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戊 .【 収穫 】
コトシロは、
最後に残った蓮の瞳
――呪いによって朱色に結晶化したその石を、
まるで神に捧げる神饌を扱うような手つきで、
自らの空洞の内へと収めた。
「……さあ、飲み込みましょう。
あなたの『絶望』は、明日を生きる人々の
『蜜』になるのですから」
コトシロが再び狐の面を被ると、スタジアムの空気は一変した。
魔法が解けたように、元の、
血と泥にまみれた暴動の跡地が戻ってくる。
だが、数万人の群衆は、自分が何をしていたのか、
何を壊したのかさえも忘れたかのように、呆然と空を見上げていた。
コトシロの纏う黒いスーツの袖口には、
蓮の命であった朱色の輝きが、
新しい刺繍のように刻まれている。
彼は一度だけ、冷たい十二月の夜空を仰ぎ、深く一礼した。
神事は終わった。
「この国はまた、一人の少年の尊厳を「糧」にすることで、
明日という偽りの清廉さを手に入れたのだ___。」
【完】




