Scene 41:キャンプ部、誕生
かつては実験の煙と爆発音が絶えなかった場所に、
今、静かな焚き火が灯っていた。
ぱち、ぱち、と。
その音はまるで魔力の鼓動のように、学生たちの心を落ち着かせる。
学生A:「……授業より集中できるんだよ、焚き火の前だと。」
学生B:「スープ、哲学、魔法――全部ここにある。」
焚き火のそばでは、薬草を煮出す学生、
魔力で湯を沸かす学生、
そしてマシュマロを串に刺して焦がす学生。
まさに、“多学科融合の場” だった。
石畳の片隅に、簡素な木札が立てられる。
『王立学院キャンプ研究会(通称:キャン部)』
焚き火の炎が木札を優しく照らす。
リリィが火のそばに座り、手帳を開いた。
かつての論文の余白に、静かに新しい題が書き加えられていく。
『第二次研究報告:マシュマロの燃焼理論と甘味の神学的意義』
学生C:「……リリィ先輩、それ研究って言えます?」
リリィ:「言えます。これは“焚き火理論の応用実験”です。」
学生B:「なるほど、実験(実食)か。」
笑いが起こる。
魔力よりも柔らかく、教本よりも深い響き。
そして、火がゆっくりと夜を包み込む。
誰もが気づいていた――この炎はただの焚き火ではない。
それは、知の探求心と心の安らぎが同居する“学びの火”。
リリィ:「……研究、続行します。
今度は――マシュマロの燃焼理論で。」
ぱち。
焚き火が、その宣言に応えるように、
一瞬だけ、甘く金色に揺れた。
焚き火の炎は、ただ温かいだけではなかった。
それは、王立学院という冷たい石の学び舎に、
久しく忘れられていた“ぬくもり”を取り戻していた。
風に揺れる炎は、魔法陣の光よりも柔らかく、
そして、どんな呪文よりも静かに――学生たちの心を解いていく。
それは知識を焼き尽くすのではなく、
“心”を照らして、新しい理論を生み出す火。
かつて学問が誇りと形式のために築いた壁を、
焚き火の炎は、するりと越えていった。
教授たちが議論を繰り返す間にも、
学生たちは今日も火を囲み、己の真理を探している。
――マシュマロの焼き加減という名の、終わりなき探求。
「焦がすか、焦がさないか。それが問題です。」
「それ、哲学の授業より深い気がするんですけど。」
笑い声と甘い香りが夜風に溶け、
学院の塔を越え、星空へと登っていく。
そして今日も、王立学院の中庭では――
学生たちが炎を囲みながら、
真剣な顔でマシュマロを焼いていた。
それが、この時代の新たな学問の形だった。




