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精霊姫の宝石箱  作者: 乙原 ゆん
第四章 比翼

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18.捜索

 浩軒と合流した朝。

 喬はまず一日がかりで麓の町に下りた。

 物資も何もかもを失ってしまい、町に戻らないと捜索どころではなかった。

 また二人とも怪我をしている。

 喬は沙羅の治療により大きな怪我は治っていたが、浩軒は酷い状態だった。

 下りとはいえ、歩きである。

 出来る限り急いだが、町に戻るのに一日かかった。

 それでも、浩軒は手当てを行うとろくな休息も取らず、町の兵士達に協力を要請するとすぐに王城へと出立した。


 沙羅に関しては、浩軒の報告が王城へ届き次第、大規模に捜索が始まるだろう。

 喬はまず生死が不明の迅を優先した。

 水に呑まれても死なぬよう咄嗟に術を飛ばしたので、命を失うような事態にはなってはいないはずだ。

 なのに、気配を感じられなかった。

 王弟殿下が行方不明ということで、町からも結構な人数を捜索に割いてもらえるようだ。

 迅だけではなく、巻き込まれた兵士たちも探す必要がある。

 それに、襲ってきた黒い獣も流されている。

 放置するとこの町にも被害が出るだろう。

 それらをなんとかしなければならなかった。

 ひとまず拠点設営の準備のため、喬は救助に協力してくれる兵士たちを連れて山に戻ることになった。


 山に戻って初日は、拠点を作る作業と救助と黒い獣の駆除に人手を割いたため、全員が捜索を行うことはできなかった。

 それでも喬一人で探すよりもはるかに成果をあげることができた。

 大人数で捜索ができたおかげで、襲撃により命を失った兵士と、かろうじて命を繋ぎ止めていた者の大半は見つかった。


 二日目。

 喬たちを襲った黒い獣が主に夜しか姿を見せなかったため、昼は救助、夜は黒い獣の駆除を行った。

 黒い獣の駆除を喬しかできないために、どちらにも参加している。

 しかし、肝心の迅の行方に繋がる手掛かりが何もない。


 三日目。

 行方不明者が迅を含めてあと三名。

 術を使って探すことも考えた。

 仙術自体は既に自力で封印を解いたいくつかに含まれているのだが、魔力が足りなかった。

 あの時、龍脈を操作したことで、喬の魔力は尽きかけた。

 その魔力も回復した端から、黒い獣の駆除に使ってしまっている。

 沙羅からもらっていた精霊石も、大半はあの時の黒い獣の駆除に使ってしまい、残りもほとんどない。

 色々試したが、黒い獣を消すのに精霊石は絶対に必要だった。

 今のところ麓の町への被害もないが、もしまた出た時のために使い尽くすことはできなかった。


 その後、迅を除く行方不明者の全員がみつかり、残るは迅だけとなった。


 浩軒を王城へと戻し七日目の朝。

 獣の駆除も順調の様で、獣の出没はなくなり、もう二晩姿を見ていなかった。

 なのにまだ迅だけが見つかっていなかった。

 そろそろ魔力もたまってきていた。

 今日見つからなければ、また魔力が尽き欠けることになるが迅を探す術を使うことを考えていた。


「今日は、この辺りを捜索します」

「そろそろ喬殿は休まれた方がよいのでは――?」


 一緒に探索をしている兵が言う。


「お気遣いありがとうございます。ですが私は多少無理をしても倒れたりはしませんから」


 迅を、早く見つけなくては、という焦りもあり、喬はあまり休息をとっていない。

 数多の修行を積んできたおかげでなんとか動けているだけで、体中ぼろぼろだった。

 あの時はそれ以外の手段を思いつかなかったとはいえ、自らが引き起こした事態で迅が行方不明なのだ。

 何かしていないと、不安で押しつぶされそうだった。


 ――なぜ、迅が見つからない。


 焦りを胸に、迅を探しに山に足を踏み入れた。



 その日の午後、浩軒が戻った。

 来るときは沙羅に負担のないよう過剰なほどに期間をかけたが、王城から喬たちのいるところまで馬で駆けるなら二日とかからない。

 何故こんなに戻るのに時間がかかったのか少々疑問に思っていたが、今は話を聞くのが先だった。

 慌てた様子で喬を迎えに来た兵士について拠点まで戻る。


 天幕に入るなり、険しい顔をしている浩軒の表情に、あまり良い知らせはないと悟った。

 浩軒は喬を見ると、少しためらった後まずは喬の状況を聞く。


「こちらに戻るのが遅くなり、申し訳ありません。

 色々お伝えしたいことがあるのですが、まず先にこちらの状況を聞かせてください。

 何か進展はありましたか?」


「迅と、沙羅については何も。

 護衛をしてくださっていた方は全員見つかりました。

 黒い獣の駆除も順調で、ここ二晩姿を見ていません。

 麓の町にも警戒は促していますが、そちらも被害はないようで、あと数日様子を見て、姿が見えなければもう大丈夫だと思います」

「そうですか。

 私の方も、陛下に拝謁してまいりました。

 殿下に関しては、まず、こちらをご覧ください。

 この石の回収と、精霊様の確認をお待ちしていたために戻るのが遅くなりました」


 大切に布に包まれ差し出されたのは、薄い紅色の輝きを持つ沙羅の作った精霊石だった。

 薄い紅色の輝きは中で眠る精霊のものだろう。

 喬はこれをよく知っていた。

 迅のものだ。

 迅と契約を交わした精霊が眠っている精霊石だ。

 差し出され、精霊石をおそるおそる受け取る。


「これを、どこで――」


「丁度あちらを発とうとしていた日に見つかりました。

 陛下の精霊様がこの石の気配が王都から少し離れた、殿下たちの進路とは全く違う位置にあると感じ取られ、陛下にすぐに回収するよう言われたそうです。

 これを所持していた人間は、闇市に出回ったものを購入したと聞いています。

 そして、回収したこの石を改めて精霊様が確認されて殿下のものだと判明した次第です」


「――よく、持ち出せましたね」


「陛下の精霊様のお言葉のおかげです。この石は特別だから、喬殿に預ける方が良いとのことです」


「他に何かわかったことは。

 闇市でこの石が売られていたというなら、迅は――」


 浩軒が目を伏せる。


「いえ、殿下は闇市にはおられませんでした。

 売買の記録などもなく、殿下が売られたかどうかもわかりません。

 しかし、精霊様が出立前に加護を授けられていたということで、ぼんやりとした居場所はわかるそうです。

 精霊様の仰せでは、迅殿はもうこの国にはおられぬ、と。

 正確な場所はわからないそうですが、おそらく西に向かっているようです。

 そして沙羅姫も同じく、国の外、西におられる、と」


「西、ですか」


 沙羅のことを迎えに来たと言った星藍の顔が浮かぶ。


「おそらくは、殿下を発見した誰かに連れ去られてしまったのでしょう。

 殿下と沙羅姫に関しては触れをだし、精霊様のお言葉はありますが、一応、国内についても捜索されるそうです。

 国境へも全ての荷と人を検めるよう命を下されるとのことでした。

 国外についても捜索隊が派遣されます。

 沙羅姫は隣国の姫君。殿下と同じくなんとしても救い出さなくては」


「そう、ですか」


 浩軒の言葉に喬がよろめく。

 必死に探していたことが無駄となり、一気に疲れが出たようだ。

 だがすぐに気を取り直し、顔を上げる。


「私も追いかけます。

 本日、迅が見つからなければ術を使って探すことも考えていました。

 しかし、ここではない、西ににいるとわかったのならその必要がありません。

 この場所の問題は黒い獣だけになります。

 黒い獣が本当に全部いなくなったかを術で確認し、もし見つからなかったらそのまま出ます。

 見つかった場合は、駆除してからすぐに発ちます。

 申し訳ありませんが、馬を一頭貸していただけませんか?」


 黒い獣の確認ともし居た場合はその駆除で、また魔力が尽きることになるが、しばらくは魔力を使うことはない。

 魔力を使ってしまっても国境を出るまでに回復できるだろうとの判断だった。


「国境までは私がお送りします。

 喬殿が殿下たちの後を追われると言われたならば、馬の支度を行い、国境を問題なく出ることができるよう手伝うよう言われております」


「よろしいのですか?」


「はい。こちらに残っても、私にできることはありません。

 私も殿下と沙羅姫のために何かしたいのです。

 国境までは同行いたします。

 私がこちらに来るときには、既に国外に向けて捜索隊の編成が始まっていました。

 国境に着いた後は捜索隊に入る予定です」


「大変、助かります」


 そして喬は早速、黒い獣の捜索に取りかかった。

 幸いなことに、すべて駆除できていたようで、黒い獣の気配は見つからなかった。

 喬は浩軒と共に国境へと向かった。

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