Scene 50:雑炊会、開戦(?)
兵士たちは焚き火の前にずらりと並んでいた。
だが、剣を構える者は一人もいない。
手にしているのは、スプーンと空の器。
鎧が外され、兜が脱がれ、重苦しい空気はいつしか湯気に溶けていた。
鍋の中では、野菜と米がふつふつと泡を立てている。
その香りは、戦場をまるごと「食卓」に変えるほどに穏やかだった。
エリザベート:「戦の後に食べると格別ですよ。」
クルス:「……戦、まだ始まっていないのだが……」
エリザベート:「じゃあ“後”ってことで。」
無邪気な笑顔に、将軍クルスはなぜか何も言えなかった。
その横で、兵士たちはもう我慢できずに鍋を囲み始める。
最初の一口。
香草の香りと、焚き火の温もりが胃に落ちた瞬間――
緊張がふっと溶け、笑いが零れた。
兵士A:「……うまい……!」
兵士B:「これが……敵の飯か……!」
エリザベート:「敵でも味は平等です。」
次々と皿が伸び、焚き火の周りはすぐに宴会のような騒ぎに。
副官が立ち上がり、スプーンを高く掲げて叫ぶ。
副官:「勝利――ではなく、完食ッ!!」
どっと笑い声が上がる。
炎が揺れ、夜風がそれをやさしく包み込む。
――その夜、戦は始まらなかった。
だが、焚き火の前では誰もが満たされ、
確かにひとつの「平和」が勝ち取られていた。




