Scene 43:風の精霊、来訪
夜更けの焚き火は、まるで呼吸をするようにゆらめいていた。
静かな風が通り抜け、炎の形が一瞬、奇妙に揺らぐ。
ぱち――。
火の粉が宙に舞い上がり、それを包むように風が渦を描いた。
そして、その渦の中から――ひとりの“人影”が現れる。
透明で、輪郭がはっきりしない。
風でできた髪がふわりとたなびき、瞳は淡い青に光っていた。
精霊:「おまえたち……人間のくせに、燃やすのが上手だな。」
声はどこか無邪気で、しかし空の彼方から響くように澄んでいる。
驚く一同の中で、エリザベートだけがいつも通りの調子で微笑んだ。
エリザベート:「ありがとう。キャンプだからね。」
精霊は首をかしげ、焚き火の炎をのぞき込む。
その動作に合わせて風がふわりと流れ、火が虹色に揺れた。
精霊:「へぇ……火も風も、踊るのが好きなんだな。」
焚き火の周りに、かすかな旋律のような風音が響く。
炎と風が混ざり合い、渦ができ――光の粒が夜空へと舞い上がっていく。
学者:「あれが……精霊共鳴……! 自然現象のはずが……!」
エリザベート:「見た目の割に、すごい現象らしいね。」
精霊はくすりと笑い、焚き火の熱を楽しむように両手をかざした。
その笑顔はまるで子どものようで、けれど風そのもののように掴めない。
精霊:「いい火だ。見てると、胸のあたりが……ふわってする。」
エリザベート:「それはね、あったかいってこと。」
精霊は、しばらくその言葉を噛みしめるように黙った。
そして、夜空に舞う光の粒の中で、ひときわ強い風が吹く。
精霊:「また、遊びに来る。」
そう告げて、風は形を失い、夜空へと溶けていった。
残された焚き火は、まるで笑うように――ぱち、と小さく音を立てた。




