十三話 夢と希望と決意
超☆展☆開
「すっきりしたー!!」
お風呂場から下着姿のまま出てそのままベッドに倒れこむ影秋。
「長い・・・一日だったなぁ・・・」
その一言に疲れの色が滲んでいた。
「いきなり異世界だもんなぁ・・・よく考えたらとんでもねぇよ・・・」
いきなり異世界にきて己の体に異常に強くなってしまったこと。
その後、死に掛けて女神に助けられたこと。
ドラゴンとあったこと。
いきなり異世界に来たが、いい人たちに出会えたこと。
「よく考えたらそんなにわるいもんじゃねぇな・・・ハハッ」
でないと不安に押しつぶされてしまう・・・笑いで不安を押しつぶす影秋。
恐怖、己の体の変化について
不安、明日から生きていけるのかについて
方針もなく、ただ生きることだけをしてきた影秋。
「あいつら、心配してくれるかなぁ・・・」
直前に共に食事をし、語りあった友人を思い浮かべる。
影秋は友人をとても大事にするのだ。
「あいつらはきっと心配してくれるよな・・・」
影秋は、他人との絆をとても大切にする。
信じることができる。
「でも、もどれる可能性は限りなく低い・・・」
沈み込んでいく影秋。
「こんなんじゃだめだ!心配してくれている 友人に申し訳ないだろう!!」
希望にすがりつく影秋。
影秋には友人しか居なかったのだ。
「俺は、生きる!この世界でも生きていって見せる!!」
決意する影秋、その姿はどこか儚く悲しげに見えた。
「 絶対に生き残ってやるんだかんな!!」
言い直した影秋。
そこには儚く悲しげな物はもう存在していなかった。
(わかっているんだ・・・。ただ友人を希望に差し替えて言い訳してるってことぐらい・・・でも)
「でも、俺は生きたい!!」
突然わけもわからず異世界に飛ばされ、体は異常に強くなり、女になった。
環境は過酷で、人々は必死に生きている。
ただ何も考えず、なんとなく生きてきた影秋にとってそこはまさに 異世界であったのだ。
「生きてやるからなあああああああああああ」
そしてうるさいと、従業員に怒られる影秋であった。
影秋は意図的に考えることをやめた。
ベッドに体を沈ませ、意識を睡魔の中に放りこむ。
「あしたは・・・いいことありますように・・・」
と、お茶漬けのCMのような言葉を残し、眠りにつく影秋であった。
「ここは・・・?」
気づけば真っ白な空間にいた。
「なんだ・・・一体なんだってんだよ!!森の次は真っ白な空間かよ!!いい加減にしろよ!!!」
「怒るなよ。」
「だ、誰だ!」
影秋は、辺りを見回すが誰もいない。
「俺はここだ。」
そこには、真っ白な空間にもかかわらず顔まで黒い影をまとった男がいた。
(どこかで・・・聞いたことのある声だ)
影秋は思い出せない。
「よう、いきなり本題に入るけどよ。お前、他人に理由を擦り付けて生きようとすんのやめろよ」
「い、いきなりなにいってやがる!!」
「認めろよ!友人を希望に差し替えてるって自分で気づいてるんだろ?お前は友人のために生きんのか?ちげぇだろ?生きることに言い訳すんなよ!!」
「わけわかんねぇこといってんじゃねぇよ!!」
影秋は激しい怒りに襲われた。
それは、図星だったからか、己の入り込んでほしくない領域に踏み込まれたからか・・・。
影秋にはその怒りがどこからわいているのかわからなかった。
「認めねぇのか?」
「認め・・・たくねぇ・・・」
影秋は否定しきれなかった。
「お前には友人しかいねぇもんな?」
「お、お前に何がわかる!!いきなり現れて人の事情に突っ込んできやがって!!」
「いきなり現れて?人の事情に突っ込んだ?ちげぇだろ・・・違ぇんだよ!!」
「何が違うってんだ!!お前誰なんだよ!!」
「わからねぇのか?この声、この姿、わからねぇのか!!?」
「わからないね!!黒い影に隠れて姿なんてわからねぇよ!!」
「だったら、見せてやるよ!俺の姿をな!!」
そして黒い影が消える。
「お、お前は・・・」
「俺は、お前だ」
男の影秋がそこにいた。
「お前は生きることに迷っている。自分自身すら騙してな」
「な、何いってるんだよ・・・なんなんだよこれ!」
「いいからきけ!!お前はな」
「やめろ!!」
「親に捨てられたことがトラウマになってんだよ!!」
「やめてくれ!!」
「お前の親は仕事中毒だった。お前のことを省みることはなかった。「やめろ!」だがお前は信じていたんだろ?週に二回食事をするとき必死にアピールしてたもんな?「やめろよ・・・」だけどな・・・それは「やめろおおおお!!!」親にとって仕事に一環でしかなかったんだよ!!」
影秋は泣いていた。
(わかっていたさ・・・子育ても仕事の一環として、仕事のように子育てをしてくれていた親、両親にどうゆう事情があったかはしらないが、彼らは仕事の一部のように子育てをした。そして・・・)
「仕事をなくし、自らも無くした親は蒸発しちまったもんなぁ!!お前は彼らにとって仕事の以上の物ではなかったんだ!!」
「ああ・・・そうだ・・・。」
「お前は必死に遊び子供らしさをアピールし、必死に勉強して進学して、必死にいい大学に入り自らの有用性をアピールしてきた。」
「そう・・・だな・・・」
「だが・・・お前は仕事に勝てなかった。両親にとって仕事以上の生きがいに慣れなかったんだよ!!」
「悪いかよ!!俺だって必死に頑張ったんだ!!!」
「悪いだろうが!!!」
「何が悪いって言うんだ!!てめぇえええええええ」
影秋は殴りかかる。それを男の影秋が避ける。
「てめぇ!人のせいにしてんじゃねぇよ!!!全部自分でやりたかったからやったことだろうがああああああ!!」
そして男の影秋が思いっきり影秋を殴る。
綺麗に決まった右ストレート
「てめぇはな!!てめぇのために生きててめぇのために死ね!!いつまでもあまったれてんじゃねぇぞ!!」
「うるせえええええええええええええええええ」
影秋は殴りかかる。
それを避けられカウンターを食らう。
「ぐ・・・ちくしょう!!」
影秋は下がらない。
殴り、避けられ、殴り、カウンターをもらう
それを延々と続けていた。
「俺だってなぁ・・・わかってたんだよ・・・だけどな・・・今更認められるかよおおおおおおお」
渾身の右ストレートが男の影秋を捉える。
それは男の影秋がしたように綺麗にきまった。
「だけどな、お前はこの世界じゃ、一人なんだよ。」
「ああ・・・」
気づいたら影秋は泣いていた。
涙が止まらない
「親切な人たちがいるかも知れない。だが彼らは必死に生きている。自分のために必死にな。そこにお前が入り込む余地なんてねぇよ」
「ううう、ひっく」
「だからお前は自分のために生きろ、現実逃避すんな。わかったな?」
影秋は返事はしなかった。
心のどこかではわかっていたのだ。
すでに相手に依存していたということに、友人を人間としてみているのではなく、依存先としてみている自分に・・・。
(みんな・・・すまなかった。 友人は俺のそんなところも含めて付き合ってくれていたんだ・・・。)
「もう大丈夫だ・・・」
「そうか・・・ならよし!」
(直接、 友人お礼を言いたかったな・・・。)
「お前は、これからお前のために生きろ!生きたいんだろ?なら生きろよ!!」
「ああ・・・ああ!!俺は俺のために生きる!!もう言い訳はしねぇよ!!」
「そりゃあよかった。」
そういって男の影秋は消えていった・・・。
「むむむ、むにゃむにゃ」
「ふふふ、まったく手間のかかる人ですね。私が祝福したんですからしっかりしてくれないと困りますよ?」
そういって女神は安心したかのような笑みを浮かべ空へと消えていった。
日本との決別、と言う意味合いで書きました。
超展開でごめんなさい。