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Scene 56:焚き火式調印 ――「火と風の署名」
夕暮れ。
森の奥、焚き火の周りには王国の紋章旗と、辺境の香草リースが並んでいた。
橙の光が揺れ、紙の影が地面に踊る。
リゼットは深呼吸して、慎重に協定文を両手で持ち上げた。
それは特製の魔力紙――熱を加えると、刻まれた誓約文が浮かび上がる仕掛けだ。
リゼット:「……では、調印を。」
焚き火の炎が紙を優しく包み、薄金色の文字が浮かぶ。
“火を尊び、風を友とし、共に暮らすこと。”
その瞬間、風がそっと吹いた。
香草の香りが広がり、紙の端がひらりと舞い上がる。
エリザベート:「火が証人。風が保証人。完璧ね。」
リゼット:「……これが、本当の外交かもしれません。」
炎が一瞬だけ強くなり、二人の影を重ねた。
森の奥から、精霊たちの笑い声のような風のざわめきが響く。
やがて紙は再びリゼットの手に戻り、ふわりと静止する。
刻印は鮮やかに残り、焚き火の光に照らされて金色に輝いた。
エリザベート:「ねえ、リゼットさん。これからも、一緒にご飯食べましょう。」
リゼット:「……喜んで。外交官として、そして……友人として。」
焚き火がぱちんと弾けた。
それが、この世界で初めての「平和の音」だった。




