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八話 親切な人たち

影秋は困っていた


「で、アキさんはどうしてあんな場所に居たんだ?」


「えっと、迷ったというかなんというか・・・」


「迷った?アキは冒険者なのか?あそこは魔の森のすぐ近くだから近づかねぇほうがいいぜ」


目の前の男、頬に傷がある厳つい印象の男だ。

たしかこの傭兵団をまとめる隊長らしい、といっても全員で7人の小規模なもので色々な場所を転々とし護衛依頼などを受けて生計を立てているという。

確か名前は・・・。


「クーガー隊長!アキちゃんが怖がっているでしょう?隊長厳ついんですから威圧感与えまくりですって」


「ベリル・・・そういってもだな、話をしているだけじゃないか。」


厳つい印象の男が厳ついと言われて落ち込んでいる。

厳つい外見に似合わずしょんぼりしてしまったクーガーという名前の傭兵団の隊長さん。

そしてベリルと呼ばれた女の人がこの傭兵団の副隊長らしい。


「えっと、俺は別に怖がってないですよ?」


「おお!そうか!!アキちゃんはいい子だなぁ」


とクーガーは顔をにんまりさせ頭を撫でようとしてくる。

影秋は男に頭を撫でられる趣味はないのでさっと避けた。

再び肩を落とし落ち込む隊長、厳つい外見に似合わない・・・つい笑いがこみ上げてきた。


「く、ハハハ」


中途半端に我慢したせいか乾いた笑いになってしまった。


「とりあえずアキちゃん、あなた冒険者よね?私たちはこれから都市エリアルに行くんだけど、そこまで送ってあげましょうか?」


「え?いいんですか!?それはとても助かりますけども・・・」


「いいってことよ、旅は道連れよは情けってな」


そういって男らしく笑うクーガー隊長。

その隣で微笑むベリルさん、その姿はまるで長年連れ添った夫婦みたいであった。


「クーガーさんとベリルさんって夫婦みたいですよね」


「夫婦?腐れ縁みてぇなもんだよ」


と顔を紅く染めながらクーガー隊長が言った。

ベリルさんはそれを横から見て「はいはい、」といった感じのリアクションだった。

その関係は俺からみてとても羨ましく、とてもまぶしいものだった。


「それにしても危なかったな・・・。ドラゴンが出てくるなんて、滅多にでないっつうのに」


「いくら近道っていっても魔の森の傍を通るのは無謀だったんですよ。あの商人の反対を押し切ってでも遠回りするべきでした。」


「あの魔術師の連中がなぁ、大丈夫だ!って言い張るから仕方なくなぁ」


影秋は考えた、ドラゴンである。

ドラゴン・・・竜・・・すごい迫力だった。

改めて異世界に来てしまったのだと実感した影秋。

傭兵団の人にもらったシャツの上にシーツを羽織る


「アキちゃん、寒くない?」

ベリルさんが気を利かせてくれるが、


「大丈夫ですよ。お金もないのに服までもらっちゃってすみません」


「いいのよ、私のお古で大丈夫だった?」


「はい大丈夫です。」


本当は少しと言わず結構ぶかぶかだったりするのだが・・・影秋の最初の格好より遥かにましであった。

(荷物は燃えちまったしな・・・)

あの時トートバックが燃えてしまったのだ。

中身は全部おしゃか、服まで燃えてしまった。

今あるのはぶかぶかのジーパンに、ポケットに入っていた財布と左腕につけていた腕時計のみだった。

(どうするよ、冒険者だって思われてるみたいだしなぁ。いまさら気付いたら魔の森の奥に居て死に掛けたら女神の祝福受けて女になりました。なんて信じてくれないだろうしなぁ)


「都市エリアルってどんなところなんですか?」


「ん?アキちゃんエリアルしらないの?」


「はい、田舎から出てきたばかりで、どこに何があるのかわからないんですよね。」


「都市エリアルはロウド王国が治める街で商業が栄えている街よ、とても活気に溢れていて品揃えも豊富、冒険者はまずエリアルを目指せ!って言われるくらいには便利な街よ」


「へぇーすごいですね!」


「あなた本当に冒険者なの?エリアル知らないなんて・・・」


「実は何もわからず家を飛び出してきたばかりでここがどこなのかもわからないんですよ」


と、とりあえずその場は言い逃れをする。

(魔の森から出てきたってだけで怪しまれそうだしなぁ、この人たちすごい優しそうだし深くは聞いてこないみたいだからとりあえず街まで乗せてもらおう。)


「冒険者はまずエリアルを目指せ!って言われてるくらい品揃えも豊富なんですよね?私これから冒険者になるつもりなのでついたらどうすればいいでしょうか?」


「うーん、アキちゃん。冒険者ってね、かなりつらいし後ろ盾もなにもないからとても危険な物よ?」


かなりいい人だ。

見ず知らずのしかも魔の森の付近であった人間を危ないからといって保護し、服もくれて、心配までしてくれる。


「大丈夫です。私には身一つしかありませんから。」


「そう・・・、そしたらまずね」


ベリルさんは深くは聞いてこなかった。

(本当にいい人だ・・・。)


冒険者になるには最初まず冒険者ギルドに登録したほうがいいという話だ。

様々な依頼があり、 素材収集依頼から、討伐依頼、護衛依頼などが主な冒険者の仕事。


「たまに街の清掃とか、そうゆうのもあるんだけどね」


ということらしい、冒険者はみな依頼を消化し日々の生活費を稼ぐとのこと。

ギルドに登録すればその依頼がギルドの斡旋によって受けられる。

つまり冒険者にとってはギルドに登録するのは必須と言っても過言ではない。


その後は装備を整えないといけない。

冒険者はその身ひとつで生き残らねばならないので装備品はケチってはいけないといわれた。

はじめの内はギルドで簡単な依頼を消化してお金を稼ぎ装備品を充実させてから旅立つといいといわれた。

ちなみにお財布を出して「このお金使えますか?」と聞いたら。


「見事な絵だな、高く売れるぞ」


「こんな紙初めて見たわ、すごいわね・・・これどこで売ってるの?」


と返されてしまった。


小銭を出すと


「こんな銀貨見たことないわ・・・。」


とか・・・。

ここでお金が使えないことに気付き目の前が真っ暗になった影秋であった。


ちなみにこの世界の通貨は


銅貨、銀貨、金貨の三種類で

銅貨十枚で銀貨1枚、

銀貨十枚で金貨一枚。


日本のお金に直すと

銅貨=100円

銀貨=1000円

金貨=諭吉

という感じっぽく、影秋からみたら中々に大雑把な金銭感覚なのかな?と疑問を感じずにはいられなかった。


あれこれ色々たずねている俺に対して深く聞き返してこないで、ただ質問に答えてくれるこの人たちに会えたことは影秋にとってとても幸運なことだった。


そしてしばらく馬車に揺られながら質問をしていたら、


「街が見えてきたぞ!」


といわれ馬車から顔を出す影秋の目に写ったものは、とても、とてもでかい石壁であった。


「で、でかい・・・」


そんな影秋をみて、可愛らしいと笑みを浮かべるベリルに影秋はちっとも気付かないのであった。




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