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悪役令嬢、今日も辺境でキャンプ防衛 ― 焚き火の火は消さないけれど、戦意はよく消える ―  作者: 南蛇井


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19/58

Scene 19:宰相の混乱(幕引き)

 王都・政庁。

 宰相室には、報告書が山のように積まれていた。


 “辺境における煙の増加”

 “王国兵の帰還率:ほぼ100%(ただし全員満腹)”

 “市民の森行き希望者、急増”


 そして――一番上に置かれた新しい報告書の見出し。


『辺境、もはや観光名所化の兆し』


 宰相は頭を抱え、机を叩いた。


「どうなっておる! これは戦か? それとも観光地か!?」


 机の上の地図には、赤い×印が無数に刻まれている。

 それは“焚き火”の跡地。

 つまり、平和の証。


 沈黙の中、参謀が小声で呟く。


「“焚き火の民”が……拡散しているようで……」

「何をしている!」

「皆で、朝食を食べているようです。」


 宰相の動きが止まる。

 書類の端に染みついた、かすかな香り――パンとスープの匂い。


「……これは……ミルク煮込みか……?」


 誰も答えない。

 ただ、部屋の外から漂ってくる風の音が心地よい。


 宰相はふっとため息をつき、遠くを見つめた。


「……私も、少し……視察に行こう。」


 参謀たちが凍りつく。

 しかし宰相はもう立ち上がっていた。

 マントを翻しながら、懐に何かを忍ばせる。


「……焚き火には、ワインが合うのだ。」


 その日、王国最高権力者までもが

 キャンプギルドの“炎”に吸い寄せられていく。


章ラスト一文(締め)


焚き火は、誰をも拒まない。

そして――

王国をも、静かに丸ごと焼きあたためていく。


「火を絶やすな。飯を焦がすな。」


それが、“平和の最前線”だった。

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