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【旧】異世界見切り発車  作者: syouzi kobayashi
都市エリアル
30/37

二十九話 宿を共に


「さて、何食べたい気分?」


「む、そうだな・・・なんでもいいぞ」


「それが一番困るとおもうぞ・・・」


影秋は街を歩いていた、偶然助けて(?)もらった少女と共に。


「は、腹減った・・・」


食べ物のことばかり考えていた影秋、かなりお腹がすいていた。


「また、今度にしないか?私はこれから宿を探さなければいけないのだ。」


もう日は落ちており、あたりは暗い。

魔力を込めた魔法石によって作られた街路灯が光る。


「!なら、俺の泊まってる宿に来ないか?飯がうまいんだ」


「ほぉ・・・なら行かせてもらおうか」


影秋は歩き出す。

夕飯が食べられると、内心かなり喜んでいた。


「ごっはん~ごっはん~♪」


内心、ではなかった。




「ここが俺の泊まってる宿!『朝日と共に』だ。」


「これは、中々立派な・・・高そう・・・だ・・・な・・・」


「一泊食事つきで銀貨三枚だったかな?」


「ぎ、銀貨三枚だと!?」


影秋はこの世界の金銭感覚がわからないのだが、この宿『朝日と共に』は女性でも安心して泊まれるようなレベルの宿である。


「銀貨1枚ので普通の宿に泊まれるというのに・・・銀貨三枚だと!?」


「え!そんなに安い場所があるのか!?」


影秋はここ以外の宿を知らない、というか調べていないのだ。


「私にそんな金銭的余裕はないぞ・・・」


「ぬぅ~・・・!じゃ、じゃあ今日は俺が出す!飯じゃなく宿代出すぞ!」


「な、なんだと?銀貨三枚だぞ?」


「今日、依頼達成して報酬たんまりもらったんだよ。」


「アキは冒険者だったのか・・・」


驚くタエコであった。

影秋の格好ば冒険者には見えないのだ。

まぁ服の素材は別物なのだが。


「そうだぜ!今日Dランクになったばっか!」


と、思い出したように喜び始める影秋。


「ふふ・・・そうか、おめでとう。私も冒険者になりにこの街に来たんだ。」


「え、タエコさん冒険者じゃないの?」


タエコはこれでもさっきのモブを二人、一瞬で無力化していた。

その行動を見て影秋は勝手に冒険者だと解釈していた。


「私はまだ冒険者ではない・・・辺境の村で育ち、親が死んだから冒険者になろうと思った・・・それだけだ。」


「・・・そっか」


影秋は、親と聞いて一瞬ビクッっとなった。


「・・・」


「・・・」


両者とも黙ってしまう。

何をしゃべっていいかわからなくなってしまった影秋であった。


「・・・アキ、何でずっと宿の前で立ってるんだ?」


と後ろから声をかけられた。

そこには、膨らんだ手提げ袋を持つクーガーの姿があった。


「クーガーさん!買い物ですか?」


「ああ、ベリルに頼まれちまってな」


「それって・・・、とりあえず中に入りましょうか。」


それってパシリなんじゃ・・・という言葉はさすがに自重し飲み込んだ影秋だった。

タエコと共に宿に入り、後ろからクーガーが入る、影秋とタエコは先に受付に行き、クーガーは部屋に戻る。


「部屋は空いてませんか?」


「申し訳ございません。ただいま満室でございます。」


「な、なんだと・・・」


「ま、まさかの満室」


肩を落とすタエコ、

そこに影秋は、


「じゃあ俺の部屋で一緒に泊まろうぜ!!」


と言い放った。


「む、いいのか?今日会ったばかりだぞ私たちは。」


「いいよ!タエコは信用できる!間違いない・・・助けてもらったしな!!」


「そうか・・・すまない、いやありがとう」


影秋の申し出に感謝するタエコ、


(アキはなんていい奴なんだ・・・)


とタエコは思っていた。


「飯食おうよ!飯!!」


ただお腹がすいていただけな影秋だった。



「お、アキちゃん今日は大丈夫そうだな・・・今日も特盛!」


「まじで!?食べてこなくてよかった・・・それと、一人前追加で、」


「ん?そこの子が食べるのかい?」


「うん!タエコの分!」


「そうかい!すぐ用意するよ(ニコニコ)」


「アキ・・・すまない、ごちそうになる」


「いいよ、助けてもらったし!」





「うますぎる!!」


どこぞの蛇と呼ばれる潜入工作員のような感想を言い出す影秋。

ガツガツと食べまくっていた。


「これは・・・確かにうまいな・・・」


と、上品に食べるタエコ。


「お!アキちゃんいい食べっぷりね!」


「ふぉふぅふぁにほぉいふぃいひょうひ(こんなにおいしい料理)ん”!」


食べながらしゃべり、喉をつまらす影秋。


「アキ、しゃべるか食べるかどっちかにしたらどうだ。」


といいながら自分が飲んでいた水を差し出すタエコ。


「んぐんぐんぐ。ぷはー、助かったよ!ありがとう!!」


と、言いながら口をあけて再び食べ始める。


「やれやれ・・・目が離せないな」


タエコが微笑ましい目で見ていた。



「ごちそーさまでした」


「ごちそうさまでした。」


二人が同じタイミングで食べ終わる。

影秋は特盛で、タエコは普通の量である。


「ふぅー、じゃあ部屋に戻ろうか!」


「ああ!今日は世話になる。」


と、いい階段を上り部屋に入る。


「中々綺麗な部屋だな」


「だろ?俺も最初びびったわー」


「ふふふ、しかしベッドがひとつしかないな」


そこで気付く影秋、


(ベッドひとつしかないじゃん!!)


影秋の中身は男なのだ、タエコのような美人と同じベッドに寝ることなど


「俺はソファで寝るよ!」


「いや、それには及ばない私がソファで横になろう。この部屋を借りているのはアキなのだからな」


影秋は男としてそこは譲れない、しかしタエコも譲れないのだった。

しばらく、ソファで寝るよ合戦を繰り返し、タエコが


「ならば、同じベッドで寝るしかないだろう・・・大きさは十分だが」


「俺はソファでかまわないって!!」


「む、私と同じベッドで寝るのはいやか・・・」


と、声に悲しさがまじるタエコ。


「そ、そんなことない!!いいぜ!一緒に寝よう!」


影秋は焦って、一緒に寝よう!と言い出した。

自分で言った言葉で赤面しだす影秋。


「まぁ女同士なのだ。問題ないだろう・・・すまないが同じベッドで眠らせてもらう。」


タエコからしたら女同士なのだ。

そう思った影秋は自分ひとりが照れているのだと思い恥ずかしくなっていた。


「(赤面しながら)お、俺は風呂入ってくる!!」


と、逃げ出すようにお風呂場に向かってしまった。


「アキ、信用してくれるのは嬉しいのだが今日あったばかりの人間の前にカバンを放り出していくな・・・」





「うう・・・恥ずかしかった、でもそうだよな今俺は女なんだ!」


鏡の前で赤面している自分の顔を触る。


「ふふふ、」


上品に笑ってみる。


「おお!可愛い!!」


自分の顔で遊び始める影秋。


「はー馬鹿馬鹿しくなってきた。俺は女!今は女!よし!!」


と、考えをまとめて服を脱いだ。髪留めをはずし

そしてお風呂場に入る。


「今日はお湯張ってない・・・」


帰りが遅かったため湯は張れなかった。


「シャワーで我慢するか。」


といい、さすがに失敗しないと水圧を調整温度も確認して頭をぬらす。


「あ、シャンプーが」


シャンプーとコンディショナーは離れたところにあった。


「むむむ、取りに行かねば。」


シャワーを出しっぱなしにし、立ち上がる影秋。

そのままシャンプーをとり戻ろうとした瞬間、扉が開いた。


「私も一緒に入らせてもらおう。」


タエコであった。

ローブの下で隠れて見えなかったが、タエコはとてもスタイルがいい。

影秋と違って胸もでかい・・・とまでは行かないがきちんと膨らんでいる。


それをみて影秋は


「う、おお・・・ああ!?」


と、混乱していた。


「どうした?もしかして・・・私の体はどこか変か?」


タエコは自分の体を見下ろす。


「え、ああ・・・いや、き、ききき、綺麗っすよ」


「そ、そうか、ありがとう。でも凝視されると流石に照れる」


「す、すまん!」


と、言いながら影秋はシャワーに戻ろうとする。

そこで、


「うわっ!」


「きゃ」


転んでしまいタエコにぶつかる。


「いたたたた・・・ん?柔らかい」


「アキ・・・どいてくれると嬉しいのだが。」


「す、すまん!!」


転んでタエコに倒れこみ、胸を鷲掴みにした影秋。


「わ、わざとじゃないんだ!!すまない。」


「いい、私は平気だ、それよりアキは大丈夫だったか?」


「ああ、平気だ。柔らかかったしな」


「そ、そうか、大丈夫ならよかった」


照れるタエコ、自分の発言に気付いてない影秋。

影秋は目の前の光景に一杯一杯になっていた。


「と、とりあえず俺髪洗うから、シャワーどうぞ。」


「ああ、すまないありがとう」


と、シャワーを受け取り体を濡らすタエコ


「む、少しぬるいな。」


と、いいシャワーを自分からそらし温度調整を図るタエコ。


髪を洗っていた影秋は。


「うわ!目に、目に泡がはいった!!痛い痛い。シャワー貸してくれ!!」


「まて、今温度をだな・・・あ」


「あっちいいいいいいいいいいいいいい」


「今温度を調整する!!」


「ちちちち・・・つ、つめてえええええええええええええええ」


「あ、ああす、すまん!!」




まさかの失敗である。

影秋は温度調整したシャワーを浴びながら。


「こんど絶対シャンプーハット買ってやる・・・この髪が長いのがいけないんだ!!」


と憤っていた。

気付かないうちに照れはなくなっていた。




影秋は先にお風呂場から出て、体を拭く。


「明日は絶対にお湯張る!浅い風呂でも入りたい日本人の性~」


しゃべる途中でリズムを取り出す影秋。

髪を拭いている途中で、タエコが出てきた。


「お、タオルはそこにあるぜ」


と、髪を拭きながら振り向く影秋。


「・・・」


髪を濡らし上目遣いな可憐な美少女だった。


(なんで私はこんなにドキドキしているんだ・・・)


タエコはその影秋をみて、胸の高鳴りを覚えた。


「?拭かないの?風邪引くよ?」


マイペースな影秋。


「あ、ああ。ありがとう」


体を拭き始めるタエコ


「ふんふん~ふ!!」


となぞのリズムを刻む影秋。

下着を着け始めた。


「じゃあ俺は先にいくわー」


「ま、まて!下着しかつけないのか?」


「え?だって寝にくいしめんどくせぇじゃん!」


と影秋はいつも下着で寝ていたのだ。


「そ、そうか・・・」


何もいえなくなるタエコ、タエコも寝巻きなんてもってきているわけではなく普段着で寝ようとしていた。


「そうゆう文化なのか?都会というのはわからん・・・」


勘違いするタエコだった。


「ふぅーお風呂上りの一杯は格別だぜぇー!」


と、水を飲む影秋。


「お、おまたせした」


「何を?」


下着姿で出てきたタエコに何を?と聞き返す影秋。

下着でねるのを文化と捕らえてしまったタエコは地味にテンパっていた。


「い、いやなんでもない」


「?そうか・・・俺は先に寝るぞ!」


影秋は考えた、先に寝れば問題ない作戦を実行に移す。


「そ、そうか・・・では私も寝るとしよう」


「お、おう」


作戦は失敗した。


「それじゃあ明かり消すぞ、おやすみ」


「ああ、おやすみ」


明かりを消し、二人でベッドに入る。


「なぁアキ・・・」


「な、なんすか?」


影秋は緊張していた。


「今日は色々助かった・・・。」


「いや、俺のほうが助けられてるって!」


「そんなことない、私は来たばかりの街で不安だったのだ・・・。」


「・・・」


「アキと出会えて本当によかった。」


「そっか・・・俺もタエコと出会えてよかったよ。」


「ああ、ありがとう」


「お互い助け合ったし貸し借りはなしだな!」


「おいおい、私はご飯どころか宿まで貸してもらったぞ?」


「それじゃあ今度三回くらい飯をおごってくれ、それで宿まで帳消しだ。」


「ふふふ、わかった。アキは不思議な奴だな・・・」


「不思議?」


「すぐ仲良くなれた。」


「それはタエコが助けてくれたからだよ」


「ふ、そうか・・・」


「ああ、そうだよ」







二人はその後静かに眠りにつく、気がつけばお互いのことを警戒するでもなく照れることもなくなっていた。

安心して体を預けあう二人の姿がそこにはあった。


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