Scene 24:宰相、視察(そして吸い込まれる)
王都より、宰相一行がついに辺境の森へ到着した。
馬車を降りた瞬間、宰相は鼻をひくつかせる。
宰相:「……むっ。これは……妙に落ち着く香りだな。」
近衛兵:「注意を! これが敵の“幻惑の術”かもしれません!」
宰相:「ふむ……幻惑にしては、香ばしいな……パンの匂いか?」
風が頬を撫でる。
木漏れ日が差し、鳥の鳴き声が重なり、
そこに――一人の令嬢(中身おじさん)が立っていた。
エリザベート:「ようこそ辺境へ。お茶、飲みます?」
宰相:「……いや、私は視察に……」
(間)
宰相:「……飲む。」
数分後。
宰相は焚き火のそばで湯気の立つティーカップを手に、
満足げにうなずいていた。
宰相:「うむ……よい茶だ。香りが“政策を忘れさせる”。」
エリザベート:「それ、最高の褒め言葉ですね。」
近衛兵たちは戸惑う。
誰も警戒を続ける者はいない。
全員、ちゃっかり木の切り株に腰を下ろしてパンを齧っている。
やがて宰相は、敷物を地面に敷き、
書記官に命じた。
宰相:「ここで国家安全保障会議を始める。」
書記:「……まさか本気で?」
宰相:「むろんだ。環境が良いと議論も深まる。」
エリザベート:「ついでにマシュマロ焼きます?」
宰相:「……ぜひ。」
1時間後。
議題:「国家の安寧について」
結論:「火の管理と水分補給を徹底すること」
宰相:「……国を治めるより、焚き火を守るほうが難しいな。」
エリザベート:「でも、どっちも“火を絶やさない”って点では同じですよ。」
宰相:「……深い。」
ナレーション:
「こうして宰相までもが、焚き火の輪に取り込まれた。
もはや誰も、辺境を“危険地帯”とは呼ばない。
今ではそれは――癒やしの最前線である。」




