倒したモンスターから人間がドロップするので、1024人パーティーになりました
## 第1話 新作MMOを始めたら、村人になった
「はい、どうもー!」
田中勇太、三十四歳。
本日は新作VRMMO、
**『エターナル・ワールド・オンライン』**
のサービス開始日である。
「このゲームは完全ソロプレイでやっていきたいと思います!」
コメント欄が流れる。
> 『絶対無理』
>
> 『MMOでソロw』
>
> 『友達いないだけだろ』
>
> 『また田中か』
「うるさいですね」
田中がキャラクターを作る。
職業選択。
戦士。
魔法使い。
盗賊。
僧侶。
騎士。
狩人。
商人。
鍛冶師。
農民。
そして、
**村人。**
「これにします」
> 『なぜ?』
>
> 『戦え』
>
> 『せめて戦士にしろ』
>
> 『村人実況とか誰得』
田中は胸を張った。
「戦闘は面倒なので」
そしてゲーム開始。
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## 第2話 初めてのモンスター
田中の前にスライムが現れた。
「おっ、敵だ」
装備は木の棒。
攻撃力――3。
「……」
スライムのHP――10。
「三回殴ればいいのか」
ポカッ。
**HP 7**
ポカッ。
**HP 4**
ポカッ。
**HP 1**
「あと一回!」
ポカッ。
スライム消滅。
> 【スライムを討伐しました】
>
> 【経験値を獲得】
>
> 【ドロップ判定中……】
田中は期待する。
「スライムゼリーかな?」
ポンッ。
何かが地面に落ちた。
「……?」
近づく。
そこには――
**人間の女性が寝転がっていた。**
「…………」
女性が目を開く。
「……ここは?」
田中、
「…………」
女性、
「あなたは?」
田中、
「…………」
コメント欄。
> 『人www』
>
> 『ドロップしたw』
>
> 『アイテムじゃないw』
>
> 『人間ガチャ始まった』
田中がログを見る。
> 【特殊ドロップ】
>
> 【薬師ミリア】
>
> 【レアリティ:★★★】
「薬師……」
ミリアが立ち上がる。
「よろしくお願いします」
「え?」
「パーティー申請をお願いします」
「いや、俺ソロなんだけど」
システム表示。
> 【ドロップキャラクターが発生しました】
>
> 【パーティーへの加入を推奨します】
「推奨?」
田中が加入させる。
> 【ミリアがパーティーに加入しました】
>
> 【重要】
>
> **ドロップによって加入したメンバーは、パーティーから解除できません。**
田中、
「……は?」
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# 第3話 パーティー解除ボタンがない
田中はメニューを開く。
「パーティー管理」
メンバー。
田中。
ミリア。
「除名っと」
ボタンがない。
「……脱退」
ない。
「キック」
ない。
「解散」
ない。
田中、
「なんで!?」
ミリア、
「私、ずっと一緒ですよ」
「怖いこと言わないで!」
コメント欄。
> 『呪いの仲間』
>
> 『永久加入w』
>
> 『田中、終わったな』
田中は決意した。
「二度とモンスターを倒さない」
その瞬間。
草むらからゴブリンが飛び出した。
「ギャー!」
田中、
「来るな!」
ゴブリンの棍棒が直撃。
田中HP1。
「死ぬ!」
ミリア、
「回復します!」
田中、
「薬師なのに回復できるの!?」
ミリア、
「できます!」
回復。
田中、
「……」
「……」
田中はゴブリンを見る。
「倒すか」
ミリア、
「はい」
ポカッ。
ゴブリン討伐。
ポンッ。
---
# 第4話 今度は武闘家が落ちた
地面に男が落ちてきた。
筋肉ムキムキ。
「……」
田中、
「職業は?」
男、
「武闘家」
「強い?」
「強い」
「じゃあ仲間で」
> 【武闘家ガンゾウが加入しました】
>
> 【解除できません】
田中、
「またかよ!」
ミリア、
「仲間が二人になりました」
ガンゾウ、
「よろしく」
田中、
「俺はソロプレイヤーなんだって!」
---
# 第5話 仲間が増えると、生活が変わる
三人になった。
田中は気づいた。
「狩りって、三人のほうが楽だな」
スライム。
ガンゾウが一撃。
**ドン!**
討伐。
ポンッ。
人間。
「鍛冶師です」
加入。
ゴブリン。
討伐。
ポンッ。
「農民です」
加入。
オーク。
討伐。
ポンッ。
「料理人です」
加入。
田中、
「……」
いつの間にか、
**六人。**
さらに狩る。
八人。
十二人。
二十人。
そして、
五十人。
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# 第6話 全員で狩りに行く必要はない
田中は気づいた。
「ちょっと待て」
五十人全員で森に行く。
当然、効率が悪い。
そこで役割を分ける。
### 狩猟班
モンスターを狩る。
### 農業班
畑を耕す。
### 商業班
町で商品を売る。
### 職人班
武器、防具、家具を作る。
### 建築班
家を建てる。
### 料理班
食事を作る。
### 医療班
怪我人を治す。
### 探索班
新しい地域を調べる。
### 警備班
村を守る。
そして、
### 勇者班
「勇者班?」
田中、
「いつか勇者がドロップするかもしれないから」
仲間、
「そんなことあります?」
田中、
「ないと思う」
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# 第7話 ドロップしたのは電子レンジだった
ゴーレム討伐。
ポンッ。
田中、
「おっ」
出てきたものを見る。
**電子レンジ。**
「…………」
料理人、
「これは?」
「電子レンジ」
「何ができます?」
「料理を温められる」
「おお!」
田中が電源を探す。
「……」
「……」
コンセントはある。
しかし――
**電気がない。**
田中、
「…………」
料理人、
「?」
田中、
「大きな箱型のゴミです」
---
# 第8話 冷蔵庫、洗濯機、テレビ
その後も奇妙なドロップが続いた。
モンスター討伐。
ポンッ。
**冷蔵庫。**
「ゴミ」
ポンッ。
**洗濯機。**
「ゴミ」
ポンッ。
**薄型大型テレビ。**
「ゴミ」
ポンッ。
**ノートPC。**
「ゴミ」
ポンッ。
**自動販売機。**
「ゴミ」
ポンッ。
**銀行ATM。**
「これはゴミというより犯罪の匂いがする」
商人、
「何をする機械ですか?」
「お金を出す」
商人、
「便利ですね!」
「銀行があればな」
「銀行は?」
「ない」
「電気は?」
「ない」
「通貨規格は?」
「ない」
「……」
商人、
「大きなゴミですね」
「そうだな」
---
# 第9話 自動車とオートバイ
さらに出た。
**自動車。**
「おお!」
田中が興奮する。
「これで移動できる!」
エンジンをかける。
カチッ。
……。
カチッ。
……。
田中、
「ガソリンがない」
さらに、
**オートバイ。**
「こっちは?」
「ガソリンがない」
二台とも動かない。
農民、
「馬車でいいのでは?」
田中、
「……」
「正論やめて」
---
# 第10話 ゴミを資源に変える
田中は考えた。
「待て」
ノートPC。
冷蔵庫。
電子レンジ。
テレビ。
自動車。
オートバイ。
これらは、
**電気と燃料さえあれば使える。**
「だったら――」
田中は技術者を集める。
「発電所を作ろう」
技術者、
「発電所?」
「電気を作る施設」
「どうやって?」
「水力、風力、火力……」
そしてもう一つ。
「石油精製所も作る」
商人、
「石油?」
「地下から出る油だ」
こうして、
**異世界産業革命プロジェクト**
が始まった。
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# 第11話 100人パーティー
仲間は100人になった。
だが、全員が戦闘員ではない。
農民――20人。
商人――10人。
職人――15人。
料理人――5人。
建築家――8人。
医師――3人。
教師――4人。
研究者――10人。
戦闘員――25人。
その他――。
田中、
「もう完全に村だな」
そして実際、
**村ができた。**
名前は――
**ドロップ村。**
---
# 第12話 勇者を倒したら勇者が落ちた
ある日。
世界最強の勇者、
**レオン**が現れた。
「異常なパーティーを作っている者よ!」
田中、
「はい」
「貴様を討伐する!」
「なんで?」
「モンスターを倒すだけで人間を増やしている!」
田中、
「仕様なんですよ」
「問答無用!」
戦闘開始。
勇者は圧倒的に強かった。
しかし――
田中には、
**100人いる。**
勇者、
「多すぎる!」
田中、
「MMOですから!」
ついに勇者撃破。
ポンッ。
田中、
「……」
地面を見る。
そこには、
**勇者レオン。**
> 【超レアドロップ】
>
> 【勇者レオン】
田中、
「……」
レオン、
「……」
田中、
「仲間になります?」
レオン、
「なるわけ――」
> 【加入しました】
>
> 【解除できません】
レオン、
「…………」
田中、
「よろしく」
レオン、
「最悪だ!」
---
# 第13話 勇者、勇者をする
ところがレオンは有能だった。
「村を守るには警備隊が必要だ」
「魔物討伐班を編成する」
「訓練場を作る」
「新人教育をする」
田中、
「勇者って便利だな」
レオン、
「私は勇者だからな」
こうしてレオンは、
**本当に勇者として働き始めた。**
戦闘班の指導。
魔物討伐。
村の警備。
そして――
子供たちの剣術教室。
田中、
「いい仕事してるじゃん」
レオン、
「当然だ」
---
# 第14話 500人パーティー
その後も仲間は増え続けた。
100人。
200人。
300人。
400人。
500人。
だが、
**500人全員が狩りに行くわけではない。**
村には、
畑。
鍛冶工房。
市場。
学校。
病院。
宿屋。
食堂。
研究所。
発電所。
工場。
そして、
**自動車工場。**
田中、
「……」
「俺、ゲームしてたよな?」
レオン、
「今では国づくりだ」
---
# 第15話 魔王が現れた
そして――
魔王軍が攻めてきた。
魔王、
「人間どもよ!」
田中、
「はい」
「我が魔族領へ侵攻する!」
田中、
「してません」
「ではなぜ村を作った!」
「生活してるだけです」
「その人数は何だ!」
「仲間です」
「何人いる!」
「700人」
魔王、
「七百!?」
田中、
「ちなみに全員が戦闘員ではありません」
魔王、
「なら何をしている!」
田中、
「農業とか商売とか」
魔王、
「…………」
魔王軍幹部、
「我々より文明が進んでいる」
魔王、
「そこを突くな!」
---
# 第16話 魔王討伐
戦争が始まる。
勇者レオンが魔王と戦う。
「魔王!」
「勇者!」
激突。
しかし最後に、
田中のパーティーが勝利する。
魔王撃破。
田中、
「終わった……」
ポンッ。
**魔王が落ちた。**
全員、
「…………」
田中、
「……」
レオン、
「……」
魔王、
「……」
田中、
「仲間になります?」
魔王、
「断る!」
> 【魔王が加入しました】
>
> 【解除できません】
魔王、
「…………」
勇者、
「ようこそ」
魔王、
「貴様と一緒になるとは……」
勇者、
「私も同じ気持ちだ」
---
# 第17話 魔王を倒すと魔王が落ちる
翌日。
魔王が復活した。
田中、
「え?」
システム。
> 【魔王討伐イベント】
>
> 【魔王を討伐してください】
魔王本人、
「私がいるではないか!」
田中、
「イベントだから」
魔王、
「嫌だ!」
しかしイベントボスの魔王を倒す。
ポンッ。
**二人目の魔王。**
さらに翌日。
三人目。
翌々日。
四人目。
一週間後。
十人。
一か月後。
百人。
田中、
「魔王が増殖してる!」
---
# 第18話 魔王会議
ついに魔王が大量に集まった。
魔王A、
「なぜ我々は毎回殺されるのだ」
魔王B、
「そして毎回仲間になる」
魔王C、
「意味が分からん」
勇者、
「ゲームシステムだからだ」
魔王、
「ゲームシステムで戦争をするな!」
田中、
「正論」
魔王A、
「そもそも……」
魔王たちは考える。
「戦う必要あるか?」
沈黙。
勇者、
「……ないな」
魔王、
「人間も魔族も、同じ村で暮らせばいい」
田中、
「それが一番ですね」
こうして――
**勇者と魔王が和解した。**
---
# 第19話 世界平和
人間領。
魔族領。
ドロップ村。
三つの勢力が統合される。
魔族は農業を学ぶ。
人間は魔法を学ぶ。
ドワーフは機械を作る。
エルフは森林管理をする。
勇者は学校で剣術を教える。
魔王は――
**村長補佐。**
田中、
「魔王が村長補佐って」
魔王、
「平和とはこういうものだ」
---
# 第20話 1024人目
そして最後。
パーティー人数、
**1023人。**
あと一人。
田中たちは最後の狩りへ向かう。
モンスターを倒す。
ポンッ。
現れたのは――
普通の女性。
「職業は?」
「教師です」
田中、
「……」
教師、
「よろしくお願いします」
システム。
> 【パーティー人数】
>
> **1024/1024**
>
> 【最大人数に到達しました】
全員、
「おおおおおおお!」
---
# 最終話 1024人は戦わない
田中は配信を開始する。
「はい、どうもー!」
コメント欄。
> 『1024人www』
>
> 『多すぎる』
>
> 『勇者いるw』
>
> 『魔王もいるw』
>
> 『農民何人?』
>
> 『もうMMOじゃない』
>
> 『国家運営ゲームになってる』
田中、
「えー、現在のパーティー構成ですが……」
### 戦闘・冒険
約200人。
### 農業
約200人。
### 商業
約100人。
### 職人
約150人。
### 建築・土木
約80人。
### 医療
約50人。
### 教育
約50人。
### 研究・技術
約70人。
### 料理・サービス
約70人。
### その他
約54人。
そして――
**勇者。**
**魔王。**
田中、
「全員、ちゃんと仕事をしています」
画面の向こうでコメントが流れる。
> 『これが本当のパーティー』
>
> 『誰もパーティー解除できないから社会が成立したw』
>
> 『魔王何してる?』
田中、
「魔王は?」
魔王、
「農業視察だ」
「勇者は?」
勇者、
「学校で授業中だ」
「じゃあ俺は?」
全員、
「村長」
田中、
「…………」
「俺、村人で始めたんだけど」
魔王、
「だから村長なのだろう」
勇者、
「適職だ」
田中、
「納得できない!」
---
## エピローグ そして平和になった世界
かつて、
モンスターを倒せば人間が落ちてきた。
勇者を倒せば勇者が落ちてきた。
魔王を倒せば魔王が落ちてきた。
そして魔王を倒し続ければ、
**魔王が無限に増えた。**
だから、彼らは考えた。
「もう倒さなければいい」
戦う必要がなくなれば、
魔王は魔王として存在できる。
勇者は勇者として生きられる。
農民は畑を耕せる。
商人は商売ができる。
職人は物を作れる。
教師は子供を育てられる。
料理人は料理を作れる。
そして田中は――
村長をやる。
村には、
冷蔵庫がある。
電子レンジがある。
洗濯機がある。
大型テレビがある。
自動販売機がある。
ATMがある。
自動車が走っている。
オートバイも走っている。
かつて「大きなゴミ」だったドロップ品は、
文明を支える道具になった。
そして1024人の仲間たちは、
今日もそれぞれの仕事をしている。
田中は最後の実況を締める。
「というわけで――」
「**今日も平和です!**」
その瞬間。
システム通知。
> 【新規アップデート】
>
> 【パーティー上限:1024人】
>
> 【変更なし】
田中、
「よし!」
さらに通知。
> 【新規コンテンツ】
>
> 【国家間交易】
>
> 【都市建設】
>
> 【鉄道建設】
>
> 【宇宙開発】
田中、
「…………」
勇者、
「宇宙?」
魔王、
「行けるのか?」
田中、
「……」
1024人、
「…………」
田中、
「**次の目標、宇宙開発です。**」
コメント欄が爆発した。
> 『村人どこ行ったwww』
>
> 『MMO実況とは』
>
> 『魔王が宇宙開発www』
>
> 『1024人で宇宙船作れ』
>
> 『次は宇宙人ドロップだな』
田中、
「いや、宇宙人は落ちてこないでしょ」
――その直後。
遠くの空から、
**巨大な宇宙船が落ちてきた。**
ドォォォォォン!
田中、
「…………」
システム。
> 【超大型ドロップ】
>
> 【宇宙船】
>
> 【搭乗可能人数:1024名】
田中、
「……」
勇者、
「……」
魔王、
「……」
1024人、
「…………」
田中はカメラに向かって一言。
「**運営、絶対わざとだろ。**」
――異世界MMO実況、第二章。
**『1024人パーティー、宇宙へ行く』**
へ続く。




