Scene 19:宰相の混乱(幕引き)
王都・政庁。
宰相室には、報告書が山のように積まれていた。
“辺境における煙の増加”
“王国兵の帰還率:ほぼ100%(ただし全員満腹)”
“市民の森行き希望者、急増”
そして――一番上に置かれた新しい報告書の見出し。
『辺境、もはや観光名所化の兆し』
宰相は頭を抱え、机を叩いた。
「どうなっておる! これは戦か? それとも観光地か!?」
机の上の地図には、赤い×印が無数に刻まれている。
それは“焚き火”の跡地。
つまり、平和の証。
沈黙の中、参謀が小声で呟く。
「“焚き火の民”が……拡散しているようで……」
「何をしている!」
「皆で、朝食を食べているようです。」
宰相の動きが止まる。
書類の端に染みついた、かすかな香り――パンとスープの匂い。
「……これは……ミルク煮込みか……?」
誰も答えない。
ただ、部屋の外から漂ってくる風の音が心地よい。
宰相はふっとため息をつき、遠くを見つめた。
「……私も、少し……視察に行こう。」
参謀たちが凍りつく。
しかし宰相はもう立ち上がっていた。
マントを翻しながら、懐に何かを忍ばせる。
「……焚き火には、ワインが合うのだ。」
その日、王国最高権力者までもが
キャンプギルドの“炎”に吸い寄せられていく。
章ラスト一文(締め)
焚き火は、誰をも拒まない。
そして――
王国をも、静かに丸ごと焼きあたためていく。
「火を絶やすな。飯を焦がすな。」
それが、“平和の最前線”だった。




