表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、今日も辺境でキャンプ防衛 ― 焚き火の火は消さないけれど、戦意はよく消える ―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/58

Scene 17:第二陣の派遣、そして……

王都・作戦本部。

 前回の“満腹帰還事件”から数日。

 宰相の執務室には、異様な静寂が漂っていた。


 机の上には、前線からの報告書。

 そこには、たった一行。


「敵、おいしかったです。」


 宰相は額を押さえ、低くうめいた。


「……第一陣が全員“満腹”で帰還、だと?」

「はい、戦意を完全に喪失した模様です。」

「……つまり、味でやられたのか。」


 参謀たちは顔を見合わせた。

 この国の歴史上、料理による敗北報告は初めてである。


 やがて、宰相は重々しく言葉を吐いた。


「……次は、“味に厳しい者”を送るしかあるまい。」


 そして派遣されたのは――

 王国屈指の“鉄の舌”を持つ男。

 騎士団長ガルド=ヴェルネ。


 彼は、あらゆる宴会で料理に文句をつけてきた伝説の人物。

 その厳しさから、料理人たちに“味の審判者”と恐れられている。


「我らの誇りを、食卓で汚させるな!」

「味に屈した第一陣の汚名、我らが晴らす!」


 軍鼓が鳴り響く。

 第二陣、“味覚特攻部隊”が出発した。


 ──数時間後、辺境の森。


 焚き火。

 香る炊き込みご飯。

 ふわりと立つ湯気。


 その香りが、風に乗って騎士団を包み込んだ。


「……なんだ、この……香りは……」

「白米ではない……旨味が層になっている……!」

「油断するな! これは嗅覚への罠だ!」


 しかし、もう遅かった。


 夜。

 月が昇り、焚き火の周りに鎧の音が響く。

 団長ガルドは箸を置き、静かに目を閉じた。


「……敵は……炊き込みご飯でした……」


 翌朝。王都。

 報告を聞いた宰相は、机に突っ伏す。


「なぜだ……なぜこうも……主食が進化していく……!」


 将軍がそっと呟く。


「次は……デザートが来るかもしれませんな。」

「やめろ。」


報告書 第17号


状況:戦闘なし


戦意:壊滅


原因:炊き込みご飯


備考:おこげが神


こうして、王国に新たな病が広がる。

“焚き火に行くと、満たされて帰ってくる病”。


誰もまだ知らなかった。

この美食侵略が、やがて“外交革命”と呼ばれることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そういえば織田信長も美食家だったなぁ〜 名だたる大名を一堂に集めて食事会と言う茶会があったなぁ 昔から食文化による外交は普通にあったよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ