04-何やってんだ俺!?
俺は今、夢を見ている。
いわゆる明晰夢だ。眠っている自覚があるのに意識があるという、奇妙な感覚だ。
だが今の俺の状況では、それが役立っている。この状況の不気味さが、むしろ俺を落ち着かせ、思考を助けてくれている。
何が起きているのかわからない。ここはどこだ? なぜここにいる? どうやってここに来たんだ俺は?
答えられない疑問が山ほどあるが、考えても答えは出ないだろうという思いさえ湧いてくる。
自問自答していると、突然記憶が押し寄せてきた。あのゲームに関するもの……そう、さっき頭に浮かんだゲームの記憶だ。
ああ、そういえば……さっき、あのゲームの魔法を使った……よな?
謎リストにまた一つ追加された。あの瞬間の行動や発言ははっきり覚えている。
うっ……どうしても恥ずかしい気持ちは拭えない……効いたのは本当に良かった。そうでなかったら死んでたな……そして、俺は最期の瞬間を中二としてこの世を去ることになっていた……
神様であろうと、そんな苦しみから救えない。
まあ……とにかく……懐かしいなぁ。
さっきのことを考えれば考えるほど、あのゲームの記憶が蘇ってくる。
発売前の体験版動画、各スタートキャラクターの紹介動画、そしてゲームのプロモーション動画。どういうわけかそれらを同時に見られるなんて、妙な気分だ。
ん? 何か……脱線した気がする……忘れていることがあるような……
不安を感じ始めたものの、ゲームプレイの瞬間が次々と押し寄せてきて、先ほどの感情を押し流した。ただこの感覚に集中したくなった。
温もりを渇望するように、ただひたすら記憶に溺れ、もっと求め続けた。他の何も重要じゃなかった、これだけで十分だった。
そう、これで……
…………
おかしい。
なにかが……
なんだ……これは?
(一体……何なんだ……これは……)
目が覚めるような感覚を覚えながら、ゆっくりと目を開ける。
目を開けた瞬間、何かがぼんやりと見えた。
しかし、すぐに目が慣れて、それははっきりと見えるようになった。
「……え?」
「……あっ! よかった……目覚めたみたいですね。えっと……おはようございます……」
最初に視界から見えたのは、小さな女の子の顔であった。
「「………………」」
――10秒だけ待って。
(え? えっ? なんで!? 何で俺がこの子と対面してるんだ!? なんでこんな近くにいるんだ!? なんで!!)
目を開けたばかりだというのに意識は完全に現状に目覚めてしまい、頭の中は今の自分の状況を分析しようと猛スピードで動いている。
記憶では、俺は明晰夢を見ていた。そして、何か伸びているものが見えて……その何かは…………
(線? 糸? ロープ? んん?? 思い出せない……)
俺は、それに手を伸ばそうとした……なんとなく手が届かなかったような気がする。
でも、その時……何か温かいものを感じて、心地よかったから……俺はそれを……もっと……
だから俺は……それをもっと近くで……
(何に手を…………はぇ?)
さっきはあまりの衝撃に気づかなかったのかもしれない……でも、今ははっきりと見える……
この子の頬に触れている……そう、俺の手を。
(何でそこにいるんだ!!?)
(え、えーっ!? ええーっ!? なんで!? なんでこの子のほっぺに触っているんだ!? 一体何なんだこの状況は!!!)
俺は確か、あの温もりに手を伸ばそうとしていただけ――
(あっ!!?)
冷静さを取り戻し、ゆっくり考えてみると、自分が何をしたのかが理解できた。
先ほど感じた温もりは、彼女の手と接触することで得られたもの。俺の手と彼女の手が重なっているのを見ただけで、一目瞭然だ。
彼女の手が俺の手の上にあることからすると、最初に接触したのは彼女である可能性が高い。
そして、この温もりと心地よさをもっと味わいたいと思った俺は、手を伸ばして――
彼女の頬を触れた。
その感覚は今でも覚えていて、だから自分が何をしたかを認識することができるのだ。
さて……なぜ彼女がこんなに近くにいるのか……
その説明は……へっ、ひとつしかないだろう?
今の状況を踏まえて、俺の右手が彼女の頬に触れて、彼女を……自分の方に……引き寄せた。
………………うん。
(変態じゃねえか!!!)
完全に、間違いなく、変態だ!! 変態のすることじゃねえか!?何やってんだ俺!!
しかも、よりにもよってこんな幼い女の子にこんなことして! こんな変態行為を無意識にやってしまうなんて、ロリコンか俺は!?
そもそもなんでまだ彼女の温もりを覚えているんだ! 俺は今一体何を考えているんだ!?
「あの……その……」
「あっ!」
彼女は小さく声を出した。おそらく、気まずさからだろう。
何しろ、この数秒考えている間に、二人とも密着して見つめ合っているのだから。
しかも、その間も俺は彼女の頬に触れている。
それに気づいた俺は、すぐに彼女から手を離し……
ゆっくりと、しかしスムーズに……
「……え?」
体勢を整え、床に土下座した。
「誠に申し訳ございませんでした!!!」




