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悪役令嬢、今日も辺境でキャンプ防衛 ― 焚き火の火は消さないけれど、戦意はよく消える ―  作者: 南蛇井


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35/58

Scene 35:商会の決断

朝霧が森を包む。

焚き火の名残が、まだほのかに温かく息づいていた。

鳥の声がゆっくりと目を覚まし、森全体が一度、深呼吸をする。


その静けさの中で――

クラウス・リーベルは、ひとり焚き火の跡に膝をついた。


手には、黒い革袋。

中には、金貨の鈍い光と、一通の手紙。


クラウス(独白):「金で火を買うつもりだったのに……

 結局、俺のほうが“あたためられた”か。」


彼は袋をそっと置く。

灰の上に、金属の光が反射する。

朝日と混ざって、それはまるで“新しい火”のように見えた。


クラウス:「この金で、森を守る仕組みを作ってほしい。

 ……火の恩に、利子をつけて返したい。」


言葉を終えると同時に、

ウサギのマルシュが袋のまわりをくるくる回る。

まるで“受け取りました”とでも言うように。


やがてエリザベートが焚き火の向こうから現れた。

寝ぼけ眼で髪をまとめながら、笑う。


エリザベート:「早起きの商人は、置き土産も粋ね。」

放浪学者:「つまりこれは、“寄付”という名の感謝契約。」

騎士:「……戦わずして心を落としたな。」


エリザベートは袋を手に取り、

手のひらの中で転がすように眺める。


エリザベート:「火の取引は失敗。

 けど、心の取引は成立ね。」


ぱちり。

灰の中から、最後の火の粉が弾けた。

それはまるで、商談の“印”のように光って消えた。


森の風が吹く。

金の香りより、土と焚き火の匂いが濃くなる。


そしてその朝、

リーベル商会の名前は静かに、焚き火ギルドの“支援者一覧”に加わった。


――利益よりも、温もりで結ばれた契約として。

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