プロローグ
「チッ…相手になんねぇ」
倒れている、男子を見下ろして吐き捨てるように言う。
「ウチでこういうことをしたらどうなるか、わかったか?」
「ううう…」
倒れているのは1人2人ではない。
10数人、制服を着た男子生徒が倒れているのだ。
そのうち、4・5人は顔をボコボコに殴られて顔面傷だらけだ。
事の発端は、ある生徒への一方的なリンチ。
それをたまたま見つけて、止めるついでに加害者の集団を逆リンチしたのだ。
1人で10数人を倒した生徒の名は、滝沢翔一。身長は180センチぐらいでガッチリした体格だが、体が少し細い印象を持たせる、きれいな顔立ちの少年だ。
「寝そべってんじゃねぇ。早く失せろ」
動けなくなっている生徒たちを睨みつけると、皆オドオドしながらも立ち上がった。
全員が起き上がり、ノロノロと…だが、逃げるようにその場から去っていこうとする。
「お前が主犯らしいな。おまけだ」
頬にビンタを浴びた主犯格の生徒は、周りに助けられながら立ち去った。
「さて、帰りますか」
リンチを受けていた生徒も、いつの間にか居なくなっている。
別にお礼を行って欲しかったわけでもないし、暴力されていた生徒の顔すら、翔一は覚えていない。
そう、本当にただの暇つぶし。弁当を食べて、体育館裏を散歩していたらリンチを見つけてしまったから、正義の味方気取りで助けただけ。
「ま、気分はいいかな」
満足げな表情を浮かべて、翔一もこの場から立ち去った。
これから、予想も出来ない悲劇が降りかかることも知らずに…