Scene 39:焚き火の夜、覚醒
森の夜は静かだった。
空には星、地には火。
人々は輪になり、焚き火を囲んで“瞑想会”をしていた。
炎の明滅に合わせて、呼吸を整える。
誰も言葉を発しない。
ただ、火の音が会話の代わり。
ぱち、ぱち、ふう――
そのリズムに、リリィの肩の力が抜けていく。
王立学院で鍛えた完璧な姿勢も、今はどこか柔らかい。
リリィ:「……魔力制御でも、精神集中でもない……
これ、ただ“落ち着く”だけ……?」
学者:「それが、キャンプ魔術の第一歩です。」
焚き火の炎が、リリィの瞳にゆらめく。
その赤と金が、まるで“理解の光”のようだった。
リリィ:「……魔法は理屈じゃない。……あたたかい。」
エリザベート:「ようこそ。ここが“火の中間地点”ですよ。」
風が吹く。
木々がざわめく。
火の粉が、まるで星屑のように夜空に散った。
その瞬間、マルシュ(ウサギ)がふらりと近づき、
当然のようにリリィの膝に乗る。
リリィ:「あ、ちょ、ちょっと……重……でも、あったか……」
マルシュは満足げに丸くなり、すぐに寝息を立てた。
リリィはそれを見つめながら、そっと微笑む。
リリィ:「……こんなに穏やかな“覚醒”があるなんて。」
誰も拍手をしなかった。
けれど焚き火が、ひときわ明るく燃えた。
それがこの夜――
“焚き火魔術の覚醒者”がまた一人、生まれた瞬間だった。




