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2. VSお義姉さん

 


 前回のあらすじ


 ロリ(よめ)の家に遊びに行けるようになった




 あれからスウの家に何度か遊びに行っているがその度に気になる視線がある。スウの姉である(あかり)だ。


 彼女は俺の通う高校に転校してきて、そしてあろうことか同じクラスだった。学校では名前の通り明るく振舞っているくせに家で俺とスウが遊んでいると鬼の形相で睨んでくる。


 出来ればお義姉さんとは仲良くしたいものだ。


「スウ、おまえの姉さんに気に入られるにはどうしたらいいと思う?」


 今日もスウの家に遊びに行き最近スウがハマっているあやとりをしながら尋ねる。


「おねえちゃん?おねえちゃんはベニーちゃんがすきだよ〜」


 ベニーちゃんというのは頭でっかちのウサギのキャラクターで俺にはわからんが今女性に大人気らしい。


「スウもすき〜」

 ニコニコとスウが答える


「俺も好き〜」

 たった今、俺も好きになった。



「あとねースウねーオムレツがすきだよ〜」


「俺もオムレツ好き〜」


「あとねーあとねーキラキラしたビーだまもすき〜」


「俺も〜」




「その馬鹿みたいな会話を今すぐ辞めなさい」


 明が帰ってきた。部活に入っているので俺より帰るのが遅い日がある。因みに俺は帰宅部だ。これから先デートに行く機会も増えるだろうからそろそろバイトでも始めようと思っている。


「おかえり」


 と、言っても無視される。

 辛いぜ。




 ここまで嫌われる理由は実はわかっている。簡単なことだ。俺のことをロリコンだと思っているからだ。悩ましいかぎりだ。



 ちょんちょんとスウに肩を叩かれた。


「ねえねえイチくん!あしたのピクニックにね!スウ、このリュックもってく!」

 可愛らしいネコの形のリュックを背負ってクルクルと回ってみせる。可愛い。


 まあお義姉さんとのことは後々考えることにして今は目前に控えたスウとの初デートのことを考えよう。


「俺、お弁当作ってくよ。オムレツ作ってく」

 俺が言うと

「わ〜オムレツー! イチくんすきー!」

 と言ってくれる。こんなことで愛が貰えるなら幾らでもオムレツ焼きますよ、俺は。



「……ちょっとまちなさいよ。あなた達2人で出かけるの?」


 明が割って入ってきた。


「え、そうだけど。出かけるって言ってもマンションの横の公園だし、静流さんの許可は取ってあるぜ?」

 そう言うと

「私は許可してない。……明日私も一緒に行くから」

 明は眉を寄せて答えた。

「おねえちゃんもいっしょにきてくれるの? やったー!」

 スウは嬉しそうにその場をぴょんぴょんと飛び跳ねた。




 残念ながら俺とスウの初デートは姉同伴になった。スウが喜んでいるからいいんだけどね。





 本日は晴天、素晴らしいデート日和だ。俺は早起きして作った弁当をリュックに詰めて隣の家のインターホンを鳴らす。


「イチくんおはよう!」


 中から飛び出してきたスウはつばの広い白い帽子を被り水色のワンピースを着ている。背中には昨日のリュックを背負い今日もクルクルと回る。


「みてみてー!かわいい?」


「ぐわぁっ」

 俺は思わず自分の胸を鷲掴む。心臓が止まるかと思った。




「なにやってんのよ。早くいくわよ」


 明はスキニーパンツにTシャツにスニーカーといった出で立ちで大変動きやすそうだ。




 俺たちがマンションから出ると同じ階に住んでいるおばさんがいた。


「あら、デート?若くていいわねえ」

 へへへと、俺は頭をかいたが

「一くんと明ちゃんお似合いねえ」

 その言葉に


「「違います」」


 明と声が被った。




 あらぬ誤解を受けてしまったがあのあと必死に弁明したので誤解は解けたと信じたい。去り際のニヤニヤ笑いが少し気になったが俺は目の前のスウとのデートに集中することにした。



 公園に着き俺がスウの手を取り

「この前みたいにどっか行かれると困るからな」

 と笑ってやると


「もういかないよ! だいじょうぶだよ!」


 頬をぷくっと膨らませながら俺の方を見上げてくる。でも握った手はしっかりと握り返してくれた。



 今日の予定はいたってシンプルで公園を散歩してお弁当を食べてまた散歩するだけだ。


 前世のときから金がないからとデートは散歩で済ませることが多くろくなところに連れて行ってやれていなかった。

 今回は散歩デートだが今度は遊園地とか動物園とかいろんなところに連れて行ってやろう。そう心に決めた。


 それにしても今日は本当にいい天気だ。公園には俺たち以外にもたくさんの子供たちが遊びにきており元気に駆け回っている。


「いいな〜。スウもおにごっこしたいな〜」

 スウが言う。


「よし! 弁当食う前にやるか!」

 いいよな?と、明の方をチラリと見ると、黙って頷き返してきた。


 3人で鬼ごっこというとなんとも微妙な人数だが致し方あるまい。まず俺が鬼を買って出てスタートした。5歳児と高校生2人、やり辛いこと極まりない。


 とりあえずまずはスウを追う。本気で走ればすぐに追いついてしまうのである程度距離を保つ。

 スウはケラケラ笑いながらと楽しそうに走っている。こうしていると海辺で追いかけっこをしてるカップルみたいじゃないかと1人ほくそ笑んでる俺を明が不審そうに見ていた気がするが…。


 すると当然スウが止まった。

「スウちょっと疲れたからバリアータイムね」

「おいおい。そんなのありかよ」

 苦笑しつつも今度は明を追いかけることにした。


 突然自分の方に駆けてきた俺に恐怖したのかすごい顔で明が駆け出した。明の全速力は高校生の女子の平均よりもかなり速そうでなかなか追いつかない。そんなに全速力で逃げなくてもいいじゃないか。


 それでも少しずつ差をつめ近づいていく。もう少しで触れる距離まで詰めていると明がチラッとこちらを振り返った。目と目が合い驚いた明が転倒し俺もそれに重なるように倒れこんだ。気がついたときにはお義姉さん(あかり)を押し倒していた。


「びっくりしたー……。いや、悪かったな。ははは」


 明の顔の横に手をつき、とりあえず謝っておく。―はからずも床ドンというやつをしてしまった―

 明はかなり怒っているようで顔を真っ赤にさせて震えている。


「ご、ごめんな? 大丈夫か?」

 明の上から退いて尋ねる。


「……大丈夫。…………っ」

 明はスッと立ち上がりそう言ったが足を痛めたようで苦痛の声が漏れた。


「おねえちゃん! イチくん! だいじょうぶ?」

 スウが慌てて俺たちのもとに駆けてきた。


「スウ、今日のお散歩はここまでにして、家に帰ってからお弁当にしよう」


「いいわよ!私は1人で帰るからあなた達はまだ遊んでなさいよ。どうせ私は付いて来ただけだし……」

 しょんぼりと項垂れる。


「そういう訳にはいかないだろ。おまえ足痛いんだろ?乗ってけ」

 俺は自分の背中を指差した。


「は、はあ!?なんでそんなこと……」


「捻挫は応急処置が重要なんだ。なるべく動かさない方がいい。それに俺がおぶったほうが早い。スウ、俺のリュック持てるか?弁当入ってるからちょっと重いけど」


「だいじょうぶ! もてるよ!」


「よし、乗れ」

 明はしぶしぶ俺の背に乗り俺たちは早足で家に帰った。




 静流さんはパートに出ていて居ないので俺とスウで簡単な応急処置を行った。


「ありがとう」

 明は気まずそうにしながらもそう言った。


「スウ、ちょっとリビングでキュアキュアでも観ててくれる?」

 明がそう言うとスウはコクリと頷いて明の部屋を出て行った。―キュアキュアはスウの今一番好きなアニメだ―

 部屋に取り残された俺はソワソワと落ち着かない。


「今日は邪魔して悪かったわね」


「いや、気にするなよ。そういう日もあるさ」

 少しの沈黙のあと明は意を決したように話し出した。


「今日は本当に邪魔するつもりはなかったの……。私、昔から同年代の男の子が苦手で……男友達とかもいないし彼氏もできたことなくて。それなのに妹は変な男を家に連れ込むようになるし……」


「……それは誤解を招く発言だぞ」


 なんだ。ロリコンだから嫌われているわけではなかったようだ。いや、俺はロリコンではないけどね。


「私、あなたとどう接すればいいのか、わからないのよ」


「……なるほど。つまりは俺と仲良くなりたいということか?」

 本人がわからないというならこっちの都合のいいように解釈させて貰う。


「な……うん。まあ、そういうこと?……かな?」


「俺が明の男友達第1号になるよ。そんで苦手意識とかなくなれば儲けもんじゃね?」


「そっか……。 ……じゃあ、よろしくお願いします」

 明が頭を下げてくる。


「こちらこそよろしくな!」

 軽く頭を撫でてやると、明の耳が少し赤らんだ。



「よし、じゃあ飯にしよう!腕によりを駆けた特製オムレツだぞ!」

 リビングに行きアニメを観ていたスウに言う。スウはぱっと振り返り


「やったー!オムレツだー!」

 と顔を綻ばせる。可愛い。



 食事の後、俺とスウが遊んでいても明が俺たちを睨みつけることはなくなっていた。とりあえずお義姉さん(あかり)との関係は改善され、俺はホッと胸をなでおろした。






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