Scene 20:自然班、出動
朝の森は、まるで息をしているようだった。
光が木々の間をすり抜け、露が葉を滑り落ちる。
その中心――焚き火ギルド本部(つまり、いつもの焚き火広場)で、
新しい班が結成されようとしていた。
エリザベート:「本日より、“自然班”を発足します。」
号令を受けて並ぶのは、やたら個性の濃いメンバーたち。
精霊信仰者:やたら柔らかい笑みで、常に花粉っぽい香りがする。
薬草師:腰のポーチに詰まっているのは、薬草とスパイスの境界が曖昧な何か。
元庭師:芝の生え方で天気を予測できる。
そしてウサギのマルシュ:本日も無言の参加。
エリザベート:「目的は“防衛”だけど、戦いはナシね。」
精霊信仰者:「了解。“気持ちいい森”を目指します。」
口調は真剣だが、空気はピクニック。
防衛作戦というより、環境整備委員会に近い。
メンバーたちは手分けして森を歩く。
手にしているのは杖でも剣でもなく――
熊手、香草束、温度計。
薬草師:「ここ、湿度が少し高いですね。風通しを調整しましょう。」
元庭師:「枝を二本落として……はい、これで魔力の流れも良くなります。」
エリザベート:「なるほど。“結界”というより“空調”だな。」
実際、その通りだった。
魔法陣を描く代わりに、森の風を読み、葉の重なりを整える。
結界の基本理論:「気持ちよければ防げる」。
精霊信仰者:「この辺り、流れがいいですね。ここに香草を吊るしておきましょう。」
エリザベート:「いい匂いだな……防衛よりリラクゼーション効果が高い。」
マルシュ:「ピッ。」(※同意)
森の奥に進むにつれ、空気がやわらかくなっていく。
小鳥が近づいてきて、足元には野花が咲く。
元庭師:「風通しが命ですからね。」
エリザベート:「防衛より換気だな。」
笑い声が、森の奥に吸い込まれていく。
戦いの気配は一切ない。
ただ、爽やかな風と草の香りが、世界を満たしていった。
こうして、“防衛結界”――名ばかりの快適フィールドは、
静かに、その第一歩を踏み出したのだった。
(のちにこの一帯は「癒やし地帯」と呼ばれ、
敵味方問わず、昼寝の名所となる。)




