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悪役令嬢、今日も辺境でキャンプ防衛 ― 焚き火の火は消さないけれど、戦意はよく消える ―  作者: 南蛇井


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24/58

Scene 24:宰相、視察(そして吸い込まれる)

王都より、宰相一行がついに辺境の森へ到着した。

 馬車を降りた瞬間、宰相は鼻をひくつかせる。


宰相:「……むっ。これは……妙に落ち着く香りだな。」

近衛兵:「注意を! これが敵の“幻惑の術”かもしれません!」

宰相:「ふむ……幻惑にしては、香ばしいな……パンの匂いか?」


 風が頬を撫でる。

 木漏れ日が差し、鳥の鳴き声が重なり、

 そこに――一人の令嬢(中身おじさん)が立っていた。


エリザベート:「ようこそ辺境へ。お茶、飲みます?」

宰相:「……いや、私は視察に……」

(間)

宰相:「……飲む。」


 数分後。

 宰相は焚き火のそばで湯気の立つティーカップを手に、

 満足げにうなずいていた。


宰相:「うむ……よい茶だ。香りが“政策を忘れさせる”。」

エリザベート:「それ、最高の褒め言葉ですね。」


 近衛兵たちは戸惑う。

 誰も警戒を続ける者はいない。

 全員、ちゃっかり木の切り株に腰を下ろしてパンを齧っている。


 やがて宰相は、敷物を地面に敷き、

 書記官に命じた。


宰相:「ここで国家安全保障会議を始める。」

書記:「……まさか本気で?」

宰相:「むろんだ。環境が良いと議論も深まる。」

エリザベート:「ついでにマシュマロ焼きます?」

宰相:「……ぜひ。」


 1時間後。


 議題:「国家の安寧について」

 結論:「火の管理と水分補給を徹底すること」


宰相:「……国を治めるより、焚き火を守るほうが難しいな。」

エリザベート:「でも、どっちも“火を絶やさない”って点では同じですよ。」

宰相:「……深い。」


ナレーション:


「こうして宰相までもが、焚き火の輪に取り込まれた。

もはや誰も、辺境を“危険地帯”とは呼ばない。

今ではそれは――癒やしの最前線である。」

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