしょーwww」っていうDQN相手に「そうだよ」というための話。