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Scene 53:特使派遣 ――「初手・雑炊外交」
王国特使リゼット・フロレンツ。
眼鏡の奥の瞳は真剣そのもの、手には分厚い外交文書。
彼女の任務は――
「辺境の焚き火勢力との“共同生活協定”を正式に締結すること」。
つまり、戦後初の平和交渉。
……のはずだった。
森の入り口。
朝の霧を抜けた瞬間、ふわりと香草とスープの香りが鼻をくすぐる。
リゼット:「……っ、この香り、士気を削ぐ!」
書記官:「で、ですが、美味しそうです……」
次の瞬間――靴のかかとに、もふっとした衝撃。
マルシュ(ウサギ):「もぎゅっ(靴ヒモうま)」
リゼット:「ひゃっ!? し、しっ――しゅ、主敵!? いえ、ウサギ!?!」
全身が硬直。
そのとき、焚き火の向こうから穏やかな声。
エリザベート:「うんうん、森の関税チェックね。靴ヒモ一本。」
リゼット:「そ、それ、課税なんですか!?」
エリザベートは微笑みながら木のスプーンを差し出す。
「まあまあ。お昼、雑炊でいい?」
リゼットは外交書類を握りしめたまま固まる。
「(ま、まずい……まだ名乗ってもいないのに……もう“昼食交渉”が始まっている……!)」
ウサギはリゼットのスカートに頭を押し付け、焚き火がぱちりと弾ける。
その音が、まるで――「ようこそ」と言っているようだった。




