Scene 29:翌朝の奇跡
朝の森。
霧がゆっくりと晴れ、木々の葉の間から金色の光がこぼれていた。
焚き火はまだ赤く、昨夜の余熱を静かに抱いている。
その前に――
黒衣の男、教会審問官グラウスがひざまずいていた。
まるで神殿の祭壇に祈るような姿勢で。
> グラウス:「炎よ……昨日のマシュマロの再現を……」
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彼の前の枝先には、白くて丸いマシュマロ。
まだ冷たく、ただの甘味。
だが次の瞬間――
ふっと風が吹き、焚き火が小さく揺れた。
炎の舌が、まるで意志を持つようにマシュマロへ伸びる。
じゅ……。
焦げ目が、絶妙につく。
黄金色、ふわとろ、昨日とまったく同じ焼き加減。
> グラウス:「……奇跡だ。」
放浪学者(寝袋から顔だけ出して):「いや、それ風向きじゃないですか?」
エリザベート(朝食準備しながら):「信仰って、だいたいそんなもんです。」
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グラウスは感極まって両手を合わせた。
> グラウス:「炎よ……汝こそ、再現性の神。」
エリザベート:「そんな理系っぽい神いましたっけ?」
放浪学者:「これはもう、“焚き火教・実験派”の誕生ですね。」
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森に柔らかな笑い声が広がる。
焚き火がぱちりと弾け、またひとつマシュマロを焼き上げた。
その光景はまるで、
小さな奇跡が毎朝続く宗教儀式のようだった。
> グラウス:「……朝の祈り、完了。」
エリザベート:「では、朝ごはんにしますか。」
ナレーション:
こうして、森の一角に新しい習慣が生まれた。
それは祈りであり、実験であり、朝食でもある。
人々はそれをこう呼んだ――
「焚き火の奇跡」




