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Scene 52:王都、評議のざわめき ――「雑炊の衝撃」
王都・王城評議室。
分厚い石の壁に反響するのは、紙をめくる音と、困惑のため息だった。
「森の軍が……飯を食わせて勝った?」
「報告書の付録が“雑炊レシピ”なのはなぜだ?」
ざわつく議員たちの声を、国王は黙って聞いていた。
玉座の前には、昨夜の出来事を記した公式報告書。
そこには、戦闘記録の代わりに“香草と米の炊き方”が丁寧に記されていた。
「……『士気、極めて安定。敵味方の区別消失』?」
「これ、ほとんど“ピクニック報告”じゃないか!」
老将が怒鳴ると、若い書記官が慌てて追記を読み上げる。
「え、ええと……『全軍、満腹により戦意消失。だが幸福感高し』」
評議室が静まり返る。
次の瞬間、国王が小さく笑った。
「……あの森と敵対するより、共に暮らす方が早いな。」
沈黙が広がり、誰も反論できなかった。
武器ではなく鍋で戦を終わらせた相手に、どうして剣を向けられよう。
「軍事より、焚き火外交だ。」
王のその一言が、王国の方針を変えた。
その日、会議室の窓の外では――
風がふわりと吹き抜け、どこかで炊いたスープの香りが、ほんのりと漂っていた。




