Scene 47:王国軍、進軍開始
――それは“侵攻”ではなく、“遠足”の始まりだった。
王都・戦略会議室。
緊張に満ちた空気の中、地図の上にひとつの赤い線が引かれた。
クルス将軍:「森の勢力は拡大している。焚き火など遊戯にすぎん!」
副官:「はっ! ですが前線から“眠気報告”が続出しております!」
将軍は眉をひそめた。
「眠気報告」とは、戦意喪失や魔力疲弊を意味する軍用語――
だが、報告書の中身はおかしかった。
『森の香りが心地よく、兵がよく眠れる』
『湿度が適切。肌の調子が良い』
『敵影なし。むしろ温泉のような安らぎ』
クルス:「……これは報告書か? 旅の感想文ではないのか?」
副官:「はっ……士気は、異様に安定しております!」
将軍は深くため息をついた。
鎧の下の首元に手をやる。汗ばむ。
彼は筋金入りの暑がりだった。
クルス:「よかろう。ならば私が行く。直接、この“森の魔”を鎮めてやる。」
こうして、王国軍二千の兵が辺境へと進軍を開始した。
しかし、森へ近づくごとに――
風が変わった。
香草と焚き火の匂いが、列の中をふんわりと通り抜ける。
湿度がちょうどよく、靴の中も快適。
兵士A:「……なんか、歩きやすいですね。」
兵士B:「鎧、軽くなった気がする。」
クルス:「気のせいだ。行軍に集中――むっ、この風……涼しいな?」
彼らの足取りは軽く、そして、ゆるやかに。
威厳ある行軍は、気づけばまるで春の遠足隊のように変わっていた。
森は静かに、それを受け入れていた。
まるで、「ようこそ」と囁くかのように。




