Scene 28:神学的談義(焚き火神誕生)
夜は更け、森は深く静まり返っていた。
焚き火だけが小さく息をして、闇をやわらかく照らしている。
その炎を囲むのは――
異端の令嬢、放浪の学者、そして教会の審問官。
だが、誰の目にもそこは戦場ではなく、語らいの場だった。
> エリザベート「薪、足しますね。」
グラウス「……ああ。炎が弱ると、心も弱る。」
放浪学者「名言っぽいけど、今のあなたマシュマロ焼いてますからね。」
---
グラウスは炎を見つめながら、低く語り始めた。
> グラウス「火とは、試練であり、浄化であり……そして、甘味である。」
放浪学者は感嘆の声を上げ、筆を走らせる。
> 放浪学者「すばらしい。哲学が焼きあがっている。」
エリザベート「つまり、“焼けばわかる”ってことですね。」
グラウス「……うむ、経験こそ信仰の礎。」
---
パチ、パチ、と音を立てて薪が弾ける。
その音がまるで、議論に拍手を送っているようだった。
ウサギのマルシュも、隣でマシュマロをもらいもぐもぐ。
その姿を見て、グラウスの険しい眉間がついにゆるむ。
> グラウス「……神は寛大だ。たぶん。」
エリザベート「いいですね、その“たぶん”。だいじです。」
---
放浪学者が、焚き火の炎をノートにスケッチしながら言った。
> 放浪学者「この瞬間を記そう。“焚き火神誕生の夜”として。」
グラウスは軽く頷き、そっと炎に祈るように言葉を落とした。
> グラウス「すべての火に、平穏あれ。」
エリザベートが笑う。
> エリザベート「……それがいちばん、あったかい祈りですね。」
ナレーション:
その夜、ひとつの宗教が生まれた。
戦いではなく、焼き加減から始まる信仰――
“焚き火神”信仰。
教会史上、最も穏やかで、最もおいしい革命であった。




