Scene 30:教会の変化
数日後。
王都の中心、白亜の尖塔がそびえる教会本部。
厳粛な空気の中、重厚な扉が勢いよく開かれた。
審問官グラウス、帰還。
衣服は煤け、袖口には砂糖の粉。
しかしその顔は、どこか晴れやかだった。
司祭長:「グラウス、報告を。」
グラウス:「……はい。」
彼は机の上に、一枚の巻物を置いた。
タイトルは、筆跡も堂々と――
『焚き火における神性の再評価』
静まり返る会議室。
司祭たちは顔を見合わせ、ざわめく。
若い司祭:「……再評価?」
グラウス:「はい。火は破壊の象徴にあらず。
人を温め、甘味を与える神の試練であります。」
老司教:「あ、甘味……?」
グラウス:「マシュマロです。」
机の上に置かれた、ふわふわの白い塊。
グラウスは自ら火を灯し、それを金串に刺した。
グラウス:「見よ。焦げ目こそが、神の意志。」
司祭たち:「……おお……」
誰かがつぶやいた。
「……香ばしい……」
その日の午後。
教会の庭では、黒衣の司祭たちが列をなし、
一心にマシュマロを焼いていた。
「もっと近づけろ、焦げすぎるぞ!」
「祈りが足りん、風がずれた!」
「聖なる炎よ、均等な焼き目を!」
信仰が、まさかの焚き火実習型へと進化を遂げる。
そして、正式な通達が出された。
『新たな礼拝形式:焚き火会』
『マシュマロは聖餐として扱うこと』
教会内に、正式に**「焚き火寛容派」**が誕生した。
それは後に、王国全土へと広がる信仰改革となる。
章ラスト一文(締め)
かつて焚き火を罪と呼んだ者が、
今はその炎で祈りを捧げている。
神と火のあいだに、甘味が架けた橋――
それが、“初の交戦”の真相だった。




