45. 最終電車II
「演技じゃねえよ……バカ」
そう言うとぐしゃぐしゃと頭を掻き回された。
「そうか! ……えーと、スウちゃん? 久しぶり」
「うん! 久しぶり! 会いたかったよ!」
「嬉しいことを言ってくれるな」
信雄はスウの頭は優しく撫でた。俺との扱いの差を顕著に出しやがって!
「3人は本当に仲がいいんだね」
「おう。親友の中の親友よ!かなりあべこべの3人組だけどな!」
隆幸に信雄が胸を張って親友と言ってくれたことが嬉しかった。俺たち、生まれ変わってからもまた前みたいに話せるんだ……。
迎えに来た信雄の車に乗り、信雄の家に向かった。懐かしい風景を眺めながら感傷に浸っていると信雄が、
「懐かしいよな。よく山に散策に行ったよな。カブトムシ捕まえるって言って夏休みに毎日虫取りに付き合わされたな……」
そうだな。俺たちがまだ小学生だったころの話だ。俺は貴美子にカッコいいカブトムシを見せたくて信雄を引き連れて山を駆け巡った。信雄は嫌な顔ひとつしないで付き合ってくれたな。
「懐かしいね。よく夏休みに父さんとカブトムシを捕まえに行ったよね」
信雄の言葉に答えたのは隆幸だった。親子そろって信雄を巻き込んでカブトムシ捕りに行っていたようだ。
「ああ、お前らは本当に捕まえるのが下手くそだったからな。お前らに付き合ってたらあっという間に夏が終わっちまってたよ」
隆幸も虫とりは上手くなかったみたいだな。
「ええー! 確かに時間は掛かったかもしれないけど最後はちゃんと捕まえられてたからいいでしょ!」
隆幸が不服そうに申し立てた。俺もちゃんと最後にはカッコいいカブトムシを捕まえられていたぞ。
信雄の家に着いた。流石に俺が生きていたころとは違う家になっていた。隆幸と暮らすようになって引っ越したのかもしれない。
と、言うのも一人暮らしにしては少し広すぎるように感じたが女性の影がなく、隆幸の部屋が存在していたからだ。
「先生はこの家で暮らしていたの?」
「そうだよ。母さんが居なくなって行き場のなくなった僕をノブさん…….父さんが拾ってくれたんだよ。それから大学に進学するまでずっとこの家で暮らしていたよ」
隆幸は少し遠くを見つめていた。
「そうだお前ら!隆幸のアルバムがあるから後で見せてやるよ」
「……えっ! ちょっとそれは恥ずかしいよ!」
「まあまあ! 恥ずかしがることはないだろ!」
見たい。どんな風に自分の息子が育ってきたのか見たい。スウも気になっているようでソワソワと体を動かしていた。
そんな俺たちを見て信雄はガハガハと笑った。
「そこのふたりはかなり気になってるみたいだしな! かおりさんも気になるだろ?」
「……はい。少しだけ」
かおりさんは遠慮がちに頷いた。
「え!! 僕のアルバムなんて見ても楽しくないのにな……」
「コイツらにとっては何より楽しいと思うぞ。まあ、お前達はまず墓参り、行くだろ?」
「うん。父さんと母さんに報告しないと。久世くんたちは……」
「コイツらは俺と家で留守番だ。かおりさんと2人で行ってこい」
「父さんは行かなくていいの?」
「俺はいつでも行けるからいいんだよ」
隆幸とかおりさんは俺と貴美子の墓参りに出かけた。信雄は車を貸してやるつもりだったみたいだが、隆幸は久々に町を歩きたいからと言ってその申し出を断った。
俺たちの意識はここにあるのに墓参りってのも変な話かもしれない。
でも、俺たちはもう報告は受けているから墓に眠っている遺骨に報告してるって考えればおかしくは……ない、よな?




