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悪役令嬢、今日も辺境でキャンプ防衛 ― 焚き火の火は消さないけれど、戦意はよく消える ―  作者: 南蛇井


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29/58

Scene 29:翌朝の奇跡


朝の森。

霧がゆっくりと晴れ、木々の葉の間から金色の光がこぼれていた。

焚き火はまだ赤く、昨夜の余熱を静かに抱いている。


その前に――

黒衣の男、教会審問官グラウスがひざまずいていた。

まるで神殿の祭壇に祈るような姿勢で。


> グラウス:「炎よ……昨日のマシュマロの再現を……」





---


彼の前の枝先には、白くて丸いマシュマロ。

まだ冷たく、ただの甘味。

だが次の瞬間――


ふっと風が吹き、焚き火が小さく揺れた。

炎の舌が、まるで意志を持つようにマシュマロへ伸びる。


じゅ……。


焦げ目が、絶妙につく。

黄金色、ふわとろ、昨日とまったく同じ焼き加減。


> グラウス:「……奇跡だ。」

放浪学者(寝袋から顔だけ出して):「いや、それ風向きじゃないですか?」

エリザベート(朝食準備しながら):「信仰って、だいたいそんなもんです。」





---


グラウスは感極まって両手を合わせた。


> グラウス:「炎よ……汝こそ、再現性の神。」

エリザベート:「そんな理系っぽい神いましたっけ?」

放浪学者:「これはもう、“焚き火教・実験派”の誕生ですね。」





---


森に柔らかな笑い声が広がる。

焚き火がぱちりと弾け、またひとつマシュマロを焼き上げた。


その光景はまるで、

小さな奇跡が毎朝続く宗教儀式のようだった。


> グラウス:「……朝の祈り、完了。」

エリザベート:「では、朝ごはんにしますか。」


ナレーション:

こうして、森の一角に新しい習慣が生まれた。

それは祈りであり、実験であり、朝食でもある。


人々はそれをこう呼んだ――


「焚き火の奇跡モーニング・マシュマロ



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