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【旧】異世界見切り発車  作者: syouzi kobayashi
都市エリアル
11/37

十話 冒険者ギルド

「ぐぬぬ・・・」


影秋は困っていた。


「ぐぬぬぬぬ・・・」


とても困っていた。


「文字が・・・書けない・・・。」


うまい話なんてなかったのである。


「読めるけど書けない!!不思議!!」


「あの、書けないのでしたら口頭で結構ですよ。」


「本当ですか!!いやぁ助かります!!」


この時、影秋は満面の笑みを浮かべていた。

ギルドの受付はその笑みを見て(可愛い・・・癒されるなぁ)と思っていた。

影秋は美少女である。見かけ14歳くらいの黒髪でパッチリした黒目の美少女なのだ。


「はい、では質問しますね」


とペンを持ち記入用紙に目を向けながら受付が質問を開始する。


(なんだろう、すごいにこやかだなぁこの人)


影秋は自分が癒し系美少女になっていることに気付いていない。


「はい、以上で終了です。お疲れ様でした。席におかけになってお待ちください。」


「えっ、まだ何かあるんですか?」


「?ギルドカードを発行するんですよ?」


「あ・・・忘れてました、すみません」


とごまかしの笑みを浮かべる影秋。

受付にはおっちょこちょいな女の子だ、冒険者として大丈夫か?とまで思われているのを影秋は知らない。

(ギルドカードか・・・。なくしたらやばそうだな)

実際は、ギルドに保管された記録に基づいて銀貨1枚で再発行できるのだが。


席に座りあたりを見回す。

活気に溢れる冒険者たちが騒がしく動いていた。


(すげぇ・・・俺生きていけんのかな・・・)


何も考えない影秋が悩み始める。

何も考えないから行動できる影秋だが、考え始めると思考のループ負の連鎖に陥ってしまうのだ。


(うわぁ・・・すげぇみんな強そうだなぁ、とりあえず依頼掲示板でも覗いてみるか)


影秋は依頼掲示板へと足を動かした。


(いっぱいあるなぁ・・・何々、薬草20束収集銀貨3枚、ゴブリン討伐歩合制一体銀貨2枚?うわゴブリンとかいんのか、ファンタジーすなぁ・・・)


他人事である。


「どいてくれー!!依頼が来たぞ!国からの討伐要請だ!!!」


そういって入ってきた兵士、その手には赤い紙が握られていた。


「依頼だ!レッドドラゴン討伐のための討伐隊人員募集だ!!」


(レッドドラゴン・・・あのドラゴンだよねぇ・・・)


討伐依頼


ランクA

レッドドラゴン討伐隊

報酬は一人金貨40枚

優秀者には別途報酬有り

明日の朝日の出前に出発

場所は魔の森付近の街道

軍の討伐隊と行動。


と書かれていた。


(金貨40枚!!40万円くらいだと!!桁がちげうなぁでも命がかかってるから安いのかな?)

いまいち相場がわからない影秋であった。


「レッドドラゴン討伐にしては安すぎるぞ!!しかも魔の森付近だと・・・おっかねぇ」


どうやら安かったみたいだ。

それでも金貨40枚は冒険者たちにとって魅力的らしく、応募者が殺到していた。


「ランクCの方はお受けできませんねー。」


「そこをなんとか頼む!金がないんだ!!」


そんなやりとりが聞こえてきた。


(ランク・・・?そんなものがあるのか・・・。)


「タナカカゲアキさん!3番受付までお越しください」


「おっと、呼ばれたみたいだ。」


やけに視線を感じる。


「タナカカゲアキさんですね。こちらがギルドカードになります。」


ギルドカードに目を落とす。


ギルドカード


ランクF


タナカカゲアキ



上記の者を冒険者ギルドが冒険者として認める。


と書かれていた。


「あの、こんな簡単なものでいいんですか?」


「はい、えっとですね。ギルドカードはランクがあがるごとに変わっていきまして、ランクDまではそのギルドカードがお使いになれます。」


「えっと、ランクって何でしょうか?」


「ランクがわからないんですか?説明しましょう。」


受付の人が微笑んでいたので馬鹿にされたような気がしてムッとする影秋だが気にしないことにした。

本当は質問するたびに身振り手振りで説明しようとする影秋に癒されているだけなのだが、影秋は意識した行動ではないのでまったく気付かないのだった。


ランクとは

ギルドランクといってFからSSまであるらしく。

F、E、D、C、B、A、AA、S、SS

とあがっていくそうだ。

FからAまではクエストを消費していくだけであげることができるとのこと。

ただし地道にクエストを消費していくだけではAまでいくのは厳しく、ギルドにとって有益な依頼などを率先して受けたり、明らかにランク以上の敵を倒し証明部位を持ち帰ることによってたいていはAまでいくとのこと。

AA以上のランクは、ギルドにとって特別な意味を持つ人間として認められなければなれないとのこと。

SSランクは過去に数人いただけで現在は存在しない伝説的なランクといわれた。


「なるほど・・・ギルドって奥が深いですね!!」


「はい!奥が深いんですよ。(ニコニコ)」


影秋は気付いてない、受付が影秋の行動に癒されまくっていることに。

25歳中肉中背の顔も普通な人間だった影秋が気付けるわけがないのだった。


「ランクがあがると受けられる依頼も増えるんですよ。」


「なるほど。」


依頼にもランクがあり依頼ランクは推奨ランクで、実際に受ける場合は推奨ランクのひとつしたまでしかうけられないという。


「つまり今俺のランクがFなんで、Eまでしか受けられないってことですよね!!」


「はい!そうですよ。(ニコニコ)」


影秋は異世界にきて不安なのだ、言葉が通じるとはいえ、つい身振り手振りで説明しようとしてしまう。

これから生きていく手段として冒険者を選ぶ以上、確認だけはきっちりしておきたいのである。

ただその外見はとても可愛らしく癒し系というだけなのだ。(無自覚)


「色々ありがとうございます。わからないことがあったらまた聞きにきてもいいでしょうか?」


「はい、私たち冒険者ギルドは、冒険者の皆様をサポートするのが仕事ですのでいつでも歓迎いたします。(ハァハァ)」


「わかりました!!では、」


影秋は受付が何故か息が荒くなったの感じて何故か身の危険を感じたので話を切り上げた。

そして影秋は、依頼掲示板ではなく、出入り口に足をむけた。


(依頼はまた今度見よう。今日は宿と服を見たい)


お金はなんとベリルさんが「はい、これ護衛成功の報酬よ」

と金貨を1枚くれたのだ!!

受け取れないといったのだがベリルさんが「冒険者なのだから仕事をしたら報酬をもらうものよ」

といわれた。

感謝して受け取った。


(いい人すぎる・・・護衛なんてしてないし、そもそも服とかもらっておきながら報酬までもらっちゃうなんて、いつか恩返ししないとなぁ)


とか考えてると、


「お嬢ちゃん。東方の国の子孫かい?」


と声をかけられた。

振り向くとそこにはひげでモシャモシャなおっさんとモブみたいな同じ格好した奴が3人いた。


「えっと、東方の国?」


「おうよ、100年前に滅亡した東方の国の子孫だろ?名と苗があるのは東方の国くらいしかねぇ!!」


そんなこと言われても影秋にはさっぱりわからないのだが、


「お嬢ちゃんタナカって名前なんだろ?聞いたことがあるぜ!東方の国の名前の中でな!!」


名前ではなく苗字なのだがそれは気にしないでおく。


「はぁ・・・それで、そうだったら何かあるんですか?」


「いや、東方の国の子孫が集まってる場所しってるぜぇ・・・俺たちが案内してやるよ!!」


と提案してきた。

だが影秋はわかってしまった。


(これは・・・下心がある 気配・・がするな・・・)


なんとなく気配で察知できてしまった影秋。


(気配でわかるなんて・・・どうかしてるぜ、)


実際受け付けの人が萌えまくっていた気配は影秋にはさっぱりわからなかったのだ。

最初ドラゴンと遭遇したときにも皆が、馬車の中の怯えた気配までも察知できた影秋にとって気配が出たり引っ込んだりするのは不思議な感覚だった。


(まぁ、とりあえず気配のことは置いておいてこいつらをどうするかなぁ・・・)


目の前で下品な笑い方をするひげもじゃのおっさんとモブ3人、

影秋はとりあえず断ってみる。


「結構です。」


「そんなこというなよぉ~、ほら行こうぜぇ?お嬢ちゃん」

と腕をつかんできた。


その瞬間影秋は不快感がマックスになり


「さわんな!」

と、手ではらった。


「いてぇ!こいつやりやがったなぁ・・・やっちまうぞ!!」


とても沸点が低いひげもじゃだった。

つかみかかってくるひげもじゃに影秋は、


「きもちわるい!!」

と口撃し、自らのコブシでも攻撃した。


相手にとって思った以上の速度で繰り出されたそれは見事にひげもじゃの腹をとらえる。


「ぐげぇ」

と声を出し体をくの字にまげるひげもじゃ

胃液を吐き出しながら倒れるひげもじゃを横目に


「二度と話しかけてくんな!!」


といってギルドを後にした影秋であった。



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