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精霊姫の宝石箱  作者: 乙原 ゆん
第一章 はじまり

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11.激痛

タイトル通り、痛い表現があります。

 常にはない息苦しさに、沙羅は目が冷めた。

 ここは塗籠だろうか。

 暗く狭い所に押し込められている。

 どこかに隙間でもあるのか、微かに外の光が入っているので、真っ暗ではないが周囲は朧げにしか見えない。


 何故このようなところにいるのだろうと、疑問に思ったところで直前の経緯を思い出す。

 右大臣のせいか。

 都の屋敷は一通り見て回っている。見知らぬ場所にいるということは、どこぞへ連れ出されたのだろう。

 これからどのような扱いをされるのだろうか。

 不安がせりあがってくるが、目を開けているだけですら酷くつらく、助けを呼ぶために声を出す力もなかった。

 どこにいるのかもわからないのに、声を出して、より酷い状態になることも怖い。


 精霊石を代償に精霊に助けを求めることも思いついたが、体内の魔力は乱れ、魔力は石になる前に霧散する。

 そのような状態で何ができるだろうか。

 考えるも、何も思い浮かばない。

 もう詳細も覚えていないほどだが、昔誘拐された時の恐怖が蘇り、恐怖が高まる。

 都に来てから不在がちだった迅は、いつか気がついてくれるだろうか。

 気が付いたら、助けに来てくれるだろうか。


 思考は散乱し、前向きなことは一つも思い浮かばない。

 気持ちも沈んでいくばかりだったが、どこからともなく熱気を含んだ煙たい風が流れてきたのに気が付きそちらに注意を向けた。

 護摩を焚いている香りがする。

 風向きが変わったのか、人の声も聞こえた。


「まだ用意はできないのか」

「そう言われましても手順がありますので」

「早くせねば。あのようにひどい状態では、使い物にならん。本当に、何とかできるのだろうな」

「あの呪いを蒔いたのはわたくしめでござりますれば、刈りとるのもまたのは容易いかと」

「ならばよい。失敗したかと思っておったが、このような形で返ってくるとは。まこと、結構な話よの」


 右大臣とそれに媚びる男の声が風に乗り聞こえてくる。

 右腕の呪いの原因がわかるも、今更だ。

 あの様な者たちに触れられたくはない。

 逃げなければ、そう思っても微かに身じろぐだけで精いっぱいだった。



  *  *  *



 やがてまた、声が聞こえてきた。

 途中、また意識を失っていたようで、どのくらい時が経ったのかはわからない。


「整いましてございます」

「よし。ではそこのお前、念のためこれを姫に張り、疾く連れて来るのだ」


 ドタドタと走る音が聞こえ、塗込めの扉が開けられ新鮮な空気が流れ込む。

 沙羅の方を覗き込む大男に、せめてもの抵抗と、微かに顔を隠すが、ろくな抵抗できないままに手を払われ、よくわからない紙を額に張られる。

 そのまま俵のように抱えられ、右大臣たちの待つ部屋へと運ばれた。

 額に張られた紙は拘束のための呪具だったようで、抵抗しようにも身動きを完全に封じられてしまっていた。


 連れていかれた先には、わざわざこのために誂えられたと思われる祭壇ができあがっていた。

 その上に運ばれ寝かされる。

 奥の、上座に誂えられた火炉が思いのほか近く、熱気に炙られる。


「呪い師よ、これでよいか」

「結構でございます」


 先程右大臣と会話していた男の声が応え、そのまま呪文を唱え始めた。

 途端に右腕からねじ切られるような痛みが全身に広がり、絶叫をあげる。

 だが、呪具のせいで、叫び声一つあげることはできず、身を庇うこともできず、ひたすらに痛みが沙羅を塗りつぶしていく。


 このまま、死んでしまうのだろうか。

 死にたくはない。

 だが、この苦痛が少しでも早く楽になるのなら良いかもしれない。

 そう思ってしまうほどの痛みだった。


 誰かに助けを求めることすら思い浮かばず、色々なものを諦めた頃、沙羅の意識はようやく途切れた。

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