表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、今日も辺境でキャンプ防衛 ― 焚き火の火は消さないけれど、戦意はよく消える ―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/58

Scene 26:聖なる怒号、森に響く


 昼下がりの森に、重々しい足音が響いた。

 黒衣の行列。銀の十字杖が光を反射し、風に揺れる。

 王国教会の派遣団――その先頭を歩くのは、

 眉間のシワが国家レベルと噂される男、審問官グラウスである。


> グラウス:「焚き火は禁忌だ! 神聖な炎を私的に使うとは何事か!」




 その怒号は鳥を散らし、森を震わせた。

 だが――焚き火の前にいたエリザベート(中身おじさん)は、

 まるで風にでも話しかけられたように軽く振り返るだけだった。


> エリザベート:「……あ、火加減見ます?」

グラウス:「見る!」




 即答だった。

 怒りよりも、香りが勝った。



---


 近づいたグラウスの鼻を、何かがくすぐる。

 スープの湯気。焼きたてのパン。

 そして――ふわりと漂う、白いマシュマロの甘い香り。


> グラウス:「……む、これは……聖油の香りでは……ない。だが尊い……!」

放浪学者(小声):「……敵意を失う速度が早い。」




 グラウスの額のシワが、すっと一本、消えた。

 信仰と理性のあいだで葛藤する彼の表情は、

 もはや“教会の威厳”ではなく、“おやつを前にした子供”である。



---


> エリザベート:「まあ、せっかくだから座ってください。お茶、入れます?」

グラウス:「……いや、そんな、我々は審問に……審問……」




 言葉が続かない。

 スープの湯気が、思考を包み込む。


> グラウス:「……飲む。」




 その瞬間、森の空気がふわっと柔らかくなった。

 焚き火がパチリと音を立て、

 まるで“ようこそ”と言うかのように火の粉が舞った。



---


ナレーション:


> 「聖なる怒号は、森の香りに溶けた。

神の試練とマシュマロの甘味――その違いを、

このとき誰も説明できなかった。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ